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| 大地を疾駆する犬たちの姿ほど、美しいものはあるだろうか。 しかし現実には、リードをはずして、安全に、楽しく犬たちを走らせ、 人と犬が入り交じって、愉快にあそぶ場はほとんどない。 最近、期間限定で開催された、生駒山麓のゴルフ場と 神戸・ポートアイランドでのドッグランの様子をレポートする。 |
この子が走ってる姿をぜひ見たくて
大阪平野を一望に見下ろす生駒山東麓にひらけた阪奈カントリークラブ内のゴルフ練習場「スポーツヒルズ大阪」の一角。緑の芝生におおわれたミニパターコースに、六月なかばからの十日間、ドッグランが開催された。オープン直後の土曜の朝、好天にさそわれて、さっそくのぞいてみた。 「はじめての企画で、調整や準備に手間どっているうちに開催日が近づき、奈良市内のミニコミ紙にすこし告知広告を載せた程度で」と、ドッグランを企画した阪奈カントリークラブの小林沙聡さんは、受付のほうに目をやった。 突然、スタッフのあいだから、「本日のお客さま第一号」、「いらっしゃい」、「うれしい」、という声がわきおこる。むこうから、さっそうと歩くアイリッシュ・セター「プリシラ」を連れた井上さん家族がやってきた。 「今朝、お友だちから、ドッグランができたから、一緒に行きませんか、と電話があって、すごい、って、一足先に出かけてきました。以前は、近くの公園で長いリードをつけて散歩したりしていたんですが、ご近所から、犬の散歩に苦情がでて、残念ながら禁止。ふだん、走らせる機会って、ほとんどないでしょ。この子が走ってる姿をぜひ見てみたくて」と、奥さんも上機嫌。 プリシラは、芝生の上を気持ちよさそうに駆け出した。ご主人が「この子は二歳ぐらいまでいたずら好きで、もうたいへん。ソファの上を掘りつづけ、とうとう最後には開通させて(笑)」と、自慢(?)話をしていると、あとを追いかけていたお嬢ちゃんが、むこうで「プリシラ、ウンチしちゃった」とさけんだ。奥さんが手早く後始末して、ウンチポストに「投函」した。 二組めは、ト、ト、トッとはずむような歩調のパピヨン「チェス」を連れた桑野さん夫妻。エスコートするトレーナーさんが、「リードをつけてください」と井上さんのご主人に声をかけ、プリシラとチェスは飼い主さんと一緒にリードをつけてご対面。たがいにクンクンとにおいを嗅ぎあってあいさつする。これがドッグランの入場マナーだ。そのあと、まずチェスのリードがはずされ、チェスはプリシラのまわりをぐるぐると走る。ついで、プリシラのリードがはずされた。はじめこわごわだったチェスは、だんだん大胆になり、プリシラに近づいては、さっと逃げ、遊びにさそう。飼い主さんの足元で、追いかけあいが始まった。しばらくはげしい追いかけあいがつづいたのち、二頭は満足そうな表情で、飼い主さんが腰掛けるテントの下にもどってきて小休止。おいしそうに水を飲んだ。 |
| ゴルフも犬も、ルーツをたどると同じイギリス ゴルフ場にドッグラン。芝生の上を軽やかに走る犬たちを見ていると、まさに適材適所という思いがする。今回のドッグランを企画した小林沙聡さんに、経緯をたずねてみた。 「私、去年まで東京にいたのですが、むこうの知り合いに犬好きの人が多くて、今度、関西のゴルフ場に勤めることになったと言いますと、それじゃ、ぜひ、ドッグランをやってみたら、とすすめられました」
小林さんに追い風が吹いた。6月下旬、阪奈カントリークラブでは、「フリスキー大阪女子オープン」大会がある。その協賛企業のフリスキー株式会社がドッグラン支援を快諾。社内合意も得られて、まず期間限定で今年六月に開催することに決まった。 「なぜ、ゴルフ場でドッグランを開くのか、という人には、ゴルフも犬も、ルーツをたどると全部イギリスじゃないですか、と」 今回のドッグラン運営に協力する、人と動物とのよりよい社会づくりをめざすNPO法人Knots(ノッツ)の冨永佳与子さんは、「イギリス…」とつぶやいたあと、「ゴルフはマナーとルールのスポーツで、それを守れないとだめ。犬も同じですね。飼い主さんがマナーとルールを守れてはじめて、飼える生き物。ここにドッグクラブをつくって、昼間はコースに出て、プレイが終わったら、ドッグランで愛犬とあそぶ、そんな、カントリー&ドッグクラブなんかどうですか」と、はしゃいだ。 小林さんによれば、阪奈カントリークラブでは、グリーンキーパーの人が農薬嫌いで、無農薬のバイオ技術でコースの維持管理をおこなっている、とか。足元をよく見れば、あちこちにミミズの掘りかえした穴がある。これなら、いくら犬たちや子どもたちがドッグラン内でゴロゴロころげまわっても、安心だ。 Knots方式では、ドッグラン場内で、犬たちがオシッコをすると、スタッフや飼い主が、用意したEM希釈液の入ったジョウロをもって、そのあとにまくことになる。尿の臭気が消えるし、土地の施肥ともなる。一石二鳥である。そのグリーンキーパー氏も犬好きで、ミニチュアダックスフント「パル」と暮らしている。冨永さんがニコニコ顔で「ここのドッグランは、パルちゃんのパパがグリーンキーパーだから安心。とてもいい方です」と太鼓判を押した。 |
神戸では、一日最高七十二組、延べ四千三百名が入場
しばらくして、ラブラドール「ヒコ」を連れた遠藤さん夫妻、ゴールデン「ウインディ」を連れた城内さん家族、白いミクスド「マッシュ」を連れた田中さん家族などが入場してきた。そのたびに、場内の犬たちはリードをつけ、飼い主さんと一緒に、一頭ずつご対面をする。 「ドッグランに来ると、犬同士、飼い主さん同士の付き合い方が身につきますから、とてもいいですよ。散歩のとき、見知らぬ犬と出会ったら、すぐリードを引いて避けるでしょ。それじゃ、社会性なんて、うまれないですから」。冨永さんが、対面セレモニーを見守りながら、語りかけた。 「プロのトレーナーがサポートするから、ドッグランに来られる方も安心されます。飼い主さんが安心していると愛犬もリラックスして、ほかの犬ともめることもありません。また、飼い主さんも、なれてきて、これなら大丈夫、これはまずい、というのがわかるようになって、トラブルを未然に防げるようになるんです」と。 受付ブースのベンチで、Knotsの勝田千恵美さんが、リストを持ってながめている。そばによってたずねると、「万一、ワンちゃんがケガしたときにそなえて、近くの動物病院のリストです。神戸では、地元の獣医師さんに待機してもらったんですが、さいわい、事故やケンカは一件もありませんでした」と勝田さんは話しはじめた。 この春、神戸では、三月下旬から五月上旬まで、ポートアイランドの特設会場で「ドッグラン21」が開催され、期間中、延べ四千三百名ほどが入場した。一度来て、すっかりドッグランのとりことなり、二度、三度と通う家族連れも多く、ある休日など、一日に七十二組の愛犬と飼い主さん家族がやってきて、一時間待ちとなるほどの盛況だったという。その運営をおこなったのがKnotsだった。 「神戸では、見学者もOKとしたら、多い日は、ワンちゃん連れの二倍ほどの見学者がありました」 ドッグランを味わった 犬と人は、ドッグランに帰る 神戸のドッグラン会場は、神戸港に突きでたポートアイランド大お花畑のタテ九十二メートル・ヨコ八十五メートルの、ちょっとした野球場なみの広さだった。そこを何十頭もの犬たちが楽しそうに走りまわり、犬、人、入りみだれてあそびあう。その光景を見ているだけで、心が晴れ晴れする。 「飼い主さんたちもとても幸せそうで、やはり、ワンちゃんたちが思いきり走れるところが必要ですね」と勝田さんは言う。
犬を飼っていない見学者は、入場前に犬とのふれあい方を練習。場内では、飼い主の許可を得て、犬たちと交流した。 *この記事は、2001年7月15日発行のものです。 |
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