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「イグ」と暮らして一番思ったのは、
人間も、生きているだけでいいんだな、ということ。

細川 貂々さん(漫画家・イラストレーター)
1969年、埼玉県生まれ。セツ・モードセミナー在学中に知り合ったツレさんに勧められ、漫画家デビュー。06年発行の『ツレがうつになりまして。』、『イグアナの嫁』(幻冬舎)で大ブレーク。07年11月、『ツレがうつになりまして。』続編(幻冬舎)刊行。他の著書に『いろはにいぐあな』(集英社)、共著『専業主夫ツレのプチベジ・クッキング』(角川SSコミュニケーションズ)など。

細川さんと夫のツレさん


細川さんとイグの仲良しツーショット


細川さん夫婦とイグアナの「イグ」。家族の成長と喜怒哀楽に満ちた毎日が詰まったコミックエッセイ。/幻冬舎

 わたし、恐竜は好きでしたが、実際にはハ虫類を触ることなんて絶対できなかったんです。それが、ある日、たまたま夫のツレとペットショップへ行ったら小さなグリーンイグアナがいて、お店の人に「間違って仕入れたから千円でいいです」と言われ、財布を見たら1日分の食事代の千円札が1枚だけ入っていて、飼うことにしました。

 最初はオスかメスか分からなかったのですが、3歳の時、自分でオチンチンを出していてショックを受けました(笑)。その後、発情期が来て攻撃的になり、かみつかれて大変でした。でも、イグアナは情があるので、かまれた跡を見せて「あんたがかんだんだよ」と言うと、目をそらす。ある時、スイッチが入って攻撃的になるけれど、それが収まると「あ、なんてことを…」みたいになるんです。

 「イグ」は日の出とともに起きます。わたしが早く起きた時、どんなタイミングでイグが目を覚ますか観察したことがあります。すると、外から鳥の声が聞こえるとパチッと目が覚め、わたしと目が合うと、「起きたぞ。お前も起きてるか」みたいに首を縦に振る。

 イグアナは愛情を注いで育てると、ちゃんと言うことを聞き、愛情を返してくれます。でもそれはハ虫類の愛情で、「好きだから、かませろ」というところがありますけれど(笑)。

 犬は感情豊かでこちらが何も言わなくても察してくれますが、イグは、わたしが察して何かをしてあげないと生きていけない。自分が必要とされるのって、いいですね。いつからか、イグがわたしの息子と思うようになりました。でも、イグのお嫁さん「まぐ」はわたしが育てたんじゃないから懐かないし、気が強い。うちの大事な、手塩にかけて育てたイグをかむんです。それが許せなくて、この悪嫁が!と(笑)。そんなふうに、まぐがイグを血が出るくらいかむので、今は家庭内別居みたいに、イグはわたしの部屋に入れています。ほんと、マザコンの息子みたいですが、特にまぐは夕方気が立って、縄張りを主張し始めると大事になりますので。

 イグアナは皆メスが強くて、好きなカボチャをあげると、まぐはイグの分まで食べる。そんなのを見ると、わたし、キィーとなって、「イグ頑張れ、そんな子に負けないで」と。それでも時々、嫁とも仲良くしなくちゃ、と思って食べ物をあげると、首を縦に振って、「あっちへ行け」と言う。うちは嫁の天下ですね。

 とにかく、人生の大切なことは、すべてイグが教えてくれました。イグが活動しているのは午前中だけで、日光浴をしたり、ごはんを食べたり、ウンチをしたりするのも午前中。午後は、目は開いているけれどボーっとしていて日が暮れると眠る。その寝姿がかわいいんです。口が開いて舌がチョロっと出ている。いびきをかいていることもあります。そんなイグと暮らして一番思ったのは、人間も、生きているだけでいいんだな、ということです。

*この記事は、2007年12月20日発行のものです。



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