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「しばわんこ」はおもてなしすることで、心が晴ればれしていく。 人間もそうなっていけばいいな。 日本の心、日本人の生き方を「礼儀作法」のなかにさがす 「しばわんこの和のこころ」の作者・川浦良枝さんにインタビューしました。 |
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ほんとに悲しいときって、猫はここに来るんです。そして、じっと見てる。 うそ泣きではだめですが(笑)。 わたし、父が喘息だったので、小さいころは小鳥しか飼ったことがなかったんです。 ところが、ひとり暮らしを始めたとき、アパートの前に子猫がいて、ちょっと遊びにおいで、と部屋に入れたのが運のつき。ほんとうは文鳥を飼うつもりで、名前も「ブンジ」ってきめてたんですが(笑)。 でも、アパートは基本的に飼っちゃいけない。その、いけないところを渡り歩いて、ひとり暮らしを十年間したのですが。その間、ずっと猫がいて、その子が「パリ」。はじめて海外に行って、帰ってきてすぐに拾った猫なので「パリ」。もう十五年、片時も離れずずっといっしょ。ほんとに悲しいときって、猫はここに来るんです。そして、じっと見てる。うそ泣きではだめですが(笑)。 動物って、泣くとほんとにわかる。夫婦で、ちょっとケンカしてもわかる。家のなかの雰囲気が重いと、犬は気をつかいそうだけど、猫はひたすら寄りつかない。そこがかえっていいですね。逆に夫婦が楽しげにしていると、そばに寄ってきて「会話」に参加したがりますよ。不思議なことに、猫を飼う人は猫的に、犬を飼う人は犬的になってくる。犬を飼ってる友だちは、声が大きくなる。猫に向かって、「来い!」って(笑)。そうじゃない。そうじゃないんです。 でも、わたし、もともと犬派なんです。猫を飼ったから夢中になったけど。犬は昔から柴犬が好きで、飼いたいんだけど、飼えなかった。だから、それを描いてしまった(笑)。 柴犬の良さ、ですか。それは、単純にかわいいから。ペットショップに行けば、柴犬を見ちゃう。ほんと、そのくらいなんですが、柴の子犬かわいいじゃないですか。前足が太くて、ぷっくりしていて熊みたい。わたし、熊好きだから、というのもあるんですが、とにかく飼えるなら柴犬です。 自分の根底みたいな…、どうして自分がこんなふうに考えるのか、こんなふうになるのかを知りたくて わたし、元デザイナーだったんですけど、柴犬を使いたいと思っているときに、礼儀作法のカットを描くことになって。でも、ふつうの礼儀作法の本は工夫がない。明日、法事や結婚式というときに見て、あとは本棚のすみに置かれてる。そうじゃなく、ふだんから気軽に読めて、楽しく暮らしながら、いろんなことを覚えられればいいな、と雑誌MOEの編集者の人と雑談していたら、それ、すごくいいですから描いてくださいって。 「和のこころ」についてですか。前から河合隼雄さんが好きで、ちょっと落ち込んでいたとき、河合さんが日本人であることの根底について書かれた本を読んでいて、自分の根底みたいな…、どうして自分がこんなふうに考えるのか、こんなふうになるのかを知りたくて。それを日本の礼儀作法、日本人の生き方のなかにさがしてみたくなったのです。 「しばわんこ」を初めて描いたとき、あぁ、柴犬がほしい、こんなふうにお茶を入れてほしい、という思いがあったのですが、描きはじめると「しばわんこ」を召使にしてはいけない、と。この子は、人に喜んでもらいたい、というのがあるかもしれないのですが、その前に自分が喜んでいる。きれいなものを見て、「あぁ、きれい」と感じたり、お茶を入れて、「うれしい」と感じたり。 ときには、おもてなしをして、わたしがやってあげたのに、と恩着せがましくなってしまうことがあるじゃないですか。そういうのはよくない。「しばわんこ」は、おもてなしをすることで、自分も心が晴ればれしていく。人間のほうもだんだんそうなっていけばいいな、と。登場人物の「おばあちゃん」は、もう「その境地」に行ってる感じ。なにもできなかった「アルバイトの少年」も、自分でやるようになっていけば楽しいですね。 基本的に、自分から動かないとなにも変わらない。でも、なにかしてもらったときは、ありがとう、と素直に相手の気持ちを受けとらないといけない。それはすごく大事じゃないか、と思います。 *この記事は、2002年7月15日発行のものです。 |
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