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血液型のはなし
本屋さんに行けば、人間の血液型による性格分類や相性判断の本が無数に見つかる。
では、犬やネコなど動物の血液型のことはどうなのか。
長年、動物の血液型と輸血の研究を行っている、
獣医師の江島博康さんに犬の血液型についてインタビューしました。

元日本獣医畜産大学助教授
獣医師 江島 博康さん

  犬の輸血や治療に役立つ血液型分類

 犬やネコなどの動物が、事故やケガ、病気などで輸血するとき、それぞれの動物の血液型が分かっていれば、安全に治療することができます。
 たとえば犬の場合、実際はいくつもの数字やアルファベットで分類される血液型が知られていますが、輸血や治療に役立つものとして―人間でいえば、ABOやRh型に相当するタイプですが、「1システム」と「Dシステム」という血液型があります(もっとも、これは赤血球の血液型で、白血球にはまた別の血液型があります)。
 1システムは、「1・1型」と「1・2型」と、そのいずれでもない「1マイナス(−)型」の3タイプ。Dシステムは、「D1型」と「D2型」、その両方に反応する「D1D2型」の3タイプがあります。この1システムとDシステムの組み合わせで9種類。そして輸血される犬9種類とドナー(提供者)の犬9種類の組み合わせで、輸血可能かどうかが判定できます。

 ちなみに「1・1D1D2型」は9種類すべての血液型と輸血可能ですが、「1(−)D1型」と「1(−)D2型」は自分と同じ組み合わせの血液型としか輸血できません。
 とにかく、犬の血液は、体重1kgあたり90cc。体重10kgの犬なら900ccです。その3分の1、300cc出血するとショック状態に陥ります。ネコの血液は、体重1kgあたり65cc。ネコはもともと砂漠の動物なので水分が少なくても生きていけるし、貧血にも強いのです。そのような動物の特質を知り、自宅の犬やネコの血液型を知っていれば、万一、事故や急病で輸血が必要なときにも、すばやく、最善の処置ができます。

犬の血液の顕微鏡写真。
血液型で人間と犬の相性が分かれば面白い

 興味深いのは、1システムの血液型が、どの犬種でも「1・1型」が約40%、「1・2型」が約20%、「1(−)型」が約40%の割合で存在することです。一方、Dシステムでは、欧米犬種の約99%が「D2型」で、「D1D2型」が約1%(それも、私が調べた範囲では、シェパード犬とビーグル犬だけ)なのに対し、日本犬種ではどの犬種もほぼ、「D1型」が約30%、「D2型」が約30%、「D1D2型」が約40%となっていることです。今後研究が進めば、各犬種の血液型から、この犬種はいつ頃、どの犬種と交雑したか分かるかもしれません。
 また、将来、それぞれの犬の性格や能力と血液型の関係が明らかになっていけば、訓練前の段階から盲導犬にはこの犬がいい、聴導犬にはあの犬が、といった選び方ができるでしょう。さらにこれから高齢化社会になって、ますます人と動物の交流が大切になっていきます。そのとき、たとえば、A型の人は何型の犬が飼いやすいとか、O型の人はこの型の犬と相性がいいとか、同じ犬種の犬でもあなたにはこの犬がいいとか、人間と犬の相性を考えて付き合うことができればもっと楽しく暮らせるに違いありません。

あらかじめ愛犬の血液型を知っていれば、いざというときに安心。

人間のための研究から、
動物を救う医療の高度化のために


 犬の血液型の研究史をみると、2つの流れがあります。一つは、科学者の個人的な興味・関心による研究で、1900年頃から始まりました。もう一つは、主にアメリカで、第2次世界大戦のとき、野戦病院などの手術に必要な輸血技術を確立するために、犬を実験動物として基礎研究が行われました。もともと動物の血液型研究の中心は、肉質のいい牛や豚をつくったり卵をたくさん産む鶏をつくるための家禽の品種改良や、人間の医療技術の進歩を目的としたものだったわけです。
 近年、動物をコンパニオン・アニマルと考えるようになって、ようやく、動物を救う医療のために、犬やネコの血液型を研究しようという動きが市民権を得るようになってきました。
 とにかく血液型の本格的な調査・研究はまだ始まったばかりです。当社では、最近、犬とネコの血液型判定キットを開発し、農林水産省の認可を得て、市販し始めました。今後は、より研究を重ねて、アメリカにある動物血液バンクのように、安全な輸血用血液を提供し、犬やネコの治療や救急医療に大いに役立てたいと願っています。

*この記事は、1996年1月15日発行のものです。

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