アカラス(ニキビダニ)症

【症状】
顔面や前足などにポツポツ、ハゲが現れれば要注意
イラスト
illustration:奈路道程
 「アカラス」という通称で知られるのは、犬の毛穴に巣食い、厄介な皮膚病を引き起こす、体長0.2〜0.3ミリほどのニキビダニのことである。犬に感染するのがイヌニキビダニ、猫に感染するのがネコニキビダニだ。また毛包に巣食うため、「毛包虫」ともいわれる。
 このダニは、普通、生まれたばかりの子犬が、ダニの寄生する母犬の体に寄り添い、母乳を吸うなど濃密な接触によって感染すると考えられている。多頭飼いなど濃密な接触があれば、成犬でも感染することがある。
 子犬の場合、目や口の周り、前足などの部位が特に感染しやすい。もっとも、子犬の顔面や前足などに感染したニキビダニが毛穴(正確には、毛根を包んでいる毛包、脂腺、アポクリン腺)の中でひっそり生息していれば、発症はしない。しかし、何らかの要因が重なればこのダニが異常繁殖し、毛根がダメージを受けて脱毛する。そのまま放置すれば、最初、わずかだったハゲが顔から頭や首へ、前足から肩や胴へと広がっていくこともある。煩わしい皮膚病に苦しむ犬が、発症した部位をかきむしったりすれば、ブドウ球菌などの雑菌が二次感染して、赤黒く腫れ、化膿したり、カサブタが出来たりする。そうなれば、痛み、かゆみなどもひどくなる。手遅れになれば全身の皮膚がズルズル状態になり、二次性細菌性敗血症などで命を落とすこともある。
 なお子犬の場合、感染して発症しても、範囲が限られ、症状が軽くて、その九割前後は自然治癒すると考えられている。厄介なのは、成犬、特に老齢期の犬が発症した場合である。


【原因とメカニズム】
遺伝的体質や、体力・免疫力の低下、基礎疾患が発症の引き金
   生後間もなく、母犬から感染したニキビダニを寄生させたまま、発症せず、健康に暮らしている犬はかなり多い。
 では、何が発症の引き金になるのか。その要因は複雑で、現在、まだ十分に解明されてはいない。しかし、これまでの臨床例から、子犬の場合、発育状態、栄養状態が悪く、体の免疫機能がうまく働かない犬に症状が出やすく、また遺伝的に発症しやすい犬種も少なくないとも考えられている。
 さらに成犬、特に老齢期の犬では、体力や免疫力の低下ばかりでなく、リンパ腫や乳腺がんなどの腫瘍や糖尿病、副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症、アトピー性皮膚炎などの基礎疾患を患っている場合、発症しやすい。また、いったん発症すれば、いろんな治療を行っても治りにくいケースが多い。
 本来、寄生虫は、寄生先の動物(宿主)とはなるべく共存関係を保っている。しかし、宿主の免疫力が低下していたり、その免疫力や体力、代謝力を損なう慢性的な病気を患ったりしていれば、寄生虫と宿主の力のバランスが崩れ、ダニが異常繁殖しやすくなる。また、治療しても、自然治癒力が低下して治りにくくなる。さらに、飼い主が安易に市販の人用の皮膚炎薬などを使用して、かえって症状を悪化させる場合もある

【治療】
犬の体質や症状に合わせ、殺ダニ剤と薬用シャンプー、薬浴などを併用
   動物病院での検査でアカラス(ニキビダニ)症と診断されれば、まずダニの駆除に全力を尽くす。治療法には、効果的な殺ダニ剤の定期的な投与(経口、皮下注射、直接塗布)や薬用シャンプー、薬浴などがある。それぞれの症状と犬の体質、余病の状態などを考慮して、計画的に組み合わせて治療していくことが望ましい。ただし、この殺ダニ剤は、コリー、シェルティ、ボーダーコリーなどのコリー種には副作用が強いため、使用は厳禁だ。
 膿皮症などを併発していれば、その症状を治すために、抗生物質の投与も必要だ。発情や妊娠が症状再発の引き金になるため、避妊・去勢手術を行う場合もある。
 また、先に述べたように、腫瘍や糖尿病などの病気があれば、症状が慢性化、悪化しやすいため、それらの治療を並行して行っていかなければならない。特に難しいのは、アトピー性皮膚炎を併発している場合だ。アトピー性皮膚炎の炎症、かゆみを抑えるために、ステロイド剤が投与されることが多いが、ステロイド剤は免疫力を低下させるため、アカラス症の症状を悪化させやすい。
 特に注意が必要なのが、いったん治療を始め、表面的な症状が改善されたからと、途中で治療を中断するケースだ。ダニを駆除する殺ダニ剤は幼ダニや若ダニ、成ダニには効くが、卵には無力である。治療を中断した後、生き残った卵が孵化して繁殖し、再発するケースも少なくない。例えば、子犬などで症状が軽いケースでも最低一か月以上、治療を行う必要がある。症状がひどかったり、慢性化したり、再発したりした場合、数か月から半年、時には一年前後、治療を続けていかなければならないこともある。

【予防】
子犬期からの健康管理と早期発見・早期治療
   繰り返すが、アカラス症の発症には、体力や免疫力の低下、遺伝的な面、基礎疾患など、様々な要素が関係していると考えられている。そうであるとすれば、子犬期から栄養補給や体力維持に留意し、元気に、健康的に育てることが発症予防の第一歩といえる。実際、治療においても、犬の体力回復や皮膚を清潔に保つ努力が症状改善に欠かせない。
 そして、万一、顔面や前足などに、脱毛などの初期症状らしきものを発見したら、すぐに動物病院で診断を受け、治療を行うこと。また、成犬になっても普段から健康管理に注意し、再発防止に努める。特に中高年齢期になれば、定期的に動物病院で健康診断を行い、腫瘍や糖尿病などの早期発見・早期治療を心がけることが大切だ。

*この記事は、2004年7月20日発行のものです。

監修/佐藤獣医科医院 院長 佐藤 正勝
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