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動物をめぐる人びと
 
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僕が猫を描いてきたのは、自由奔放で誰にも隷従しない、
人生の光も影も分かる友だちがほしかったから。

米田民穂さん(画家)
1962年、青森県生まれ。武蔵野美術大学卒業。88年からバルセロナとパリに暮らし、創作活動に専念。98年に帰国し、各地で個展を開催。昨春から自作猫のぬいぐるみ(内藤デザイン研究所製造・販売)に力を注ぐ。主な絵本に『ウサギの本』(松浦寿輝・文/新書館)、『屋根裏のマコリン』(絵・文とも米田民穂/新書館)、『ノボッチと木』(伊集院静・文/アシェット婦人画報社)など。

葉山の「猫の家(湘南ねこ美術館)」にて、 作品の猫たちとともに


ひとりで暮らす男の元にやってきた子犬「ノボッチ」と1本の木を中心に、命が繰り返していく様子を描いた心温まる物語/アシェット婦人画報社


米田さんの猫作品をモデルに(株)内藤デザイン研究所から製造・販売されるぬいぐるみ「プチ・コパン」

 実家が青森県の里山の中の農家で、犬、猫を始め、いろんな動物に囲まれて生きていました。絵は小さい時から描いていましたが、画家の道を歩むとは全然思っていませんでした。

 大学を出るころ、外国暮らしをしてみたいという気持ちが芽生え、2年間アルバイトして資金をため、スペインのバルセロナへ行きました。当時描いたのはスケッチばかり。でも部屋が寂しかったので、1枚だけ猫の絵を描いて飾りました。2年後、パリに行ってから猫の絵が売れ始め、やがて日本の雑誌などにいろんなイラストを描いて送るようになりました。パリは猫の好きな人が多く、僕、猫を描いてこなかったら、絵描きとして生きてこられなかったです(笑)。

 結局、僕が猫の絵を描いてきたのは、自由奔放で誰にも隷従しない、そして人生の光も影もちゃんと分かっている、そういう友だちがほしかったんじゃないか、と思います。それには猫が、それも野良猫がぴったりくる。だから、野良猫ばかり描いていました。

 パリにいる時、松浦寿輝さんの絵本『ウサギの本』の絵を依頼され、ウサギのことを知るために、小さなフレンチアンゴラの「マコリン」を飼い始めました。ウサギは懐かないものと思っていたんですが、実際に飼えば懐くし、言葉が分かるし、呼べば来るし、後を追いかけてくる。今ではむしろ猫よりウサギのほうが好きなくらいです。もう亡くなりましたが、日本にマコリンと一緒に帰ってきて、彼女の世話があるから、展覧会も地方では開かず、東京周辺でばかりやっていました。

 絵本『ノボッチと木』のお話は、『ウサギの本』を見た伊集院静さんから声をかけていただきました。この物語は、伊集院さんの愛犬をモデルにしているそうですが、実は、僕にも忘れられない犬がいます。そのころ、実家に「ベベ」という老犬がいました。年老いた親があまり散歩に行けないので、僕が引き取って面倒を見ようと思っていたんです。そこで実家に電話すると、ちょっと前に死んだと言う。ベベは白内障で目も見えなかったので、かわいそうで仕方なかったです。

 それでべべの写真を前に置き、この本の中で生き返らせてあげようという思いで絵を描きました。絵本の絵って、自分の中にリアリティがないと描けないんです。この中の風景も、僕がパリに住んでいた時、夏のバカンスでよく行っていたフランスの田舎町のことを思い出して描きました。でも最初の3か月は全然描けなくて、苦しみました。僕、血圧が高くて降圧剤を飲んでいるんですが、描けない間、血圧は上がるし、不整脈は出るし、結構、命がけでしたよ(笑)。

 松浦さんや伊集院さんとの絵本づくりの時もそうでしたが、昨春から始めてやっと完成したぬいぐるみづくりでも、自分以外の人と一緒に物をつくるって、その人たちに、何か自分の別の世界が引き出される感じがあって、すごく好きです。

*この記事は、2008年5月20日発行のものです。



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