異常にフケが増えてくる
フケの増加は「脂漏性皮膚炎」のサイン
フケが目立ってきたら、「脂漏性皮膚炎」(脂漏症)の疑いも。
放置すればフケだけでなく、皮膚炎が悪化していくので要注意。

【症状】
フケの増加や皮膚のベタつきが目立ち、やがて皮膚炎がひどくなる

イラスト
illustration:奈路道程

 「うちの犬、このごろフケがとても目立ってきた。どうしたんだろう」。
 そんな時、「脂漏性皮膚炎(脂漏症)」の可能性がある。
 脂漏性皮膚炎になると、フケが異常に多くなり、時にはベタベタと脂っぽくなることもある。フケが増えるとマラセチア(酵母菌)が増殖しやすく、皮膚炎や外耳炎になりやすい。また、何らかの細菌が増殖して、「細菌性膿皮症」なども起きやすくなる。
 マラセチアが異常繁殖すると、皮膚炎がさらに悪化し、赤みがひどくなりかゆみが増したり、脱毛したりする。また、においがきつくなったり、皮膚が黒ずんできたりする。一方、細菌性膿皮症になると、皮膚が湿疹のように赤く腫れ、かゆみが増すだけでなく、皮膚の表皮から深部へと化膿が広がっていきかねない。
 もっとも、フケが多くなる病気には、「皮膚糸状菌症」(人の水虫やタムシと同様の病気)や「脂腺炎」(皮脂腺の病気)などもある。なお、脂腺炎は原因不明で、いったん発症するとほとんど治らないが、幸いなことにまれな病気である。

【原因とメカニズム】
原因不明、あるいは他の皮膚炎などにより、表皮の新陳代謝が異常に速くなって発症
 
 脂漏性皮膚炎は、皮膚(表皮)の新陳代謝のサイクル(ターンオーバー)が異常に速くなって起こる病気である。
 表皮(4層からなる)は、一番下の、真皮に接する基底層で生まれ、その後、新しく生まれる細胞層に押し上げられるように上昇し、最後、表層部の角質まで上昇し、フケやアカとなって落ちていく。通常、犬の場合、表皮のターンオーバーは20〜25日ぐらい。しかし、脂漏性皮膚炎になると、それがどんどん速くなり、5〜10日ぐらいになるといわれている。
 では、どうして脂漏性皮膚炎になるのだろうか。
 脂漏性皮膚炎は、大きく「原発性」と「続発性」に分かれる。原発性とは、いわば原因不明の病気のことである。例えば、コッカー・スパニエルなどに多く、遺伝的な要因が絡んでいると考えられている(外耳炎のきっかけになることも多い)。
 続発性とは「2次性」という意味で、何らかの病気になった結果、“2次的”に脂漏性皮膚炎が発症するものである(犬の脂漏性皮膚炎の大多数が続発性と思われる)。
 例えば、皮膚に炎症が起こるとターンオーバーが速くなる。人が海水浴に行き、紫外線を浴び過ぎると、皮膚が赤くなり、そのあと、ポロポロと表皮(角質)がはがれ落ちたりするのも、それである。
 皮膚炎を起こす病気には、細菌感染症や真菌感染症(マラセチアなど)、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性皮膚炎、ダニ類などの寄生虫感染症、あるいはホルモンの分泌異常などがある。つまり、何らかの要因で脂漏性皮膚炎になると、フケが異常に増え、さらに様々な皮膚病が発症したり、症状がひどくなっていくのである。また、皮膚の角質間は脂質で構成されているために、大量の角質とともに、しばしば必要以上に脂っぽくなることもあるが、アトピー性皮膚炎では過剰な発汗と臨床的には区別がつきにくいこともある。



【治療】
薬用シャンプーの活用でフケの元を溶かし、皮膚炎の1次的な要因を特定して治療する
 
 「原発性」の脂漏性皮膚炎の場合、原因不明で、原因に直接働きかけるような確かな治療法はない。角質を溶かす作用のある薬用シャンプーを使ってこまめに体を洗浄し、堆積しやすいフケを根気よく洗い落とし、症状の悪化を食い止めることが大切である。
 もっとも、シャンプーをし過ぎると、皮膚表面のバリアである「皮脂層」がなくなり、表皮がカサカサになってくる。それを避けるために、シャンプー後、きちんとリンスするなどして、皮膚の保湿を心掛けてほしい。
 何らかの要因で皮膚炎などを発症し、2次的に脂漏性皮膚炎になっている「続発性」の場合は、薬用シャンプーでフケを落とし、リンスなどで保湿することは当然重要だが、それだけで済むことではない。
 具体的に、何が元で皮膚炎が発症したのか、正確な要因を確定。例えば、マラセチアなら抗真菌薬の投与、細菌性膿皮症なら細菌をたたくために抗生物質の投与、アレルギー性皮膚炎なら、原因物質(アレルゲン)を特定してそれを減らしていくなど、それぞれの要因に合った治療を行っていくことが極めて大切となる。元の病気が治っていけば、脂漏性皮膚炎も自然に治っていくケースが多い。
 皮膚炎は慢性化すると根治させることが難しい。気長に症状の改善に取り組んでほしい。



【予防】
ブラッシング、シャンプーなどのボディケアと健康管理を行う
 
 愛犬との散歩のあと、ブラッシングをしたり、絞ったタオルで体をふいてあげたり、定期的にシャンプーをしたりして、いつも皮膚、被毛を清潔に保つこと。また、シャンプー後のスキンケアも必要である。特に換毛期や梅雨時などは手入れを怠ると不潔になりやすい。いつもよりこまめにブラッシングやシャンプーをし、ボディの状態をチェックしてあげることである。
 普段から健康状態に留意して、適度な運動と、質、量ともに偏りのない食生活を続けること。運動不足やストレス、栄養過多などが重なれば、体力、免疫力が低下していき、皮膚炎を引き起こす細菌や真菌、寄生虫などが繁殖しやすくなる。アトピー性皮膚炎などアレルギー疾患も症状が悪化しやすくなる。
 愛犬のフケがいつもより増えているようなら、念のために、動物病院でチェックしてもらえば安心である。

*この記事は、2007年3月20日発行のものです。

監修/東京農工大学 農学部獣医学科 教授 岩崎 利郎
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