三沢さんの新作作品集。愛きょうのある動物の彫刻やドローイングなどの作品が多数収録されている。/求龍堂 |
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ずっと以前、映画「パットン大戦車軍団」に出てくるブル・テリアを見て、他の犬とは全然違う体つきや顔つきをしているので印象に残ったんでしょうね。その後、大学の彫刻科にいる時に本物を見て、「あ、これはもうつくらなければ」と思いました。それまで課題で彫刻をやる範囲だったんですが、自分から初めて「これをつくりたい」と思って彫ったのがブル・テリアでした。
その後大学を出て10年ほど「木」を離れていて、98年ぐらいに「木」を彫りたいと思いました。まず何を彫るかを考えたけれど、動物の頭の形って四角い木の立方体に合う。そこで動物のヘッド(頭部)をいくつか彫ったんですが、久しぶりに「木」を彫る感触が楽しかったですね。それで割と自然に「犬を彫ろうか、猫を彫ろうか」という感じに原寸大でいろんな動物を彫り始めました。
とにかく動物は人間より個性の立ち方が強い。そんな個性がダイレクトに“かたち”に表れている。でも僕は動物に対して、好きなんですけれどあまり強い思い入れがあるわけじゃない。あくまで彫刻のモチーフとして選んでいるんです。例えば個展会場にすごく天井の高い空間があって、その“高さ”を使いたいと思った時にキリンがいる。あるいはエレベーターで降りる地下の部屋だと、エレベーターを降りてトラがいたら面白いんじゃないか、と思いました。ゾウの場合は、正月にゾウを彫る夢を見たんです。それがすごくいい感じにできたので、これを“正夢”にしようと思ってつくりだした(笑)。
動物は品種の多さとかそれぞれの個性の強さとかがひとつの彫刻の単位としてあると思います。それが展示空間に複数集まることによって新たな関係性ができる。それから、ここ(伊丹市立美術館)だと酒蔵や日本家屋にユニコーンやトラを展示することで“環境”とのかかわりが生まれてくる。例えば鳥を上に展示することで、酒蔵の天井や構造が見えますよね。もし人間が飛んでいたらエキセントリックな部分に目が行きますが、鳥だと「あ、鳥がいる」と自然に目に入ってきます。それによって空間を意識する。
僕は、観る人それぞれの持っている動物観みたいなものが、彫刻を観る時のフィルターになって、「彫刻」や「展示空間」から“何か”を感じとってもらえればうれしいです。皆、それぞれの動物観ってありますよね。確かに猫や犬は近しいけれど、トラやチーターにしても皆知っている。ラクダもキリンも知らない人がいないくらいに知っているってすごいことですよね。
それに展覧会は展示して終わりじゃない。人に観てもらい、展示空間に入ってもらって、彫刻と人と展示空間との関係性を観るのも彫刻の面白さです。そういうことを、動物の形を借用することで自然にできることが、僕が動物を彫っているひとつの理由だと思います。
*この記事は、2008年1月20日発行のものです。
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