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盲導犬繁殖の取り組み最前線

繁殖犬を確保するために広がる盲導犬育成施設のネットワーク。日本から韓国・台湾、そして英国へ

現在、日本では盲導犬が不足しています。
それを解消するために生まれた国内の
盲導犬育成施設どうしの協力関係は、やがて韓国・台湾にまで
広がるネットワークへと拡大しました。
さらに、英国盲導犬協会からの凍結精液による人工授精が成功。
新たな展開を見せる、盲導犬繁殖事業の最新事情を紹介します。

優秀な盲導犬を増やしたい…。子犬たちに託された願い

北海道盲導犬協会の和田孝文所長

北海道盲導犬協会の和田孝文所長

2007年11月27日、横浜にある日本盲導犬協会神奈川県訓練センターに、2頭の子犬が贈られた。贈り主は、AGBN(アジア・ガイドドッグス・ブリーディング・ネットワーク)。同団体にとっては、ようやく英国から届いた凍結精液による人工授精で生まれた、大切な子犬たちだ。このとき生まれた子犬は全部で4頭。冒頭の神奈川に加え、札幌、名古屋の盲導犬訓練施設にも子犬が贈られ、それぞれの施設で、繁殖犬として大切に育てられることになる。
AGBN運営委員会幹事で、北海道盲導犬協会の和田孝文所長はいう。「われわれの活動は、まだ始まったばかり。これから繁殖犬を増やし、そこから生まれた犬を育てて盲導犬にすることが最後の目的ですから。でも、ようやくここまで来たという感じですね…」。

※子犬たちの父親と母親は… 子犬たちの父親・ヘンリー(ラブラドール・レトリーバー、7歳)は、英国の盲導犬協会が飼育する、とても優秀な繁殖犬。母親は、北海道盲導犬協会で飼育されているベッシー(ラブラドール・レトリーバー、7歳)。凍結精液の人工受精により、2007年10月7日に札幌市内で誕生した。

日本国内では盲導犬が圧倒的に不足。その理由とは?

北海道盲導犬協会で飼育されている繁殖犬

北海道盲導犬協会で飼育されている繁殖犬

現在、日本では盲導犬が不足している。日本盲導犬協会によると、国内で盲導犬を必要としている視覚障害者は7,800人にのぼるのに対し、2007年3月末現在で登録されている盲導犬は965頭しかいないという。
その最大の原因は繁殖犬の不足だ。盲導犬として実績のある犬は、子犬の時期に必ず去勢・避妊手術を受けているので、子孫を残すことができない。これは、発情による興奮で、盲導犬としての役割を果たせなくなることを防ぐためだ。そこで、施設ごとに適性が認められた犬を繁殖犬としているが、その数は全国9施設で計136頭(2006年度末現在)のみ。さらに、約130頭の繁殖犬から1年間に生まれる子犬約330頭のうち、適性が認められ訓練に合格して盲導犬になれるのは、わずか30〜40%ほどでしかない。
繁殖犬の不足が進行する原因として、国内の盲導犬育成施設どうしに、横のつながりがなかったことが挙げられる。それぞれの施設が独自に繁殖を続けていたのだ。その結果、近親犬が多くなり、交配に支障をきたすようになった。全国の各施設が、繁殖犬の不足をなんとか自力で解決しようと試みたが、なかなかうまくいくことはなかったという。

日本ではじまった盲導犬育成施設の相互交流。その輪は海を越えて韓国・台湾へ

AGBNの事務局がある北海道盲導犬協会

AGBNの事務局がある北海道盲導犬協会

繁殖犬の不足は、どこの施設も共通の悩み。そこで、施設どうしが単独で繁殖や盲導犬の育成に取り組むのではなく、情報を交換し、共有していこうとする動きが始まった。ネットワークは、やがてアジア各国の盲導犬育成施設へと広がりを見せる。そして2002年4月に発足したのが、北海道盲導犬協会を事務局とするAGBNだ。AGBNを構成しているのは、日本の8施設、韓国の1施設、台湾の2施設という計11の盲導犬育成施設。各施設がまとめた繁殖犬のデータベースを活用して、情報の交換・共有を行っている。
そのAGBNが、構成国以外の国にある施設との連携によって、海外の優秀な遺伝子の導入と繁殖犬の育成に取り組むこととなった。初めにご紹介した盲導犬事業の先進国・英国からの凍結精液による人工授精計画だ。

※欧米の盲導犬育成施設との過去の交流 国内のネットワークができる前に、各施設が単独で欧米の盲導犬育成施設と接触したことはあった。しかし、当時の日本の施設はどうしても技術や情報を受け取るだけになってしまい、相手に成果を還元することができなかった。そのため、継続的な交流には至らなかったという経緯がある。

人工授精の実現・成功によって開けた、日本の盲導犬繁殖・育成の未来

ストロー状の容器に入った凍結精液

ストロー状の容器に入った凍結精液

この計画の実現に向けて、住友生命保険相互会社がAGBNの強力な支えとなった。同社の協力のもと、熱意と地道な交渉が実って両国の許可が下り、凍結精液が英国から日本へ到着することになった。和田所長は、このときのことを「ようやく肩の荷が下りたというのが正直な感想。ほっとした後に喜びがこみ上げてきたという感じでした。」と振り返る。
日本と英国、繁殖の相互協力のため、日本の盲導犬の凍結精液が近いうちに英国に渡されることになっているそうだ。和田所長は最後にこう語った。「繁殖事業に新たな道が開けました。英国との協力関係を今後も積み重ねるなど、国内外の盲導犬施設どうしのネットワークをさらに強い結びつきにして、優秀な盲導犬をたくさん育成したい。ひとりでも多くの視覚障害者の方に、盲導犬がお役に立てるようにしたいですね」。

※住友生命相互会社の身体障害者補助犬育成の助成活動 住友生命保険相互会社は、身体障害者補助犬育成を目的に、2001年4月「アシスタントドッグ育成普及委員会」を設立。AGBNに対して総額1,000万円を助成しているほか、AGBNが英国盲導犬協会に協力を要請する際には、同委員会委員と同社ロンドン駐在員も同行するなど、盲導犬の繁殖・育成に積極的な役割を果たしている。

盲導犬育成にご協力をお願いいたします

改正身体障害者補助犬法が成立し、盲導犬をはじめとする補助犬の要望が高まっています。視覚障害者が積極的に社会参加するための助けとなるために、盲導犬育成に温かいご協力をお願いいたします。また、会社、商店、病院などに募金箱の設置にご協力いただける方も募集しています。
皆様からお寄せいただいた募金・寄付は、全国盲導犬施設連合会に加盟する8施設に分配され、各地での盲導犬育成・普及に役立てられます。

http://www.gd-rengokai.jp/fund-raising/index.html

●改正身体障害者補助犬法とは? 盲導犬や聴導犬などの補助犬を連れた障害者の受け入れを、企業に義務化する法律。2008年4月より施行。

全国盲導犬施設連合会
http://www.gd-rengokai.jp/

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