ペットのための快適生活情報P-WELL
HOMEへもどる
 
動物をめぐる人びと
 
バックナンバー

自分を癒せるのは自分自身。
自分が力をつけることで、犬と走ること、イルカと泳ぐことの喜びをかみしめる。

犬と走り、イルカと泳ぎながら、動物と人とが共生する楽しさを
多くの人に広げる活動を行っている岩重慶一さんにインタビューしました。

岩重 慶一さん
1947年、鹿児島市生まれ。
西南学院大学卒業後、三菱信託銀行に就職。金融関係の仕事に熱中。40歳すぎに入院生活を送り、仕事だけの人生を反省。愛犬とジョギングして体力回復をはかりながら、伊豆諸島の御蔵島で、横浜の子どもたちにイルカと一緒に泳ぐ体験活動を始める。その後、仕事と掛け持ちで東京水産大学大学院に入り、水産資源管理学を研究。01年春、修士課程を修了。現在、東京水産大学地域共同研究センター客員教授、HAB研究所所長、ヒトと動物の関係学会評議員。カンボジアに行き、メコン川に生息するイラワジイルカの研究&保護拠点となる「イルカの学校」を建設。著書に絵本「おでこちゃんとイルカのねがい」など。今春、「わたしたちはイルカの学校をつくった」を出した。

カンボジアのイラワジイルカ救援キャンペーン絵本


近著「わたしたちはイルカの学校を作った」(全国紀伊國屋書店にて入手可)



カンボジアにて。
退院すると、女房が、「散歩しなさい、パパ」といって、子犬を連れてきた。 それがいま13歳のシェルティ「ラブリィ」

 ボクが育ったのは鹿児島市郊外の山里で、近くには山や田んぼがあって、家には犬やネコ、山羊、鶏と、いっぱい動物がいた。ボクは、朝、産み立てタマゴをおじいさんとおばあさんの食卓に届ける。山羊の糞を集めて、堆肥にする。あるいは近くの川でウナギ獲りをしたり、友だちと筏(いかだ)に乗って錦江湾まで行き、素潜りしたり、バケツでアジやイワシなどを獲って、晩ごはんのおかずにした。海ではよくイルカに出会ったけど、そのころは、ボク、彼らがサメだと思っていて(笑)、イルカが来ると魚が逃げるから、小石を投げて、追っぱらったりしていた。
 あのころは、貧しかったけど、いつも自然や動物のなかで暮らせて、とても幸せだったな。
 でも、大学を出てから、ボクは信託銀行に就職して、それからずっと融資などの仕事ばかりしていた。ところが40歳すぎに、無理がたたって、椎間板ヘルニアで入院。することがないから、子どものころよく遊んだ海の雑誌ばかり読んで、イルカっていいな、昔、石を投げて、悪かったな、今度はイルカと遊びたいな、と思うようになりました。
 退院すると、女房が、「散歩しなさい、パパ」といって、子犬を連れてきた。それがいま13歳のシェルティ「ラブリィ」。ボクはリハビリをかねて、ラブリィと毎朝、散歩をはじめ、ジョギングをして、どんどん元気になっていった。そして友だちとHAB21(ヒューマン・アニマル・ボンド=人と動物の絆21)というクラブをつくり、動物や自然とのつき合いがとぼしい横浜の子どもたちを伊豆の御蔵島に連れていって、イルカと一緒に泳ぐ活動をはじめた。夏はイルカ、秋から春は犬、という生活ですね(笑)。


人と動物のライフプランをしっかり立てないと、
幸せな生活を保てない


 みんなにイルカのことを教えるには、まず自分が勉強しなくちゃ、と、4年前に東京水産大学の大学院に入って、仕事帰りの夜や週末に通い、ボクは、イルカのこと、海のことを学びはじめた。そして去年の春、修士課程を修了。それを区切りに信託銀行をやめ、新しい道を進むことにしたんです。
 修士論文のテーマは「イルカを中心とする地域開発における公益信託の可能性」。ボクの思いは、簡単にいうと、イルカとつき合うにも、犬やネコと暮らすにも、経済的な仕組みが必要、ということ。ヒッピー生活ならともかく、現代社会で暮らす以上、経済的なセンスがないと、地域も家庭も動物と共存できないでしょ。たとえば、年金生活者は、月々支給される一定額から犬やネコ、あるいは熱帯魚と暮らす費用を出す。つまり、人と動物のライフプランをしっかり立てないと、幸せな生活を保てないんです。ボクは、元金融マンとしての知識と経験を生かして、そのようなペット経済学の分野を開拓したい。
 これからやっていきたいことの一つは「アニマルセラピー」です。自分が病気したあと、犬とジョギングし、イルカと泳いで心身ともに元気になってきて感じるのは、自分が強くなることがセラピーの始まりだ、ということ。たとえば、ジョギングやマラソンしてからだを鍛えると、海中をフィンで強くかいで、速く泳げるようになる。すると、イルカが「おじさん、けっこう速いじゃん」と、一緒に泳いでくれる。努力すれば、動物は必ずわかってくれる。犬と走るのもそう。こちらが一生懸命走れば、うれしそうに一緒に走ってくれる。
 結局、自分を癒せるのは、自分自身。自分が力をつけることで、走ること、泳ぐことの喜びをかみしめる。そして、その喜びを犬やイルカなどと共有しようと、相手に働きかけていく。とにかく、動物がストレスを感じるようなことをしてはダメ。動物も人も、お互いがハッピーになるためにチャレンジする。そのなかで、いつの間にか自分自身が癒されている、ということじゃないかと、ボクは思う。
 実は、去年、泳ぎの得意なラブラドール・レトリーバーの「トム」を飼いだして、毎朝、二頭と一緒に走ってる。トムが来てから、ラブリィも元気になった。犬が二頭いると、おもしろいね。それから、いま、考えていることは…、シェルティのラブリィは、歳だし、水が嫌いだからダメだけど、トムは若くて水が大好きだから、湘南の海で泳ぎの訓練をして、今年の夏は、和歌山県の太地町で、トムとイルカを一緒に泳がせてみようかな、と(笑)。

*この記事は、2002年3月15日発行のものです。



  Top of page ▲
<< [前の記事] [HOMEへもどる] [次の記事] >>