ペットのための快適生活情報P-WELL
HOMEへもどる
 
動物をめぐる人びと
 
バックナンバー

生きて、死んでいくまでの間に、外の猫にも1回ぐらい
“幸せ”を感じてほしいな、と。

高原 鉄男さん
(グラフィックデザイナー・アーティスト)
1958年、長崎県生まれ。高校1年から東京で暮らし、大学中退後、グラフィックデザイナーに。90年、サンフランシスコでアウトサイダーアートに出合い、野良猫をテーマに絵を描き始める。97年、かつての飼い猫の名「鉄男」ブランドで、洋服や雑貨の制作を開始。著書に『猫がいてよかった。』(友人社)。
オフィシャルサイト「鉄男大全」http://www.tetsuox.net/

高原さんと愛猫の「ソックス」


猫と人間が織り成す20のストーリーと25の書き下ろしの絵が感動を呼ぶ、珠玉の1冊/友人社


アウトサイダーアートに出合ってから最初に描いた作品

 僕は小さいころ両親が働いていて、家には犬や猫がいました。高校1年の時から東京でひとり暮らしをし、しばらく猫とは無縁の生活でした。それが23歳の時、最初の結婚をして、迷い込んできた1匹の猫を飼うところからかかわりが始まったんです。その猫はすぐに出て行ったけれど、かわいいからまた飼いたくなる。当時は、避妊の知識とかがなくて、わーっと増え、たくさんの猫と暮らすのが当たり前の感覚になっていました。

 猫を飼いだすと、外の猫にも目が行くようになります。特に都会に住んでいると、すごく過酷な状況で暮らしている猫が多いことを肌で感じますね。自分が飼っている猫は、目一杯尽くしますから、本当のところはどうか分からないけれど、幸せだろうと思います。そういう“幸せ”を、生きて、死んでいくまでの間に、外の猫にも1回ぐらい感じてほしいな、と。そんな心に引っかかることが、結局、僕の絵を描く行為になっているような気がします。

 僕は元々グラフィックデザイナーで絵の教育は受けたことがなく、いまだに絵に自信がない。でも、猫のことを思うと描かずにいられない。せめて、野良猫には、見て見ぬふりをするぐらいの気持ちで接する環境であってほしいですね。

 僕が猫の絵を描き始めたのは“バブル”のころ。デザインの世界もデジタル化し始めて、「おれは無理だな、この先」と思っていた時、たまたまサンフランシスコへ行きました。そこの、表にTシャツなんかをつるしているギャラリーで出合ったのが、アウトサイダーアートという、美術教育を受けていない人たちの絵です。それまで僕は、色校正を見るためにルーペを持ち出すような世界で生きていたので、木片やトタンに描いているラフな絵がすごく良くて、衝動的に大きい絵を1枚買って帰ってきました。その立派な絵が80ドル、当時1万円もしなくて、すごい衝撃でした。

 その時、僕も買い物かごを提げたおばちゃんが気軽に買えたり、遠慮なく眺めたりできる、1枚5千円ぐらいの絵を描きたいなと思いました。もちろん、テーマは野良猫。それならべニヤ板に描けばいい。額代が出ないから障子の桟木を切ってつければいいや、と。知り合いの看板屋さんに聞くと「安いべニヤなら1枚380円だよ」。それなら8枚取れる。これで行こうと、最初に描いたのがこの作品です(左写真)。

 そんなことを長いことやっていると、人と猫との心温まる関係が色々見えてきますね。特に都会では核家族とか、孤独とかの社会背景がある中で、猫の存在が“重い”。ペットと飼い主という枠を完全に超えていて、子どもの代わりという人もいれば、友人、恋人という感じの人もいて、胸を打たれる話が多かったんです。その、人と猫とのかかわりを1冊の本にまとめたのが『猫がいてよかった。』です。

*この記事は、2007年7月20日発行のものです。



  Top of page ▲
<< [前の記事] [HOMEへもどる] [次の記事] >>