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動物をめぐる人びと
 
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猫がいると、まず空の方を見て、「いい天気だな」なんて言いながら、
だんだん近づいていって、パッと撮る(笑)。

赤瀬川 原平さん (画家/作家)
1937年、横浜市生まれ。
少年期を大分県で過ごす。武蔵野美術学校中退。前衛芸術家やイラストレーターとして活躍。のち、尾辻克彦として作家活動を開始。81年、『父が消えた』で芥川賞を受賞。気の合った仲間と「路上観察学会」を設立。内外の街角、路地を探索して、哲学的考察を重ねる。主な著書に『超芸術トマソン』『外骨という人がいた!』『東京路上探検記』『正体不明』『猫の宇宙』『猫の文明』『新解さんの謎』『老人力』など多数。



東京の下町・江ノ島・海外の猫や、猫の置物がある風景を収めた写真集『猫の宇宙−向島からブータンまで』。

 子どものころ、家に猫や犬がいれば自然に慣れるんでしょうが、うちには何もいなくてね。それに僕は臆病で、遠くから見て「かわいいな」と思うんだけど、近づくと、かみつかれたり、引っかかれたりしそうで怖かったんです。

 最初に飼ったのは「クリ」という名の猫。もう二十年ほど前ですが、南伸坊さんから、引っ越し先に前から住んでいた猫に黒い子猫が四匹生まれたから、一匹どうだ、と。うちの女房と娘が欲しいというので見に行くと、女房の膝の上にぴょんと乗ってきたのがいて、その子をもらった。

 でも僕は、見てるのはいいんですが、なかなか抱くことができない。せめて“物”から近づこうと、猫の置物を集めだし、それで“慣れる”というわけじゃないんだけど(笑)、猫のかわいさにだんだん近づいていきました。その後、捨て猫の「ミヨ」を、さらには捨て犬の「ニナ」を飼うことになりました。

 やはり、一緒に暮らすと、猫の習性が分かってきて、楽しいですね。ミヨはずっと家の中に入れていたんですが、初めてスズメを見た時、ガラス戸に寄っていって、歯をガクガクさせてる。「もうかわいくて遊びたい」と。出せば結局、捕まえちゃうんだろうけど、遊んでいるうちに度が過ぎて殺しちゃう…僕は、見てて多分そうだろうと思いました。

 あちこち“路上観察”に出かけても、猫を見るの、面白いから結構撮りました。ある時、本格的に猫の写真集をつくるために歩いたんだけど、猫の面白い写真って、簡単には撮れない。それで、いっぱい集めた猫の置物を持っていき、路上に置いて撮ったら面白いんです。猫の置物にはいろんなポーズがあって、生け花感覚で、ここにはこれが、と、当てはまる風景がある。

 途中、ブータンに行くことがあって、小さいのをポケットに入れて、あちこち置いて撮りました。ブータンでは本物の猫があまりいなくて、僕は二匹しか見なかったですね。一匹は花壇、もう一匹は洗濯場にいるのを見つけて、うれしかった。猫がいると、まず空の方を見て、「いい天気だな」なんて言いながら、だんだん近づいていって、パッと撮る(笑)。

 ベトナムでもブータンでも犬はいたけど、いつも寝てたりして、どこか疲れてますね。暑いのもあるんでしょうが、アジアの犬って、ほったらかしで、勝手にやってる感じで、ダラーンとしてる。どうも、犬は北方のヨーロッパだな、と、つくづく思いました。

 ところで、僕、ベトナムで軽い高山病になったんです。バスに延々と乗っていたんですが、途中、おなかが張ってきて、トイレがないので、道端の茂みに入ってしゃがんだら、犬が来て、お尻のところに寄ってくる(笑)。犬は便を食べるんですね。僕、下痢かと思ってたら、たまってたガスだけがぶわっと出て、犬はがっかりしてました(笑)。

 いいですね。そんな時、人間も、こんなものだ、というのが分かってくる。ものは違うけど、食べたり、出したり、楽しいことがあったら寄ってきて、みたいなところは同じで、ね。

*この記事は、2005年5月20日発行のものです。



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