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動物をめぐる人びと
 
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石に猫を描くというより、石が人に猫を描かせる。
「石」の中に「猫の姿」を発見することが楽しみです。

阿曽沼 一司さん (イラストレーター)
1951年、広島県生まれ。
桑沢デザイン研究所グラフィックデザイン科卒業。デザイン事務所勤務を経て、フリーのイラストレーターとなる。17年前、公園で出会った小石に惹かれて「石猫」を描きはじめ、猫好きの間で評判を呼ぶ。産経学園のカルチャースクールで「石猫づくり」教室を担当。
http://ishineko.com/

お気に入りの大きな「石猫」と。デスクに鎮座する姿は、まさに“本物”の猫。

座布団で丸くなって居眠り中。

似せ猫モデル:ゆみおちゃん


似せ犬モデル:さきちゃん
※「似せ犬」も制作できます。

 わたしは広島県安芸郡府中町の生まれで、山すその自然に囲まれて育ちました。家では犬を飼ってたんですが、当時は「ペット」という存在がなくて番犬。庭の柿の木につながれてね。猫もいたけど、野良猫だけ。上京してデザイン学校の学生だったころ、住んでいたアパートの部屋に野良猫が来るのでごはんをあげていたら、自由に出入りするようになりました。その猫が押入れで出産して、親子で七匹ぐらいになったことがあります。

 「石猫」を作り始めたのは、十七年ほど前からです。当時四歳だった娘と近くの公園を散歩していたら、娘がつめの先ぐらいの小石を拾って「この石、猫ちゃんみたい!」。あ、こんな世界があるのか、と。それから、出会う人ごとに「石猫」をプレゼントすると、みんな喜んでくれるので、もっとたくさんの人に見てもらえたらうれしいなと思って、個展を始めました。ざっと計算すると、これまで五千匹ぐらいの「石猫」を作ったでしょうか。

 今、カルチャースクールでも教えているのですが、最初、生徒さんとお弁当を持って多摩川の河原に行くんです。そこで自分がどんな石に出会うかが、とても大事ですね。物理的には人がその「石」に「猫」を描くのですが、本当は、「石」が人に「猫」を描かせる。石にどんなふうに描いてもいいようですが、石が求めている場所に、猫の顔、体、しっぽを描いていくんです。例えば、この石、ここを顔とすると、石に背骨があるわけじゃないけど、猫の体がこんな流れになって、ここにしっぽが来る。それが、こっちの自由にならないんです。ついでに言うと、猫が起きているか寝ているかもこっちの自由にならない。つまり、石の中に猫の姿を発見することが楽しみなんです。

 この石は、少しおおげさに言うと、地球の一部だったのが、何千年か何万年かを経て岩から石になり、角がとれて丸くなって、そこでわたしを待っていてくれた。そう思うと、ちょっとたまらない。だから、これは猫を描いているんじゃない。石の存在感というか、「時」が凝縮されたものを猫の形を借りて表現したい、というのがわたしの思いです。

 ところで、今、わたしは「似せ猫」と呼んでいる、猫の肖像画に力を入れています。実は個展会場で「うちの○○ちゃんが死んで…」という話を聞くともなく聞くわけです。そこで、亡くなった子に似せた「石猫」を作らせてください、と始めたのがきっかけです。普通の「石猫」と「似せ猫」では、描くエネルギーが三倍も四倍も違いますね。わたしがその猫を知らない、ということもありますが、それ以上に、その方の悲しみを癒やすことができるように、という思いがあるからです。そのためには、できる限りその子に似せたいと、たくさん写真を預かり、共通するところを選び取って描いていく。責任感というか、重さがずいぶん違うので、気持ち的には、「似せ猫」を一つ描くと、三キロぐらいやせますね(笑)。

*この記事は、2004年8月20日発行のものです。



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