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わたし、この世を真面目に、不器用に生きている人たちの
“一滴の元気”になりたい。

猫十字社さん(漫画家)
1956年、長野県生まれ。
子どもの時からの猫好き、漫画好きで、独学で描き出す。京都精華大学中退後、プロデビューして、猫のカップルを主人公に人生の機微を描く「小さなお茶会」を9年間連載。そのほか、主な作品に愉快な「黒のもんもん組」、「県立御陀仏高校」、長編大作「幻獣の國物語」、週刊『SPA!』の連載をまとめた「猫つぐら島―猫は悪友 犬は盟友篇」など。現在、飯田市で愛猫「和音丸社長」と愛犬「りるみん専務」と暮らす。

愛犬「りるみん専務」と愛猫「和音丸社長」と一緒に。


『猫つぐら島―猫は悪友 犬は盟友篇』(全2巻・扶桑社)。根っからの猫好き・猫十字社さんが初めての「犬育て」体験を綴ったエッセイ漫画。親友・タカちゃ先生の教えのもとに、失敗を繰り返しながらも次第に愛犬と心を通わせていく、人と犬の成長の記録。

 学校を出てプロの漫画家になり、三年たって婚約して飯田市から松本市へ出て結婚。そこで飼ったのがチンチラ・ゴールデンの「ジライヤ」です。でも手入れが大変で、すぐに被毛がフェルト状になり、顔だけ残して全身を刈ってしまったり…。不精者にはチンチラを飼う権利はない、と(笑)。うちの“社長”(ラグドールの愛猫「和音丸(なごねまる)」)は長毛種の手触りで、メンテナンスがいらないので、わたしにはぴったり。とにかく、猫は気ままな“悪友”で、人生の味わいがある。こっちが漫画を描くのに忙しくてカッとなってると、かまってくれ、とジャマばかりするけど、こっちがかまいたい時には来ない。犬は、寂しい時、よし、よしって付き合ってくれ、話を聞いてくれる“盟友”。両方いないと、もう生きていけないですね(笑)。

 猫派のわたしが“専務”(コーギーの愛犬「りる」)と暮らし始めたのは四、五年前。そのころ、漫画家人生に疲れ果てて心が“壊れちゃった”んです。デビュー以来二十数年、ずっと座って、考えて、描くということばかりやってきたから心身のバランスがとても悪かった。それに漫画の世界って、今日来て、明日は結果を出せ、できなかったら、代わりはいくらでもいる、というところなんです。そこで最後の最後まで頑張ってきて、これ以上どうしろっていうの、と。そんな時、「タカちゃ」(中高校時代の同窓生・大原貴子さん)と再会して、いろいろ話をしたんです。タカちゃもすごく落ち込んでいた時期があって、ご主人が連れてきた愛犬「ジョイ」を独学で一生懸命育てる中で、大らかで生き生きした人生を取り戻してきた。わたし、その後、いろんな女性と知り合いましたが、みんな、すごく真剣に、真面目に、不器用に生きている。女って、素敵だな、かっこいいな、と思ったきっかけがタカちゃだったと思うんです。

 タカちゃに励まされ、アドバイスされて「りるみん専務」と暮らしだしたけど、最初は泣きました(笑)。誰でも、「うちの子、こんなにかっこいい」「ここまでできるようになった」とか、結果が欲しいじゃないですか。でも、やはりわたしの犬なので、警察犬みたいにはできない。その時、タカちゃが、「来い、待て、とアイコンタクトができれば十分」と。大切なのは目と目を合わせ、お互いの心を通じ合えること。あとは最低限困らないしつけさえできればいいんですね。だから、今は全然困らない。どこへ行っても、「いい子ね、優しいね」と言われて、大得意(笑)。

 そのころ、“壊れてた”から、わたし、物語を考えて創作するという状況じゃなかった。でも、犬との出会いと暮らしについてなら描ける、と週刊誌の編集部に企画を持ち込んで連載を始めたのが「猫つぐら島―猫は悪友 犬は盟友篇」です。とにかくわたしは、この世を真面目に、不器用に生きる人たちが、ちょっとでも元気になる仕事がしたい。“一滴の元気”になりたいんです。

*この記事は、2005年1月20日発行のものです。



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