東京の下町・江ノ島・海外の猫や、猫の置物がある風景を収めた写真集『猫の宇宙−向島からブータンまで』。
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子どものころ、家に猫や犬がいれば自然に慣れるんでしょうが、うちには何もいなくてね。それに僕は臆病で、遠くから見て「かわいいな」と思うんだけど、近づくと、かみつかれたり、引っかかれたりしそうで怖かったんです。
最初に飼ったのは「クリ」という名の猫。もう二十年ほど前ですが、南伸坊さんから、引っ越し先に前から住んでいた猫に黒い子猫が四匹生まれたから、一匹どうだ、と。うちの女房と娘が欲しいというので見に行くと、女房の膝の上にぴょんと乗ってきたのがいて、その子をもらった。
でも僕は、見てるのはいいんですが、なかなか抱くことができない。せめて“物”から近づこうと、猫の置物を集めだし、それで“慣れる”というわけじゃないんだけど(笑)、猫のかわいさにだんだん近づいていきました。その後、捨て猫の「ミヨ」を、さらには捨て犬の「ニナ」を飼うことになりました。
やはり、一緒に暮らすと、猫の習性が分かってきて、楽しいですね。ミヨはずっと家の中に入れていたんですが、初めてスズメを見た時、ガラス戸に寄っていって、歯をガクガクさせてる。「もうかわいくて遊びたい」と。出せば結局、捕まえちゃうんだろうけど、遊んでいるうちに度が過ぎて殺しちゃう…僕は、見てて多分そうだろうと思いました。
あちこち“路上観察”に出かけても、猫を見るの、面白いから結構撮りました。ある時、本格的に猫の写真集をつくるために歩いたんだけど、猫の面白い写真って、簡単には撮れない。それで、いっぱい集めた猫の置物を持っていき、路上に置いて撮ったら面白いんです。猫の置物にはいろんなポーズがあって、生け花感覚で、ここにはこれが、と、当てはまる風景がある。
途中、ブータンに行くことがあって、小さいのをポケットに入れて、あちこち置いて撮りました。ブータンでは本物の猫があまりいなくて、僕は二匹しか見なかったですね。一匹は花壇、もう一匹は洗濯場にいるのを見つけて、うれしかった。猫がいると、まず空の方を見て、「いい天気だな」なんて言いながら、だんだん近づいていって、パッと撮る(笑)。
ベトナムでもブータンでも犬はいたけど、いつも寝てたりして、どこか疲れてますね。暑いのもあるんでしょうが、アジアの犬って、ほったらかしで、勝手にやってる感じで、ダラーンとしてる。どうも、犬は北方のヨーロッパだな、と、つくづく思いました。
ところで、僕、ベトナムで軽い高山病になったんです。バスに延々と乗っていたんですが、途中、おなかが張ってきて、トイレがないので、道端の茂みに入ってしゃがんだら、犬が来て、お尻のところに寄ってくる(笑)。犬は便を食べるんですね。僕、下痢かと思ってたら、たまってたガスだけがぶわっと出て、犬はがっかりしてました(笑)。
いいですね。そんな時、人間も、こんなものだ、というのが分かってくる。ものは違うけど、食べたり、出したり、楽しいことがあったら寄ってきて、みたいなところは同じで、ね。
*この記事は、2005年5月20日発行のものです。
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