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動物をめぐる人びと
 
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子どもやお年寄りも、犬たちもよりよい関係をきずくことができる社会を願って
犬と人とのかかわりを探り、「日本犬・血統を守るたたかい」や
「犬ときらめく女たち」などのルポを書きつづける
ノンフィクション・ライターの吉田悦子さんにインタビューしました。

吉田悦子さん ※「吉」の漢字は下の棒が長い方です
千葉県生まれ。
出版社の取材記者を経てノンフィクション・ライターとして独立。人と動物との「共生」はじめ、社会福祉、自然環境など「いのち」をめぐるさまざまなテーマに意欲的な取材・執筆活動をおこなっている。
「これから、犬の目線で考えた高齢化問題などの社会テーマや、日本犬を通してみた日本人論のようなものを書いてみたい」。
主な著書に『日本犬・血統を守るたたかい』(新人物往来社)『犬ときらめく女たち』(同前)『全国ペット霊園ガイド』(MOKU出版)など。近々、多様な動物医療のルポをまとめた本を出版の予定。

愛犬ジョニーと。

「犬ときらめく女たち」の取材より。女性の麻薬探知犬ハンドラー(上)と災害救助犬トレーナー。




はじめは、犬の成長に気持ちが追いつかなくて

 小さいときから生き物が好きで、近くの池や沼、田圃などで、ドジョウやカエル、オタマジャクシなどをとっては、家で飼っていました。でも、父が、犬は庭で放し飼いにして自由にさせるのがいちばん、という考え方でしたから、小さいころ、近所で生まれた子犬を抱いて帰ってきても、「ぜったい、だめ」と。
 それが高校生のころ、庭付きの家に引っ越してすぐに、父が秋田犬の子犬を連れて帰ってきました。その子「ジョン万次郎」が来て、とても楽しかったのですが、秋田犬のことをよく知らなかった私は、犬の成長のはやさに気持ちが追いつかなかったような気がします。あとで犬の身になって考えると、「もっと、こういうことをしてほしい」という不満があったかもしれませんね。
 ジョン万次郎が亡くなったあと、しばらくして出逢った迷い犬が、今年十三年めのジョニーです。拾ったとき、やせすぎで、ノミもたかり放題でしたが、元気がよくて、ほほえみながら、尻尾をふって、私たち家族に「会えてうれしい、一緒にいたい!」、と一心に訴えていました。ジョニーは、しつけらしいしつけをしなかったのですが、性格がよくて、家族一人ひとりの気持ちや表情に敏感に反応して、一途にこちらを慕ってくれます。


日本犬への思い入れの深さに惹かれて

 私は九年ほど前、創刊したばかりの『愛犬チャンプ』編集部にいた友人から、普通の犬好きの立場で取材記事を書けないか、と相談され、日本犬の取材を依頼されました。まず、うちで飼っていた秋田犬のルーツを探ろうと、忠犬ハチ公のふるさと、秋田県の大館市に行きました。
 それまで日本犬のことはほとんど知らなかったのですが、日本には、昔から、北海道には北海道(アイヌ)犬、秋田には秋田犬、信州には柴犬、山梨には甲斐犬、和歌山には紀州犬、四国には四国犬…と、全国どこにでも、その風土と地域の人たちに守り、育てられてきた犬たちがいて、人と一緒に猪や熊、鹿をとったりして生きてきた。現在も、各地で、熱心に日本犬を守っている方々がいる。その方々の日本犬への思い入れって、すごく深いんです。

 私が取材に行くと、こんな若い人がと、意外な顔をされるのですが、遠いところから来たというので、一生懸命、自分の犬のことを説明されたり、古い資料を見せてくださったり、愛犬仲間のところへ連れていってくださったり。私も、その方々の思いに応えようと、古くから人間とかかわりの深い日本犬についていろいろ調べて、なぜこれほどまで日本犬に打ち込むのかを追体験しながら、文章を書いていく。地道な積みかさねでしたが、おかげさまで、「言いたいことや気持ちをよくわかっていただいて」といううれしい便りや、もっと日本犬のことをみなさんに理解してほしいという声に支えられて、四年間、取材で全国をまわることになりました。その記事を一冊にまとめたものが「日本犬・血統を守るたたかい」です。

その後、取り組んだのが、犬とかかわる仕事をしている、自分と同世代の女性たちを訪ね歩いたルポルタージュで、同じ『愛犬チャンプ』連載の「犬ときらめく女たち」でした。この企画は二年間続き、二十三人に取材しました。どの方も「一生の仕事だ」とおっしゃって、専門性を磨きながら、それぞれの仕事に打ち込んでいる、明るくタフな人ばかり。生き物を相手にする仕事は、お金では割り切れない、充実感があります。生き物とのかかわりを大切に感じられる感性があるかどうか、ですね。

 ところで、最近は、犬を相棒として暮らしている中高年男性が増えていますね。いまは会社社会が崩壊して、家庭に戻っても居場所が見つからず、犬を飼って、「はじめてわかりあえた!」という部分があったりして(笑い)。だれでも自分を必要とする相手がいることに喜びを感じます。結局、人間って、どういう状況にあっても、さびしい生き物だと思うんです。これから、高齢化や自然破壊が進むと、犬やネコなどとのふれあいがますます必要になります。お年寄りも、お世話されるばかりじゃなくて、自分が世話する喜びを日常的に味わってほしい。世の中、子どももいれば、お年寄りもいる、犬もいる、という、人間も動物もよりよい関係をきずくことができる社会になっていくべきではないでしょうか。

*この記事は、2001年3月15日発行のものです。



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