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子犬の1日幼稚園
きちんとしたしつけは、子犬のときから家族みんなが楽しみながらすることが大切。
そんな思いで飼い主の人たちに熱心にしつけ指導を実践している
ルカ動物病院の院長・江原郁也さんにインタビューしました。

パピーパーティ
主催 江原 郁也さん
●ルカ動物病院
 豊中市北緑ケ丘1-1-11
 Tel (06)846-2040

犬の本来の姿を知って、正しい接し方をする

 むやみにほえたり、かんだり、人の言うことを聞かなかったりする犬のほとんどは、飼い主さんが動物に間違った接し方をしておられるために起こってくることです。
 犬は非常に率直で純粋な動物ですから、飼い主さんが犬の本来の姿を知って、正しい接し方をしていけば、問題行動を起こすことはまずありません。犬の本来の姿というのは…、もともと犬は群れで生活していた動物で、群れのリーダーには必ず服従するという本能があります。つまり犬には、リーダーに従うというのが何よりも喜び。リーダーにほめてもらうということが犬たちの行動の動機になっているのです。
 そのことをよく理解して、オスワリやフセ、マテなどをさせて、できたらほめてあげることが大切です。いい行いをすれば飼い主にほめてもらえるということをこの子たちに教えていけば、それで十分なんです。それを、ただかわいいからと、どんな願いでもかなえてあげていれば、犬は自分がリーダーだと思って、飼い主や家族のことを下に見てしまう。あるいは、言うことをきかないからと、いつもたたいたり、しかったりしていれば、犬はとても頭のいい動物ですから、名前を呼ばれても、また嫌な思いをするからと寄りつかない。結果的に、「この犬はダメだ」と非難され、あるいは捨てられる。不幸な目に会うのは犬ですが、犬たちに何の責任もありません。悪いのは人間、飼い主のほうです。

よその犬と遊ぶことも大切。じゃれ合って犬同士の社会性を身につける。

「パピーパーティ」は、しつけの「発表会」

 そんな思いがあって、僕は2年前に開院して以来、動物の治療だけでなく、飼い主さんに一生懸命しつけのアドバイスをしてきました。新設の動物病院に来られる飼い主さんには、初めて子犬を飼う方が多いのです。僕にも幼い子どもがいて、自分の子どもがどうすれば素直な人間に育つのか悩むことがありますが、新米の飼い主さんは子犬の育て方で僕と同じような悩みをもっておられるので、みなさん、熱心に僕の話に耳を傾けて、自宅で子犬のしつけに取り組んでおられます。そのような飼い主さん家族と子犬たちの「発表会」として始めたのが、「パピーパーティ」です。僕はこの「パピーパーティ」を「1日幼稚園」と言っています。
 「発表会」といっても、まず大切なのは、犬同士のふれあい。よその犬と遊んで社会性を身につけてもらう、いわば、社会化の勉強です。そして、家庭でのしつけの成果をみんなの前で見せてもらい、やり方に問題があればその場で一人ひとりアドバイスしています。みなさん家族ぐるみの参加で、子どもさんたちがきちんと愛犬をしつけていて、感心します。僕が思っていた以上の上達ぶりですね。よく大きな犬を扱うのは私たちには無理と言う方も多いのですが、そんなことはありません。やり方ひとつで、小さな子どもさんでも、奥さんでもお婆さんでもできるんです。
 現在、パピーパーティは6月と10月の年2回。最初は飼い主さん10人に呼びかけて、6組。次は20人に呼びかけて、11組と、だんだんに増えて、いまは14,5組のご家族が参加されています。開院当時、生まれたばかりだった子犬たちももう2歳。これからは成犬のためのしつけ方教室もしていきたいですね。


幼犬時に多くの人に接することで、犬達は人の優しさを学ぶ。

動物病院にしつけや飼い方指導の部門をつくりたい

 いま、僕ひとりで動物たちの治療をし、犬のしつけ指導をしていますが、来院される人たちが増えると、自分だけで両方やるわけにはいかなくなってきます。それに、病院に外科や内科などの部門があるように、動物病院にも医療部門とは別に「しつけ」や飼い方指導の部門をつくってやっていければいいな、と考えています。そのためには、動物好きでしつけ指導に興味のある人にインストラクターになっていただく必要があります。病院の別フロアで、専門的なしつけ教室を開いて、もし問題行動をとる犬がいれば、家庭での育ち方、飼い方にいたるまでチェックして、矯正してあげたいですね。
 ある問題行動をする犬が6歳だとすれば、これまで6年間の歴史があります。だから犬への接し方を変えたからといって、みんながみんな、すぐに問題が解決するわけではありません。そのとき、何が試されるかというと、飼い主さんの忍耐と日々の努力というわけです。毎日、こういうことをしてください、といっても、飼い主さんにはそれぞれ家庭の事情があって、すぐにできないのが現状です。
 そういった問題行動の矯正には、獣医師の役割が大きいのです。というのは、攻撃的、破壊的な問題行動を起こす犬やネコに対して、そのすべてが接し方の間違いによるとはかぎらないからです。それらには、脳や神経的疾患、感染症、代謝異常など、さまざまな体の異常がかかわっていることも少なくないからです。それらに気づかずに努力しても効果はありません。
 たとえばオスの性ホルモンも動物の支配性を高めるので、去勢手術することでしつけやすくすることも大切です。また非常に神経質な犬なら、心を落ち着かせる薬の助けを借りて指導していくのは、獣医師にしかできません。
 とにかく、人に馴れない犬なら獣医師が診察しただけでストレスがかかります。無意識に、自分の家の犬に「人の手がこわい」という思いを植え付けていれば、人を信頼できず、スムーズに治療が進まなくなることもあります。きちんとしたしつけは、愛犬の命を守るためにもとても大切なんです。

*この記事は、1996年7月15日発行のものです。

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