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動物をめぐる人びと
 
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写真はやっぱり、被写体ね。猫だったら、
すばらしい猫だから、当然、よかったんです、と言いたくなる。

武田 花さん (写真家)
1951年、東京都生まれ。
大学卒業後、アルバイトをしながら野良猫の写真を撮り続ける。35歳の時、写真展を開き、以後、プロの写真家として路地や空き地に暮らす野良猫や世の動きから取り残されたような風景を訪ねて撮影。90年、写真展「眠そうな町」で第15回木村伊兵衛賞受賞。主な写真集に『猫・陽のあたる場所』(現代書館)『猫 TOKYO WILD CATS』『シーサイド・バウンド』(中央公論新社)など。フォトエッセイに『煙突やニワトリ』『カラスも猫も』(筑摩書房)『季節のしっぽ』『仏壇におはぎ』(角川春樹事務所)など。

殿様「くも」と

最新刊のフォトエッセイ「仏壇におはぎ」。懐かしい日本の原風景がここにある。

 「くも」はわがままで、過保護に育てるものだからよけい勝手者になって、猫が殿様でわたしが腰元みたいなのがいい気分なんです。猫には腰元になれる、人間にはなりたくないけどね(笑)。それから、前はよく朝までお酒を飲んだりしていたんですが、「くも」に留守番させてると気になるでしょ。それに酔っぱらって帰ってくると、すごく怒る。だから、お酒飲んでもぱっと切りあげて帰ることになっちゃったの。そうしたら、妙に健康になって、肝臓もよくなったりしてね(笑)。

 「くも」との出会いは十二年前。「玉」が死んでから猫は飼ってなかったんですが、母が亡くなったあと、ほんとに落ち込んじゃって。そんな時、ペット雑誌で見かけたラグドールっていう猫を見に行ったら、子猫の一匹がわたしにしがみついて、「お願いだから、飼ってください!」みたいな感じなんです(笑)。その時、母が亡くなったばかりでハンドバッグにお香典があった。これも何かの縁。お香典を遣うのにちょうどいい気がしたの。

 写真を始めたのは十八、九のころ。とにかくわたし、勉強はできなかったし、趣味もないし、うちの親が、「どうなるんだろう、この娘は」って思ったらしいのね。父が友だちに相談すると、「カメラでも持たせれば撮るんじゃないの」と。でも、わたし、写真に全然興味ないから撮らなかったの。そのころ、有楽町のガード下で子猫を拾ってきて、それが「玉」。あまりにかわいいんで写真を撮りだして、そのあと近所の野良猫を撮ると面白くなったんです。アルバイト生活が長かったんだけど、今度は浅草で、とか、野良猫の写真を撮りに行くのにちょうどいいアルバイト先を探して、ずっと撮ってました。でも趣味だから、撮った写真を親に見せて、「変わった猫だね」なんて話するだけ。それが三十五歳ぐらいの時、母の知り合いに勧められて写真展を開き、写真集を出してくれる人もいて、そのうち仕事が来始めて、気がついたら、こうなってたんです。

 もちろん、猫が好きというのもあるんですが、猫って、気持ちのいい場所をちゃんと見つけてる。わたしが一緒にいても気持ちのよさそうな空き地とか。それが楽しかった。猫や他の動物は撮るけど、人は撮らないんです、昔から。外歩いていて、知らない人にカメラ向けるなんて、恐ろしいことはできないんですよ。興味をひかれるのは、その「場所」と「猫」。猫がいても、景色が面白くない時は撮らない。いつも、なんか変な、面白いところないかな、と探して、「あった!」と思ったら大喜びで撮る。その景色を見ていて、妄想がわくようなところが好きなの。写真はやっぱり、被写体ね。もし、わたしの写真をいいと言ってくださるとしたら、わたしじゃなくて、被写体がいい。あそこはほんとによかったんですから、と言いたくなる。猫だったら、すばらしい猫だから当然よかったんです、と。

*この記事は、2004年11月20日発行のものです。



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