背中に小さなブツブツができ、非常にかゆい
室内飼いでも注意したい「ノミアレルギー性皮膚炎」
ノミの唾液にアレルギー反応を起こすことで発症する「ノミアレルギー性皮膚炎」。
激しいかゆみを伴うため、なめたりかんだりするあまりに皮膚がただれることも。
暖かい春から秋だけでなく、一年を通してノミ対策を。

【症状】
皮膚に粟粒状のブツブツができ、ひどくかゆい

イラスト
illustration:奈路道程

 猫の皮膚に小さなブツブツができ、ひどくかゆがって、しきりになめたりかんだりしていたら、「ノミアレルギー性皮膚炎」かもしれない。
 ノミアレルギー性皮膚炎は、別名「粟粒性皮膚炎」ともいわれるように、粟粒のようなブツブツができるのが特徴で、背中に発症することが多い。かゆみが激しいため、猫が必死になめたりかんだりして、毛が抜け、皮膚がただれることもある。
 猫とノミのかかわりは深く、ノミと無縁な猫を探すのは難しいかもしれないが、実際、ノミアレルギー性皮膚炎になる猫の割合は、犬の場合に比べてかなり少ないようである。それでもやはり、夏場などに発症する猫が少なくない。
 ノミは繁殖力が旺盛で気温が13℃以上であれば増えていく(早ければ、2、3週間で成ノミ→卵→幼虫→サナギ→成ノミのライフサイクルを繰り返す)。例えば、猫の体に住みついたメス成ノミが毎日産み続ける卵がポロポロこぼれ落ちて、猫の寝床やカーペットの上などに散乱する。やがて卵からかえった幼虫は、光を嫌うため、敷物の奥のほうに潜んで、成ノミのフンなどを食べながら過ごし、サナギになる。そうして、近くを通る動物の気配を感じたりすると、サナギから成ノミになる(成ノミは光を好み、敷物の繊維の先で寄生する動物を待つ)。
 成ノミは全体の5〜10%ほどといわれるから、もし10匹成ノミがいれば100〜200匹はいると覚悟しなければならない。また、サナギの段階で1年ほど過ごすことができるので、サナギの状態で越冬し、春になって成ノミとなり、また猫に寄生して繁殖を繰り返すものもいるかもしれない。
ノミのライフサイクル
 

【原因とメカニズム】
体質的に、ノミの唾液にアレルギー反応を起こす場合がある
 
 猫がノミに血を吸われたからといって、必ずしもノミアレルギー性皮膚炎になるわけではない。猫の中に、ノミの唾液に触れると激しいアレルギー反応を起こす猫がいる。それが問題なのである。
 アレルギー反応とは、ある特定の物質に触れると体の免疫機構が“過剰”に働いて、それを排除しようとする作用である。アレルギー反応を起こすかどうかは猫の体質によるため、いくらノミに血を吸われても何ともない猫もいれば、わずか1匹のノミに血を吸われるだけでノミアレルギー性皮膚炎を発症する場合もある。
 一般に、ノミとの接触の少ない年若い猫(1〜3歳ぐらい)に発症しやすいが、それ以降も、いつ、ノミの唾液にアレルギー反応を起こし始めるか分からない。そして、一度発症し始めると、何度でも再発することになる。
 もっとも、猫の体に粟粒状のブツブツが出たからといって、必ずしもノミアレルギー性皮膚炎とは限らない。そんな症状に苦しむ猫の体やその生活環境からノミを駆除したのち、再発しなければ、ノミに起因するものと断定できるだろう。

【治療&予防】
炎症を止めるにはステロイド剤。ノミ退治には猫への駆虫薬の定期投与
 
 ノミアレルギー性皮膚炎なら、ステロイド剤を投与すれば症状は治まっていく。しかし、先にも述べたが、ノミがいればいつ再発するか分からない。
 何よりも大切なのがノミ退治である。
 ノミの駆虫薬には、猫の体に生息する成ノミをやっつける殺虫効果と、ノミの卵から幼虫が孵化するのを食い止める発育阻害効果を備えたものがある。動物病院で処方されるそのような駆虫薬を、毎月猫に投与していけば、猫の生活環境からノミはどんどん減少していく。しかし、家の中でノミを見かけなくなったからと、駆虫薬の定期投与を中断すれば、いつまた、自宅の猫にノミが寄生するか分からない。
 毎日、念入りに掃除機をかけていても、敷物の奥深くに潜り込んだ幼虫を吸い取るのは難しい。また、卵や幼虫、サナギの状態のノミが掃除機内で成ノミになり、ゴミパックを捨てようとふたを開けた途端、室内に飛び出し、猫に飛び移ることもある。
 一方、出入り自由の猫なら、ノミが無数に寄生する野良猫と遭遇する機会もある。たとえ室内飼いであっても、サナギの状態で1年ほど生きるノミのこと、室内のどこかに散らばっているサナギから、ある日、成ノミになって猫に飛び移ってこないとも限らない。また、ベランダにやってきた野良猫の落とした卵から幼虫がかえり、サナギになり、成ノミになって室内飼いの猫に寄生する可能性もないとはいえない。
 繁殖期の春から秋にかけての季節だけでなく、冬季も含め、年中、猫に駆虫薬を投与するのが最も予防効果が高いといえるだろう。
 なお、成ノミは一度特定の動物に寄生すれば、そこから離れることはあまりない。従って、猫に寄生する成ノミが人の体に飛び移り、血を吸う可能性は少ない。しかし、サナギから成ノミになったノミが、いつもうまく室内に暮らす猫や犬に寄生できるとも限らない。そんなあぶれものの成ノミが人に寄生することもある。家族皆のためにも猫や犬の定期的なノミ駆虫は必要である。

*この記事は、2008年7月20日発行のものです。

監修/泉南動物病院 院長 横井 慎一
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