目の見えない黒猫との不思議な別れと出会いの物語/講談社
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この子は「ラビツ」。推定8歳で、7年前、家の近くで拾いました。わたしにとっては2度目の猫で、実はその前、学生時代から一緒に暮らしていた「ラビ」という黒猫がいました。ある日、友だちが「拾ったけど飼えないので」とかばんに入れて連れて来たんです。わたしはデザイン学科の学生で、下宿で課題を描いていると足跡をつけに来る。そこで、紙を踏まないように、また、壁でつめをとがないようにしつけたりして飼い始めました。ラビは16年半生きて、最後は目が見えなくなっていて、腎不全になり、動物病院でネコカゼをうつされ、てんかん発作を起こして死んでしまいました。
同じ黒猫のラビツに出会ったのはその1年半後。拾った時、ラビと同じように目が見えず、てんかん発作を持っていて、体重が死ぬ直前のラビと同じ2.5kgと、不思議なことが重なりました。それに目が見えないはずなのに、上を向いて、飾ってあるラビの写真の辺りをじっと見ていたり。その他、ラビに仕込んだ、紙を踏まない、壁でつめをとがないといったことを引き継いでいるというか、寝ている間に教わっているんじゃないかと思えることがありました。
それに、夫のほうも、仕事で海外に行った時、うちにいる猫とよく似た黒猫がスーと足元にすり寄ってきたりするらしく、猫っていつも寝てますが、寝てる間に別のところへ行って、別の猫になっているかもしれない、なんて思ったりします(笑)。
とにかく、この猫は前の猫の、その跡を継いだ“つづきのねこ”だと思い、このことを書いた手紙のような私家版『つづきのねこ』を作り、1冊ずつ小さな鈴を付けて友だちや知り合いに送っていました。すると、これを見せたい人がいる、と編集者を紹介してくださる方がいて、絵本のような本となって出版されました。
それまでわたしは、猫や犬の絵を描くことに違和感がありました。生きている本当の猫にはかなわない、自分には描けない、と。
けれど、「一般書籍として本にするには絵が必要」と編集者に言われ、いろいろ悩んだ末、シルエットの猫を描くことにしました。それはこの物語を、いろんな人に一緒に暮らした自分の猫や犬の思い出をそのまま投影してもらえる、普遍的なものにしたかったからです。
作品って、みんな自分のことを描いているのかもしれないけど、わたしには、ある人への手紙のような、“思い”が見る人に届くものにしたいという願いがありました。もっとも小さいころは、マンガや、空間を埋めつくすような細かい絵が好きで、友だちを描こうと言われると、みんなはドンとひとりだけ描くのに、わたしは40人ぐらい描いてしまったりしてました。
それが段々“絵を減らす”ような版画に目覚めてシルクスクリーンを始め、グラフィックデザインの世界に入りました。でもデザイナーは忙しくて自分で描くことができない。それで15年ほど前にフリーとなって絵の修行をやり直し、また、好きな絵を描き始めたんです。
*この記事は、2006年6月20日発行のものです。
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