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飼い主と飼い犬は、目と目で会話してるから、 同じような心、目つきになるんじゃないかな。 |
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写真の面白さは、自分が撮った ”世界“がマジックのように 浮かびあがってくる”ときめき“ 僕は甲府盆地の南のはずれの農村地帯で生まれ、十歳のとき、単身で自営業をしていた父の住む東京に母と兄弟で越してきたんです。父が犬好きで犬がいなくなることはなく、仕事先へ車に乗せて連れていくほど。僕も小鳥を十数羽飼ってたときもあります。でも、小学生のころ、ソ連の人工衛星が打ち上げられ、ガガーリンがはじめて宇宙を飛んだので、僕も星に対する興味がわき、小学校六年ごろから月に一、二回は渋谷の東急文化会館の屋上にあったプラネタリウムに通ってました。中学校のとき、天文部に入り、望遠鏡で星を観て、将来、天文をやれたらいいな、と思ってました。 ところが天文部が廃止され、顧問の先生が写真部をつくり、ちょうど写真好きの兄の影響もあって僕も写真部へ。家の二階の物干しに三脚を立て、コンパクトカメラでオリオンや北斗七星などの写真を撮ってました。高校のときも写真部にいて、卒業したら天文のほうに進みたかったんですが、受験勉強がどうも肌に合わなくて、それなら、写真の道へ進もうと、写真学校に入ったんです。 写真の面白さは…、やっぱり、現像して、ネガを引伸機にかけて、現像液に印画紙を入れると、自分が撮った”世界“がマジックのように浮かびあがってくるときの、”ときめき“ですね。自分が見ていた現場が画像に固定される、その不思議さ…。とくに記録写真は、その場に生まれる出来事に合わせてシャッターを切っていく仕事だから、どんな瞬間が撮れているか、現像してみなくちゃわからない。「FOCUS」で政治家の素顔を撮る仕事も同じで、ジーッと待っていて、面白いと思った瞬間、シャッターを切る。自分のほうが自己主張すると、現実に起こっている出来事が見えなくなる。陰の仕事というか、縁の下の観察者だと思うんです。 林さんいわく、「自分は丸顔 なんで、付き合う人も、犬も やっぱり丸顔がいい」 動物写真について、ですか。実は「FOCUS」で、動物と人間のかかわりに焦点をあてた「へいせい動物記」という連載を七年間、三百五十九回、全部ひとりで担当していました。「へいせい動物記」のなかの、たとえばこの写真は、大分県の養豚場の子豚です。母豚に十何匹子豚が生まれても、弱い子豚は乳をうまく吸えなくて死んでしまう。そのなかの一匹を、養豚場の社長さんが自分の飼ってた柴系の雑種の母犬に与えてみたら、子豚もすぐに乳を吸って、子犬と兄弟のように暮らしだしたわけです。こっちは、岡山県の農家の飼い犬に恋をしたはぐれ猿。メス猿なんですが、毎日、山から通ってきて、犬が昼寝していると毛づくろいしてあげ、夜になると帰っていく。この家の奥さんが犬にリンゴをやろうとしたら、「わたしの男に手を出すな」と威嚇してるんです、この写真は。この取材で日本全国をまわったんですが、犬を撮ることも多くて、犬と飼い主は似ているな、ということを何となく思ったのが、写真集『愛すれば、そっくり』のきっかけです。そこで、朝の散歩のときによく出会う、飼い犬と散歩している人に声をかけて撮りはじめました。最初に撮らせてもらった林さんは、戦争中、特攻機の飛行機乗りで、浅草の下町の、面倒見のいい親分肌の人。愛犬チャックも、知り合いの子犬にちょっかいを出そうとする犬がいれば懸命にほえる、義侠心のある犬なんです。その林さんが言うには、「自分は丸顔なんで、人間も丸顔の人が好き。細おもての人はどうも気が合わない。だから自然に丸顔の人と付き合って、それは犬も同じでやっぱり丸顔の犬がいいんだ」と。この写真の人、隅田川近くの神社で出会った泉谷さんですが、あるとき声をかけると、「実はわたし、元国鉄関係で、以前、青梅のほうに住んでいて、捨て犬をみるとかわいそうでそのままにしておけなくて」と。最盛期には一軒家に五十九匹の犬を飼っていて、「青梅のムツロゴロウ」といわれていた、とか。それが、国鉄の民営化でクビになり、犬の餌代も出なくなって夜逃げ。テレビのワイドショーで叩かれたんだけど、そのおかげで犬をもらってくれるという人が全国から現れて…。結局、犬のために家一軒台無しにして、いま仙人のように年金で暮らしてる。この犬が最後かな、と言ってました。 こんなふうに何人か撮ってるうちに、どこが似ているんだろうと観察すると、「目つき」が似てる、というのはすぐ気がつきました。犬がレンズを見てくれると、犬の目つきがわかって、犬の心、気持ちがわかる。そうしてみると、飼い主と飼い犬は、長いこと、目と目で会話してるから、同じような心になり、同じような目つきになるんじゃないか、と。 人間は、犬と一緒にいるとき、人間単独では撮れないような、ほころんだ表情の素顔になる。とにかく、飼い主と飼い犬はかけがえのない時間を共有していて、他人に説明しきれない、切実な結びつきを感じます。 *この記事は、2003年3月20日発行のものです。 |
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