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P-WELL REPORT
 
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古来、列島に暮らす人びとは、年々歳々、さまざまな神さまに、
無病息災、豊作、幸せなどを祈って生きてきた。
グローバル競争やらIT革命やら、見通しのつかない
二十世紀最後の秋、新世紀への願いをこめ、
神のくに、お伊勢さんの門前町でくりひろげられた
「招き猫まつり」と、かつての将軍家のお膝元、
東京の市谷八幡宮でつくられた「ペットお守り」についてレポートする。



伊勢内宮前・おかげ横丁の招き猫まつり

 お伊勢さんこと、伊勢神宮内宮の門前町・おはらい町の一角に、三重県内のさまざまな商家・民家を移築・再現し、県内外の名物・特産をあつめた「おかげ横丁」がある。
 毎年九月二十九日は、知る人ぞ知る、来(九)る福(二・九)に掛けた「招き猫の日」とか。
 その「祝祭日」にちなみ、おかげ横丁で同日から体育の日まで開催される第六回「来る福招き猫まつり」にあわせ、全国各地から招来された、大小、新古、伝統・創作、さまざまな招き猫約三万体ほどが横丁一帯をうめつくし、趣向をこらしたお祭りを楽しもうと県内外各地から多数の人びとがつめかけてきた。
 伊勢名物、「赤福」本店の筋向かいに建つ常夜灯前にかざられた巨大な招き猫のまわりには、朝九時前から長蛇の列ができ、法被(はっぴ)姿のスタッフやプロ・アマ混じる多くのカメラマン、TV撮影スタッフがあたりを闊歩して、オープニングをかざる「吉兆招福鈴授与」を待ちかねている。やがて、一般公募で選ばれた福娘二人が艶やかな振り袖姿で登場。九時二十九分、福鈴九百二十九個の無料授与が始まった。
 福娘と巨大な招き猫をバックに記念撮影する家族連れ、お年寄りや若者たち。「前から来たくて、今年やっと来れました」と、岡山からのおばあさんたちは満足そう。となりの古風な山車(だし)の前では、県内青山町から来たというご夫婦が、福袋に入っていた抽選券で当たった招き猫をもって、上機嫌。「去年は主人が当たって、今年は私。ほんとに、ついてます」という奥さん。ご主人に、「この一年、なにかいいことは?」とたずねると、「別になにも。でも、こんな世の中ですから、なにもないことが幸運な証拠です」と、ほほえんだ。なお、 右手をあげる招き猫はお金をまねき、左手をあげるほうは人をまねくとか。
 午前十一時には、横丁の中心に建つ太鼓櫓で、地元・宇治神社の宮司さんが祝詞をささげる「招き猫感謝祭」があった。やがて、午後一時の、当日のメインイベント「招き猫山車巡行」が近づくにつれ、横丁周辺は人、人、人で大賑わい、いやがうえにもお祭り気分が盛りあがっていく。
 あちこちに、あふれんばかりの招き猫を満載したお店がある。あちらには招き猫の骨董市。こちらにはおみくじ猫百覧会。むこうの屋台ではべっ甲飴の実演販売。さらには郷土玩具招き猫展に招き猫現代作家展…。猫、ねこ、ネコの横丁に、愛犬連れの観光客もまじってる。
 招き猫集会所「にゃん福処」で来客と話する、「招き猫まつり」実行委員のひとりで、みずから招き猫の創作も手がける土人形作家の篠田正隆さんに招き猫創りの感想をたずねると、「しんどいですね。とにかく、注文がものすごくて、年に何千体創るでしょうか。あまり忙しくて、本業の土人形を創るヒマがなくなりました」とにが笑い。招き猫の世界も、奥が深そうだ。「ところで、どうです。あなたも招き猫倶楽部の会員になって、揃いの法被を着て、昼から、山車をひいてみませんか」


来訪者の「幸せ」と地域の「活性化」をめざして

 行事の合間をぬって、おかげ横丁広報室長の中村 学さんに、「おかげ横丁」と「招き猫まつり」について話をうかがった。
 中村さんによれば、昔からお伊勢参りで栄えてきた内宮の門前町「おはらい町」も、クルマ社会の到来とともに往年の賑わいが減少。十年ほど前には、年間四百万人ほどの内宮参詣客・観光客のうち、わずか三十万人あまりがおはらい町を通るほどだったという。以前から町の活性化をめざしてきた地元では、平成五年の「伊勢神宮式年遷宮祭」(二十年ごとに新社殿を造営して、ご神体を移す伝統行事)にあわせて、おはらい町の一角に県内の商家や民家を移築・再現し、良質・多彩な名物・特産をあつめた「おかげ横丁」を開設。同年だけで百五十万人あまりが立ち寄る新名所となった。
 ちょうどその二年後の平成七年、日本招き猫倶楽部の働きかけで、九月二十九日が「招き猫の日」となった。同倶楽部の会員で横丁内に出展する吉兆招福亭の提案で、おかげ横丁では横丁あげて「招き猫まつり」を開催することにきめ、同年第一回「招き猫まつり」を決行した。以後、月に二度は実行委員会がひらかれ、新たな企画をねり、準備をつみかさね、あれやこれやの行事・出展を実現してきた。その甲斐あってか、今年の「招き猫まつり」期間の参加者は八万人ほどが見込まれ、現在、おはらい町・おかげ横丁をおとずれる観光客は年間二百二十万ちかく、という。この日、注目の的となった福娘も今年が最初。「寿などのおめでたい名前や九月二十九日生まれ、今年二十九歳など、招き猫まつりに縁のある女性三十名ほどが応募されましたが、どなたも甲乙つけがたくて、選考が大変でした」と、中村さんはほほえんだ。
 ところで、どうして、お伊勢さんで招き猫まつりなのか。中村さんは言う。
 お伊勢さんの地元では、昔から、参詣・観光のお客さまに「福」をもって、幸せになって帰っていただきたい、という思い、願いが受け継がれてきました。そんな思い、願いを現代に生かして、お客さまに楽しんでいただき、三重県のほんとうの良さを味わってもらおうというのが「おかげ横丁」の原点です。招き猫も「福」招き、同じ「福」どうしを結びつけたイベントが「招き猫まつり」だったのです…。
 おかげ横丁内外をあちこち飛びまわり、インタビューや撮影に熱中しているうちに、お昼すぎになった。
 常夜灯前の巨大な招き猫と山車周辺では、巡行の準備が始まった。巡行を先導する、地元の幼稚園や保育園の園児たちが、青と桃色の法被姿で参列する。園児たちの顔を見ると、鼻の頭を黒く塗り、左右の頬には黒いひげが描かれていて、無性に可愛く、ほほえましい。先ほどまで福娘の撮影会でバシャ
バシャ写真をとっていたアマチュアカメラマンたちが、今度は我先に園児の列に殺到する。
 やがて、山車の上から「にゃんちろりん〜」のお囃子が聞こえてきて、園児・福娘と巨大招き猫・山車がつらなる巡行が、大勢の見物客にとりまかれたまま、老舗のお店がたちならぶおはらい町通りを内宮前の宇治橋めざして、進みだす。
 伊勢路の秋は、風情と活気と「福」と「招き猫」にみち、みちていた。


「市谷亀岡八幡宮」
愛犬・愛猫への、飼い主さんの深い思いに応えて

 秋晴れの東京、JR市ヶ谷駅に降りて、旧江戸城西の外濠をわたり、ビルの谷間の急な石段をとんとんと登ると、市谷亀岡(いちがやかめがおか)八幡宮がある。同八幡宮は、戦国末期、江戸城をひらいた太田道灌が城西の鎮護のため、かつての関東武士団の棟梁源氏の氏神だった鎌倉鶴岡八幡宮から勧進。江戸時代には徳川家の尊崇をあつめ、大いに栄えた神社である。
 大都会のただなかとは思えないほど静かな境内に入る。石畳の先、秋風のそよぐ木立の奥には赤い社殿があり、その前に赤と青のバンダナをまいた二頭のゴールデンが待っていた。彼らが首にまいたバンダナには、市谷亀岡八幡宮奉製のお守りがついている。おそらく日本初、犬やネコなどペット動物専用のお守りである。
 宮司の梶 謙治さんは、古来、日本では、稲荷神社が狐、日吉神社が猿、八幡宮が鳩など、動物が神さまのお使いを務めることが多く、神社と動物のかかわりは非常に深い、と言う。しかし、人と暮らす動物たちの守護札、お守りは、これまでなかった。

「このごろは、犬やネコなどペット動物が家族の一員となって、当社でも初詣などに愛犬や愛猫をつれて参詣される方々も多くなってきました。そのような、人と動物のかかわりの変化をみせていただき、どうにかして、飼い主さんの思いに応えたくて」と、梶さんはペットお守り発案の動機を語り、犬やネコたちには健康のまま、長生きしていただき、飼い主さんには動物たちの安全、安寧を得て、ご家族みなさんが心やすらかに暮らしていただければ、と付け加えた。
企画をかため、動物たちの本来もっている毛並みを生かすためにデザインを工夫し、試作をかさねて一年あまりで完成したお守りは、首にまくバンダナ(大・小・赤・青)タイプと、首輪やリードにつけられるホルダー(赤・黒)タイプがある。お守りの販売は、首都圏ばかりか全国の人びとが気軽に入手できるように、市谷八幡宮がインターネットに開設しているホームページ上で注文を受けつけている。


 ペットお守りの共同企画者・想アソシエイツの原島 一さんによれば、お守り購入者からの熱いメッセージが各地からEメールやFAX、手紙などで届いている。「実は、先日、九州のある動物病院さんから、退院する動物たちに贈りたい、とまとまって注文をいただきました」。また、東京に来たので、と、直接参詣し、社務所でお守りを求める人も少なくないという。
 木漏れ日のなか、野鳥のさえずる境内を歩きながら、梶さんはこう言った。「人が生まれてから亡くなるまでの歳月は約八十年ですが、犬やネコたちの寿命は十数年。歳月はずっと短くても、人と同じ成長の過程をたどって生き、老いて亡くなるのは同じで、いわば、彼らは生命をぎゅっと凝縮して生きています。愛犬や愛猫たちへの飼い主さんの深い思いに、私たち神道にかかわる者がもっとはやく応えなければいけなかったのでは、という思いがあります」
 よく見ると、市谷八幡宮の境内には、小さな土の子たちが地面から生まれ、うずまきながら成長し、やがて、だんだんに小さくなって土に帰るという粘土群像がならべられている。その土の子たちをながめていて、結局、人や犬、ネコたちも、地中に七年暮らし、地上で七日の命をもやす蝉たちと同じで、ひとときの夏を生き、夏に死ぬ、その「ひととき」のかけがえのなさこそが「福」であり、「幸せ」なのかもしれない、という気がしてきた。


取材協力
●伊勢内宮前・おかげ横丁 広報室長 中村 学さん/ 伊勢市宇治中之切町52番地 TEL0596-23-8838
http://www.okageyokocho.co.jp
●土人形作家 篠田正隆さん 名張市赤目町新川284-18
●市谷亀岡八幡宮 宮司 梶 謙治さん/東京都新宿区市谷八幡町15番地 FAX03-3267-1158
http://www.ichigayahachiman.or.jp
※同八幡宮では2001年1月8日(月)午前11時と午後3時から「ペット初詣」がおこなわれる
●(株)想アソシエイツ 代表取締役 原島 一さん
東京都新宿区市谷田町2丁目7番地 三貴ビル201 TEL03-3267-1151
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