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動物をめぐる人びと
 
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動物の力って、すごい。
生きることの喜びも悲しみも、味わわせてくれる。
だから、一生、恩返しを続けていきたい。

小林カツ代さん(料理研究家)
大阪生まれ。
結婚後、母親の手作り料理の素晴らしさの影響もあって、料理の道に進む。世代を超え、誰でも簡単に作れる、おいしく、心のこもった料理の数々を提唱して、全国に多くのファンを持つ。生来の生き物好きで、家族ぐるみで多くの捨て犬や野良猫などを救い、阪神大震災では、懸命に被災動物を救済する人々をバックアップ。仕事のかたわら、野生動物保護や、野良猫を救うための活動にも積極的に取り組み、今年6月、作曲家の三枝成彰さんたちと動物救済のための支援組織「ノアーズ」を結成。8月31日には、自ら団長を務める、各界で活躍する女性たちの「神楽坂女声合唱団」が東京オペラシティでチャリティーコンサートを開く。著書に「愛しのチー公へ」「小林カツ代料理の辞典―おいしい家庭料理のつくり方2448レシピ」はじめ、多数。


キッチンスタジオの常駐猫「うなぎ」。大好きなカツ代さんに甘えてうっとり。

「野良猫やカラスがゴミを荒らす」
と言われるけど、生きてるから
おなかがすくのは当然


 今、自宅には猫が五匹。「ペント」に「チャイ」、頭のてっぺんの毛がひょいと立っている「波平」、娘(吉祥寺でミステリー専門書店を営むまりこさん)が二十歳の時に拾ってきた「ハタ」と、体の形がウリのような「うり」ちゃんがいて、ウサギも一匹。ここ(仕事場のキッチンスタジオ)には「梅干し」と「うなぎ」の二匹がいたんですが、梅干しが死んじゃって、うなぎだけ。それから、息子(イラストレーターで料理家のケンタロウさん)の家には「パンチ」と「チョップ」という猫が二匹に「クロタロウ」という犬が一匹、彼の仕事場には「キック」という猫がいます。
 わたし、子供のころから、本当に生き物が好きでしてね。最初は犬しかいなかったのですが、小学校の終わりに「マル」という子猫をもらって、もうかわいくて、かわいくて。今でも忘れられないことは、ある時、手に大やけどを負って帰ってきて…。それを母が治療したんですが、マルは「この人が助けてくれる」と思っていたのか、痛くても、涙を浮かべてじっと我慢してました。
 人が優しくなれるというのは、自分より弱い者に対した時ですね。だから、今こそ、わたしは動物がとても必要だと思うのですが、動物を飼っちゃいけないところが多いですよね。でも、動物って、人よりずっと前から地球にいて、この世には必要欠くべからざるもの。それに、犬も猫も人が飼い慣らしたんだから、彼らは、もはや人間の保護の下でないと地球上で生きていけない、という認識をしっかり持ったほうがいい。
 野良猫でも、捨て猫でも、その子はそのまま放っておかれると食べていけない。それを、「ゴミを荒らす」とか言われる。でも、生きてるから、おなかがすくのは当然。「エサをやらないでください」と言うのなら、じゃあ、どうしたらいいの、その猫は。命の重さって、人でも猫でもまったく変わらない。
 実はわたし、子育ての時、決心したことがあるんです。それは、子供たちが拾ってくる生き物は、すべて受け入れるということ。実際、子供たちが次から次と猫を拾ってきて、この前数えたら、名前が思い浮かぶ猫だけで六十匹。とにかく、へその緒がついたままの子、目が開かない子、五匹一緒に捨てられていた子たちや、ペットショップでかわいそうな飼い方をされていた子…。虐待されていたり、弱っていてすぐに死んだり、つらい思いもいっぱいしましたけど、一生忘れられないすてきな思い出もたくさんあります。
 ある時、具合の悪い犬を引き取ってきて、わたしはどうしても手を放せない仕事があったから、当時、中学生だった子供たちとうちのスタッフでお医者さんに連れて行ったんです。その途中、車の中で、その犬が吐きそうになった。そうしたら、スタッフの車だから汚しちゃ大変と、息子が両手で受けて、娘がその始末をして。二人が帰ってきて言うには、「僕ら、子育てしても、赤ちゃんのうんちなんかへっちゃらだよ。だって、両手でゲロ受けたんだもの、な」って。そこで、わたしが「じゃ、ママが寝たきりになっても大丈夫ね」と言うと、「おしめは替えてあげるけど、その前にやせてね」って(笑)。


青虫は、わたしが指で
タッチするのを待つように、
なでると体を伸ばす…


わたしの母親は、クモの巣を見て喜ぶような人だったんです。「カツ代ちゃん、見て。きれいやね。なんで、こんなきれいなおうち、作れるのかな」といつまでも見てる。だから、わたしも、クモが嫌いとか、気持ち悪いだなんてまったく思わずに育ちました。
 ある時、シソを育てていたら、小さな青虫が一匹ついたんです。この時殺せば、シソは無事。でも、「わたしなら、シソは百円で毎日でも買える。だから、これは、この子にあげる」と。青虫はシソの葉を食べてどんどん大きくなっていきました。わたし、仕事の行き帰りに、そっと指でなでていました。最初は丸まったりしていたのですが、不思議ですね、だんだん、わたしが指でタッチするのを待つように、なでると体を伸ばす…。そしてある日、サナギになって植木鉢にくっついた。それから、ある晴れた休みの日に、なんと、サナギから真っ黄色のきれいなチョウがそーっと出てきて、ふわっと飛んでいく姿を見ることができました。
 「カツ代さん、いつも楽しそうですね」と言われることがよくありますが、わたしだって、嫌なこと、つらいことはいっぱいあります。でも、生き物が好きだから、そして、クモだって、雑草だって、「あ、きれいね」って大事にする母親の姿を見ながら育ったから、どんな時でも、幸福感を感じながら生きていくことができるのです。
 それに、わたし、食べ物の仕事をして、おいしい食材をいただいていて、どこかで生き物への恩返しをしていこうと思っています。動物の力って、すごいですね。生きることの喜びも悲しみも、味わわせてくれる。だから、わたし、一生、動物のために、人間として恩返しを続けていきたい、と。

*この記事は、2003年7月20日発行のものです。



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