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AGBNが国際的な協力体制で活動できたのは、
視覚障害者に優れた盲導犬を届けたい、という強い思いから。

和田 孝文さん
<(財)北海道盲導犬協会所長>
1960年北海道小樽市生まれ。1988年、(財)北海道盲導犬協会に入り、盲導犬事業と視覚障害者の日常生活訓練事業に取り組む。盲導犬施設での繁殖犬不足に対応するため、国内、韓国、台湾の11施設と協力して、02年4月、AGBN(アジア・ガイドドッグス・ブリーディング・ネットワーク)が設立。AGBN運営委員会幹事として繁殖犬事業に携わる。


英国から提供された凍結精液による人工授精で生まれた子犬

 わたしは小樽生まれの札幌育ちで、学生時代も札幌でした。そのころ、ボランティア活動に関係して盲導犬のことも知りました。専攻はコンピュータ関係でしたが、卒業後、北海道盲導犬協会がスタッフを公募しているのを知り、ぜひその事業に携わりたくて入りました。

 当時、協会では盲導犬事業だけでなく、目の不自由な人々への日常生活訓練事業を始めようとしており、わたしは普及し始めたパソコンの活用訓練を担当しました。人間にはいろんな感覚がありますが、目からの情報が全体の8割で、視覚障害は情報障害ともいわれます。そこでパソコンを使ってコミュニケーション能力を高めようというものでした。

 それと同時に協会の事業安定化に取り組んできました。90年代後半に繁殖犬の不足が深刻になり、国内の盲導犬育成施設に協力を依頼したところ、各施設とも「良質の繁殖犬不足」と「血統的な行き詰まり」に悩んでいました。そこで盲導犬事業の基盤となる繁殖犬事業を相互に協力することにしました。

 その時、支援を申し出てくれた「住友生命・アシスタントドッグ育成普及委員会」のバックアップのもとに、東アジアの協会にも呼びかけをして、02年4月、日本8、韓国1、台湾2の11施設が協力して盲導犬の繁殖犬事業を行うAGBN(アジア・ガイドドッグス・ブリーディング・ネットワーク)が設立されました。

 その後、AGBNは、世界的にもリーダー的存在で優れた繁殖事業を行ってきた英国盲導犬協会にアプローチし、相互に行き来して交流を深め、信頼関係を築き、05年に対等の立場で盲導犬の凍結精液を提供し合うことで合意しました。そうして英国盲導犬協会の何百頭かいる繁殖犬の中からアジアの盲導犬事業に合ったオス犬の選定と、凍結精液の作成作業が始まりました。しかし直後に発生した鳥インフルエンザによって、卵黄を希釈液に使う凍結精液の輸出入が困難になりました。

 その後、両国関係者の努力で輸出入許可を得て、昨年5月、最初の凍結精液が英国から日本に到着。1回目の人工授精によって10月7日に最初の子犬4頭が誕生しました。その日、わたしも24時間体制で出産の一報を待ちましたが、これほど多くの人々とその“成果”に対する喜びを分かち合えたのは初めてでした。

 現在、日本国内には約130頭の繁殖犬しかいないので、AGBNの活動は最優先で優れた繁殖犬を確保し、各施設の繁殖犬事業の基盤が強化されることです。今回生まれた子犬は、もう1世代は繁殖犬として育成し、第3世代ぐらいから盲導犬として育て、視覚障害者のパートナーになってほしいと期待しています。

 今回人工授精したのは米国から導入されたメス犬です。そこから生まれた子犬たちが繁殖犬となり、いつの日か日本など東アジアでつくった新たな血統として英国や米国に返していくことができれば、大きな目標をさらにひとつ達成したことになります。とにかく、AGBNが国際的な協力体制で積極的に活動できたのは、視覚障害者に優れた盲導犬を届けたい、という強い思いからです。

*この記事は、2008年2月20日発行のものです。



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