写真は子どものころから好きで、親に買ってもらったおもちゃのカメラで撮ってました。でも、僕の実家は東京の青梅で写真屋さんしかなく、カメラマンなんて知りませんでした。
僕はいい加減で、高校を出る時、行きたい大学もないし、就職する気もなく、たまたま写真の専門学校があったので入りました。卒業前、ゼミの先生に「これからどうするんだ」と聞かれ、「卒業してから考えます」。「それじゃ遅い」と言われて紹介されたカメラマンの助手になりました。
その後、助手生活二年でフリーに。でも、たまに来る仕事をやるだけで、暮らしていけるだけの金は稼げない。すると、見るに見かねた人がいて、「ある出版社で猫の本を作る企画があるんだけど」と。それで、猫を飼っている友だちから猫を借り出して写真を撮り、「猫も少しは撮ってます」(笑)。
結局、一年ぐらいかけ、赤字でしたけど、一冊本を作りました。でも、この先、食べていく自信がない。写真をやめてどこか就職口を探そうかと思っていたら、“猫”の仕事がポツポツと入ってきて、いつの間にか「山崎さんは“猫”だから」と、それまであった仕事がなくなりました(笑)。
今から二十年ほど前は、猫の写真といえば“かわいい子猫”ばかり。でも猫はすぐに大きくなり、大人のほうが個性も出る。「大人の猫に出番のある本を」という思いが強くなりました。それに当時、まだ猫の飼い方もいい加減。だから、きちんとした猫の飼い方の見本を紹介したいという思いもありました。ちょうどそのころ、アメリカに行き、キャットショーで出会った人たちやブリーダーの人たちにお願いして、いろんな品種の猫を撮っていました。その撮影を三年ほど続け、お金がなくなったので、撮りためた写真をまとめて作ったのが『世界の猫図鑑』です。
猫の写真は、犬のように決まった撮り方がないから撮りやすいですね。猫はものにじゃれる習性があるでしょ。だから、じゃらして遊んであげながら、その猫の個性がよく表れた“一瞬”を撮る。早いと、二、三分。でも、人見知りしてじっと動かないとだめ。最長で六時間かかったペルシャ猫もいます。
ところで、今、わが家には猫が四匹います。初めて飼ったのは二十五年ほど前で、結婚後すぐ。アパートの近くでメス猫を拾い、最初、猫嫌いだった妻に「一泊だけ」と頼んで飼いました。その子がすぐに子猫を産んだので、アパートをスタジオみたいに改装してね(笑)。すると、猫がどんどん増え、一番多い時は十五匹。猫のために引越しをして、結局、千葉県の田舎に住むようになったんです。
この前、うちの猫を三か月ほど毎朝撮り続けたことがありました。その子は朝食の時、いつも同じ格好で僕のそばに座るんです。それが、毎朝作る目玉焼きでも形が違うように、座り方が少しずつ違う。毎日、変わらないと思っているものって“日常”じゃないですか。でも、実は変わっている。あ、この繰り返しが“人生”なんだな、と気づきました。
*この記事は、2005年7月20日発行のものです。
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