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動物をめぐる人びと
 
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僕たち、すごい負けず嫌いです。
世界チャンプになるために、子どものときから命を賭けていますから。

ロードレース世界選手権500ccクラスで活躍する
ノリックこと阿部典史さんに、オフシーズンの東京でインタビューしました。

阿部 典史さん
1975年、東京生まれ。
5歳でバイクに乗りはじめ、13歳のとき、ミニバイクレースデビュー。中学卒業後、アメリカで40戦以上レースに出場するなど武者修行。4カ月後に帰国して、国内レースに参戦。93年、全日本選手権500ccチャンピオンを獲得。 翌94年途中から、世界選手権500ccクラスに参戦。96年、20歳7カ月で、日本GPで初優勝。99年のブラジルGP、2000年の日本GPでも優勝。2001年は二度のケガにもめげず、全レース出場。同年の世界選手権500ccランキング7位。愛犬ボニーとともに「今年か来年にはチャンピオンを!」と闘志を燃やす。スペイン・バルセロナ在住。




この子覚えがはやくて、すごく頭いいんじゃないか、
と親ばか状態になって(笑)


 この犬、イングリッシュ・コッカー・スパニエルのボニーといいます。日本ではめずらしいのですが、スペインにはいっぱいいます。
 僕は、世界選手権GPに参戦した一九九四年からずっとスペインのバルセロナに暮らしているんですが、いつもレースで世界中をかけまわり、すごいプレッシャーばかりの生活なので、動物を飼ったほうが心がやすらぐんじゃないか、と思って、昨年(二〇〇一年)五月に飼いはじめました。
 小さいときから動物が大好きでしたが、そのころはマンション住まいで犬猫は禁止。だから小鳥やうさぎ、ハムスターなどを飼っていました。でも、中学一年の夏、子猫を二匹拾ってきて、母から「ここはペット禁止だからだめ」と。やっぱり捨てなきゃならないのか、と名前もつけず、いつ捨てようかと迷っているうちに、僕も母も情が移って、内緒で飼うことにしたんです。室内飼いでのびのび暮らしているから、今でもすごく元気で、とても十四歳には見えません。
 犬はボニーが最初。ボニーといると、散歩したり、ごはんをあげたり、ウンチやオシッコの後始末をしたりで、レース前でもリラックスできていいですね。もちろん、レースのときはどこへでも一緒、サーキットのなかのモーターホームで暮らしてます。
 ボニーを飼うとき、日本から犬やしつけの本をいっぱい送ってもらって読みました。この子、覚えがはやくて、オスワリ、フセ、マテなどは一日で覚えました。だから、すごく頭いいんじゃないか、と、親ばか状態になって(笑)。ところで、スペインの人って、日本の飼い主とちがって、全然しつけしないんです。僕がやってみせたら、びっくりしてました。この犬種はみんなよく知っているんですが、マテやオスワリするのを見たの、はじめてだって。とにかく、むこうは道路で犬がウンチしても、そのままで片づけないんです。イギリスとドイツ、アメリカぐらいですね、きちんとしてるのは。


レースは、格闘技に近いですね。
前に出るために、ほかのバイクに
ぶつけてでも出ていきますから


 バイクは五歳のときから。父がオートレーサーなので、その影響で乗りはじめました。僕には一歳上の兄貴がいて、ふたりで競い合うかたちでバイクに乗っているうちにどんどん上達。やるなら、いちばん上になりたいと思っていて、ぜったい世界チャンピオンになるぞと決めたのは中学のときでした。
 中学を卒業して、五カ月ほど、アメリカに行きました。当時、アメリカのライダーがすごく速かったので、彼らに勝つための練習をしないと、世界チャンピオンになれない、と。アメリカにいるあいだ、四十戦以上レースに出て、ほかの日はほとんど練習ばかりしていました。あのときの経験は今に生きていると思います。
 強くなるには、練習だけではだめ。実戦じゃないと、本当の力は発揮できません。いくら練習で本気でやっていると思っていても、本当の「本気」は出ないんです。やはりレースにならないと。
 でも、去年はついてない年で、二回もケガをしました。月に何度もレースがあるので、ケガが治らず、完全に走れないまま、出場する。それでも結果を残さないといけないから、つらい年でしたね。
 見てください。九月のポルトガル戦で剥離骨折した左手の小指と薬指、まだまっすぐにならないんです。予選で転倒して、骨折。スクリューで止めて、痛いから麻酔注射して、レースに出たんですが、力が全然入らないから、ちょっとすべるとグリップから手が離れる。危なかったです。
 レースは、格闘技に近いですね。みんなすごい負けず嫌いで、スタートのときなんか、前に出るために、ほかのバイクにぶつけてでも出ていきますから。とくに今はみんな接戦なので、たいへんなバトルになっちゃうんです。とにかく、レース前は眠れないことがほとんどですね。結果を残さなきゃ、というプレッシャーと、もしかしたら、やばいかも、という…。僕たち、命もかかってますから。
 レースのむずかしさ、ですか。もちろん、テクニックをきわめていくのは、非常にむずかしいことで、僕もトップになるには、まだまだ学んでいかなきゃいけないこともいっぱいあります。でも、いちばん大切なのは、メンタルな面ですね。300キロというスピードの、いつも限界のところで走ってますから、精神的についてこれなくなると、全然速く走れない。メンタルな面で、いかにいいコンディションにもっていくかが、むずかしいんです。
 やはり、レースで優勝すると、なによりもうれしいですね。僕はまだ、グランプリで3回しか勝ったことがないんですが、最初のときは、泣いちゃいました。それだけのために、子どものときからずっとやっている、そのために命を賭けていますから。でも、いちばんの目標は、世界チャンピオンです。僕らの500ccのトップクラスでいちばん速くなるのは、二十八から三十二歳ぐらい。僕は今二十六歳だから、ほんとは、もうそろそろチャンピオン争いをして、今年(二〇〇二年)か来年にはチャンピオンを獲っていかないと、ね。

*この記事は、2002年1月15日発行のものです。



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