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| さわやかな青空の下、人が走り、犬が跳ぶ。 人が愛犬の気持ちを学び、犬が飼い主の思いにこたえて、 さまざまな障害を越えていくアジリティは いま、全国の犬と犬好きたちの心をとらえ、 急速に広まっている。 東西二カ所のアジリティ会場で「草アジ」の魅力、楽しさをさぐってみた。 |
空青く、ヒバリさえずる三月末の日曜日。ここは、関東平野のまっただなか。茨城県南部の藤代町を流れる、利根川支流・小貝川の河川敷公園には、「草アジ」こと、「草アジリティ」の月例競技大会に参加するため、地元茨城はじめ、東京、埼玉、栃木、神奈川、千葉、さらには長野や名古屋などから、犬好き、草アジ好きの人びとが続々と集まってきた。アジリティは、犬と人が一体になって、ハードルやタイヤ、スラロームなどの障害物を越えていく、気分爽快なドッグスポーツだ。 車から飛び出した人たちと愛犬が、木立と芝生の緑地を心地よく散歩する。競技会場のまわりには、いつの間にか簡易テーブルと椅子がいくつも並べられ、朝日をあびて、のどかにコーヒーをすする人がいる。後方にテントやケージを組み立てる人もいる。愛犬とフリスビーを楽しんでいる人もいる。子どもたちは、犬たちと遊んだり、犬顔負けで、タイヤやスラローム、シーソーに挑戦する。犬好きたちの楽園である。 やがて、参加者全員が本部テント前に集合。開会あいさつのあと、まるで学校の運動会みたいに、軽快な「ラジオ体操」の音楽がながれ、準備運動がはじまった。 最初の競技は「ビギナーオープン」、以下、「ジュニアオープン」「スペシャルオープン」、そして国際基準の「アジリティ1」「アジリティ2」、「ジャンピング」と終日かけて進んでいく(どの競技も「スタンダード」と小型犬向けの「ミニ」がある)。 競技前、参加者がテキパキとコースレイアウトにしたがって、障害物を並べていく。この「草アジ」は参加者全員が主催者というほどのチームワークで、見ていて気持ちいい。障害物の設営が終わると、出場するハンドラーたちが、スタート地点から順にコースをたどって、入念な下見をする。コースは、毎回異なるので、ハンドラーがレース前にどれだけコースを把握できるかが、競技の第一関門だ。彼らは早足で、あるいは駆け足で、あたかも犬に指示するように手を突き出し、かけ声をかけ、手をたたき、身をひるがえしながら、何度もコースを巡回する。本番さながらの真剣さ、熱の入れようである。 もちろん、「ジュニアオープン」には初心者が多く、なかには、障害物には目もくれず、場内をかけまわる犬。コースの途中で、なにかの臭いをとらえ、猛然とどこかへ走り去る犬。コースを間違って、右往左往するハンドラー、と、ほほえましい光景が続出し、会場は、しばしば爆笑のうず。完走すれば、笑み満面に手をあげ、みずから拍手し、愛犬と抱きあって大喜び。感動のシーンがくりひろげられることになる。 世話役で競技解説を担当する高野寿さんは、「草アジ」に参加するベテランから初心者まですべての人と犬の個性、特長、技量、エピソードを熟知していて、的確でユーモアあふれる競技評、人物評、愛犬評を語りつづけ、そのたびに歓声や拍手がわきおこる。以下、高野さんが当日のプログラムに記した「ジュニアオープンの見所」を書き写す。
「初参加のタービュレン軍団、狼犬と大型犬揃い踏み。2001年に大暴れが予想される99年生まれの犬達に注目。フリスビードッグたちの初参加も見物。ミニにおいても全く予想がつかないが、かたい所で、松岡ラン、織田チコ。コースがはまれば千葉ゆめ、コースが覚えられれば(ハンドラーが)名雪ベティの戦いぶりも楽しみである。他にも初参加でデータのないチームもいるのでこれも見逃せない」高野さんは、みずから独習でアジリティを始め、日本代表として世界大会に出場したこともあるが、「草アジ」では、単に技術の向上をめざすのではなく、「愛犬と駆けまわる楽しさ、喜びを味わってほしい」と言う。「草アジ」のモットーは、「最低の費用で最高の遊びを!」。そのために、会場は、一日ゆったりと過ごせる、広く緑あふれる河川敷や牧場などを選ぶ。また、競技の解説をする高野さんのスピーチは、どれも参加者と愛犬への思いがこもったもの。「同じ時間を使い、同じ参加費を払って参加する以上、だれもが主催者の気持ちで、平等に楽しんでもらいたい。だから初めての人でも、競技のときはスターです。競技内容でいいところがなくても、私は、愛犬の毛並み、ハンドラーの熱意、走り方、なんでもいいからほめて、盛りあげたい」 その思いが通じたのか、一年半前、数十人規模で始めた「草アジ」は、回をかさねるごとに参加者が雪だるま式に増え、いまや、イベント告知すれば、わずか一週間で参加希望者が二、三百に達するほどという。 |
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「犬の思い」あふれる、加古川リバーサイド ドッグクラブの「アジリティ体験会」 四月なかばの日曜日、兵庫県加古川市を貫流する加古川の河川敷に出かけた。もともと河川敷の散歩仲間たちが始めた加古川リバーサイドドッグクラブ(KRDC)主催の月例会「アジリティ体験会」を取材するためだ。あいにく小雨が降りだして、事務局の八木卓也さんが「僕ら、日頃の行いがいいのに、どうして雨なんか降るんや」と、こぼしている。さいわい、すぐに薄日がさしてきて、参加者たちもぼつぼつ到着した。 KRDCの体験会は、いわば関西的カオスとでもいえるほどで、八木さんと立ち話しているうちに、いつの間にか参加者各自が愛犬とあるいはハードル、あるいはトンネル、シーソー、板壁、歩道橋と、思いおもいの障害を相手に練習を始めていた。
両側からハードルを越えてきて、まんなかでクロスする犬と人。向こうでは、二、三頭が連なって、歩道橋を歩いている。次のグループは、尻込みする愛犬を両側からご夫婦で励まして、歩道橋を渡らせる。下り坂で足のすくんだワンちゃんの前に、おやつをひとつずつ置いていくと、恐怖心より食欲がまさったのか、おやつにつられて、一歩ずつ進みだす。わが愛犬を見つめながら、「まるで鳥に餌をやってるみたい」と笑い出した。一方、トンネル障害では、入り口に奥さんと愛犬がいて、出口のほうからご主人が名前を呼ぶ。呼ばれた愛犬は、トンネルの外側をまわって、愛しいご主人のもとに走っていく。あるいは愛犬の先頭に立ち、「とーべ!」とかけ声をかけて、次々にハードルを越えてみせる人。飼い主の熱意むなしく、愛犬は、バーをくぐって後を追う。となりの板壁では、奥さんが上にのぼり、愛犬の大好きなボールをかざして、誘いだした。それでも愛犬はご主人の腕のなかで固まったまま。ちょうど子育てで、「這えば立て。立てば、歩めの親心」という言葉があるが、アジリティの初心者は、そんな心境をじっくりとかみしめているのかもしれない。 KRDCの古株で、アジリティ歴六年の大浦繁樹さんは、アジリティ上達のコツについて、「飼い主が教育パパになって、あきらめず、コツコツと段階をふんで教えていくことが大切です」と言う。「でも、犬の集中力は十分から十五分。それ以上やると、犬がだらけだす。いやな思いをして練習をやめると、犬がアジリティを嫌いになります。ですから、短い時間にぐっとやらして、ほめてあげ、楽しいあいだにさっとやめること。教育パパにならないといけないし、かといって、教育パパになってもいけないし、犬の状態をみて、練習量を調節してください」
とかく学力低下や学級崩壊が叫ばれる小学生の親のひとりとして、大浦さんのアドバイスはしみじみ胸にしみこんだ。この日はじめて、ご主人とKRDCに参加したという川西市の土田尚子さんに聞くと、「アジリティに参加して、犬がしっぽを振り、目を輝かせていると、ほんとにうれしいですね。技術的にはまだまだですが、楽しむことに意義がある、という感じです。犬と暮らすと犬中心の生活になって、犬と一緒に行けるところ、犬が喜ぶところへ行くようになりました。このクラブは今日が最初ですが、あくまで犬中心で、犬の好きなようにやれるのがいいですね」と、ほほえんだ。 KRDC創設メンバーのひとり、西田州一さんは、ひとりでも多くの人がアジリティの楽しさを知って、犬とのよりよい、より楽しいつき合い方を身につけてくれれば、不幸、不遇に生きる犬たちが少しでも減っていくのではないか、と、アジリティ体験会への思いを語る。「もし自分が犬だったら、一日中つながれていれば、かなりストレスがたまります。だから、散歩のとき、僕なら飼い主をひっぱって走ると思う。それをだめだといわれたら、自分の気持ちをどこへぶつけていいのか。僕が犬なら、すねるし、少しかんでやろうかと思うかも。そう考えると、むずかしいことはありません」 犬の目、犬の心、犬の思いが、加古川リバーサイドドッグクラブの、アジリティはじめあらゆる活動の原点である。 |
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「草アジ」ここが魅力!
■東京都杉並区 石田伸枝さん |
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