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ペットとヒトの 共生社会をめざして 「ペット法学会」設立に 意欲をもやす
日本で最初のペット法律書『ペットの法律全書』を出版した同志社大学の吉田眞澄先生は、
自らもネコ6匹を連れてドイツで2年間暮らしたほどの動物好きです。
その吉田先生に「ペットと法」についてインタビューしました。

同志社大学法学部  教授
吉田眞澄(よしだ ますみ)さん
同志社大学法学部教授 1945年京都生まれ。専門は担保法、不動産法、特にマンション法。近年はペット法についても研究。今年4月、有斐閣より『ペットの法律全書』(共著)を出版。

ルールづくりが共生社会の第一歩

 私がペットと法律の問題に関心を持ちだしたのは、マンションでネコを飼うために自宅の上下と両隣4軒の同意書をもらいに回ってからです。その後、マンションの管理組合の役員になり、飼い主と管理組合の双方の立場からこの問題についていろいろと考えることになりました。
 マンションで犬やネコを飼えるかどうかは法律に何も決められておらず、管理規約にゆだねられています。そのようなこともあり、飼育の可否でもめるケースはたくさんあります。
 これまではペットを飼うと他の人が嫌がるとか資産価値が下がるとか、人獣共通感染症にかかるのでは、といった意見が強かったのですが、最近はペット好きの人が増え、ペットは絶対だめという人の数は減っていますし、実際上、ペット飼育禁止のマンションや公団住宅でさえ10〜20%の家でペットを飼っています。また規制のない狭い戸建て住宅で、ムダ吠えする近所の犬に悩まされている家庭も少なくありません。
 今後は、住宅の様式にかかわりなく、「ペットを飼ってもよいが、その代わり、これだけのことを守りなさい」という決まりを明確に定め、双方がある程度納得できる解決をめざすべきだと思います。その際、動物の掟(習性)をうまく利用しながらヒトの掟(規制)をつくらなければなりません。

ネコと暮らしたドイツでのペット事情

 私は、ネコ6匹を連れてドイツに2年間暮らしていたことがありますが、どの犬もきちんとしつけられていて、嫌な思いをしたことは1度もありませんでした。スーパーマーケットの前には犬をつなぐコーナーがあり、鴨川河畔のアベックのように(笑)、等間隔におとなしく並んでいました。ドイツ滞在中、犬がムダ吠えしているのを聞いたのは1度だけで、その方法がよいかどうかは別にして、近くにいた飼い主が、死ぬのではないかと思うほど、その犬をせっかんしていました。また、日本人女性と結婚したドイツ人が日本に来たとき、奥さんの実家の飼い犬を見て、「野良犬が鎖につながれている」と驚き、その犬をドイツに連れ帰ってきちんとしつけ、幸せに暮らしているそうです。確かに日本のしつけはよくありません。ドイツほどでなくても、ヒトとペットとの共生社会をつくるために必要不可欠だと思います。

 それと、ドイツではネコを介して近所の人々とずいぶん仲良くなりました。お隣の大家さんはシェパードを飼っていたのですが、うちのネコを見て、ネコが欲しくなって、1匹飼いだしました。またダックスフントを飼っていた老夫婦とは、私たちが旅行するとき、エサと水、それにトイレ掃除などネコの世話をしてもらい、彼らが旅行するとき、私が犬を散歩につれていくほど親密になりました。


「ペットの法と政策学会」設立をめざして

 とにかく日本が法治国家である以上、あらゆる問題について法制度をどうするか、法制度との関係で具体的な政策をどう立て、どのように実行するかが問われます。しかし日本はその辺がルーズで、例えば世界的に有名な「行政指導」のような形で処理されることが少なくありませんでした。

 本来必要な法律が欠けているのはペットに限ったことではありませんが、特にその傾向が強いですね。確かに昭和48年にできた「動物の保護及び管理に関する法律」がありますが、当時、イルカやクジラの「虐待」で非難を受けていた日本政府が、動物愛護活動に熱心なイギリスの王室関係者の来日が日程にのぼり急きょつくったもので、本気でそれを守るつもりはなかったようです。

 また日本の法律学界ではこれまでペットに関する研究がほとんどなく、今年の春、私たちが一般の読者向けに出した『ペットの法律全書』がわが国におけるペットの法律書第1号となりました。ペットの法律といってもさまざまで、どの項目も一から調べなければならず、まとめるのが大変でした。

 今までは「たかがペット」できましたが、コンパニオン・アニマルとして人々の暮らしに大きな意味を持ちつつある現在、今までのようにはいきません。ヒトと動物の共生の道を探るために、法律関係以外の英知をも集めた「ペットの法と政策学会」をつくって、問題の解決に向かって取り組んでいきたいと思っています。

*この記事は、1997年9月15日発行のものです。

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