ペットのための快適生活情報P-WELL
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P-WELL REPORT
 
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うちの子の体型にフィットするウエアがない。
喜んで食べてくれて、健康にもいいフードはないの…?
大量生産品に十分な満足を得られない飼い主心に応えるように、
最近、愛犬、愛猫への想いをこめた「手づくり」の
知恵と技術にあふれたペットウエアやフードが注目を集めている。
それら「手づくり」事業のいくつかの「現在」をレポートする。

愛犬にフィットする快適なペットウエアを!
Warm Heart Company
東京都杉並区高井戸東3の33の18 TEL03(5930)2241 http://www.whcy.net
神戸「ドッグラン21」では、ふれあい教室をはじめ、犬とのさまざまなイベントが開催された。

 東京・渋谷から京王井の頭線に乗り、高井戸駅で下車。駅から十分あまり歩いて、小さなマンションにたどりついた。
 ドアをあけると、赤や茶、青や緑など色あざやかなオシャレ着や部屋着、バスローブやレインコートなどさまざまなペットウエアと犬たちの写真が並べられ、奥ではデザインワークにとりくむ人たちがいた。
 ここが、いま、愛犬たちにフィットする、機能的で快適、そしてファッションセンスにあふれたペットウエアのデザイナーブランドとして注目をあびる「ウォームハートカンパニー」の本拠である。三年前、同社を設立した西尾八千代さんは、長年プレタポルテを手がけていたファッションデザイナー。さっそく、ペットウエアデザイナー開業の経緯をたずねることにした。
「何年か前、自己満足になりやすいファッションデザイナーとしての仕事に行き詰まりを感じていて、すこし自分を見つめなおすために海外に行くことにしました」
 ちょうどそのころ、二頭のラブラドールと暮らす西尾さんは、懇意にしている動物病院の院長から、「治療後の犬やネコにエリザベスカラーをつけると、ストレスが大きくてよくない。なにかいい入院着はできないか」と相談を受けた。その「宿題」を胸に、西尾さんはアメリカを旅した。むこうのペットウエアショップをのぞき、現地の病院に勤める知り合いにたずねても、治療用にふさわしい、犬やネコにあったものは見つからない。それなら、自分でもっといいものを創ろう。そんな思いを抱いた西尾さんは、帰国後、百頭近い犬たちをモニターに、試作してはフィッティングをくりかえして、最善のペットウエアづくりに没頭した。
上:メディカルウェアとして様々な工夫がされた、特許申請中のTピースはこれまでにないペットの保護胴着。治療着としても、おしゃれな日常着としても利用できる。
下:ウォームハートカンパニーのウエアはどれもファッショナブルでかわいい。だが一番のセールスポイントは犬の体型や動きを徹底的に研究して作られているので、とても機能的で快適なことだ。カスタムサイズもOK。
「犬の骨格を十分に理解して、動きに不自由のないものを創るのがすごく大変でした」
 犬は、胴が長く、手足は胴と直角にのび、動きはことのほか、はげしく、流れるような毛並みにおおわれているため、脱げやすい。といって、ボタンやファスナーなどを多用すると、窮屈だし、着せにくい。治療後の犬たちが、余分なストレスを感じず、リラックスしてすごせる入院着の開発は予想以上にむずかしかった。しかし、そのことが、かえって、西尾さんのデザイナー魂に火をつけた。
 ようやくできた「入院着」を動物病院にとどけると、先生はすぐに入院動物に試着した。すると、犬ばかりかネコにも
フィットして、その服をいやがらず、「すごくいい」と先生は目を丸くした。
 ファッション関係の仕事仲間から、「それ、とてもいいから、特許を出願したら」とすすめられ、それなら、いっそ事業化しようかと決断して、特許出願と商標登録をおこない、西尾さんは「ウォームハートカンパニー」を設立した。一九九八年五月のことだった。
 さいわい知り合いの素材メーカーや縫製工場が全面協力してくれ、西尾さんたちは、十分に工夫して、皮膚にやさしく、通気性がよく、着せやすく、シンプルで機能的で、犬種ごとの体型、毛並みにぴったりのウエアを次々に開発、市販していった。
「動物は人間とちがって正直です。着せた衣服が嫌だと、もがいたり、動かなくなったりします。この服を着せても、ふだんのように自由に動いたり、寝ころんだりしていると、それが快適なんだろう、と」。犬やネコに無理に服を着せる必要はない。でも、治療用に、あるいは室内や車中での抜け毛対策やマナー、さらには小さなチワワや高齢期の犬たちの防寒用などに服が必要なら、できるだけ快適にすごせるように、と西尾さんは、みずからの開発ポリシーについて語る。
http://www.whcy.net
 皮膚病や高齢で弱っていても、その犬に合った服を着せてあげれば、犬も飼い主も、あまり人目を気にせずに外出することもできる。
「なかには、うちの子、寝たきりだけど、オシャレさせてあげたいから、と特注された方にすごく喜んでいただいたり」。これまでファッションデザイナーとして長いあいだ仕事してきて、いまほどお客様に喜んでいただける「喜び」を感じたことはない、と西尾さんはむすんだ。


愛犬にヘルシークッキー&ケーキを!
Three Dog Bakery
東京都渋谷区猿楽町2の7の101  TEL 03(5458)0085  http://www.threedog.co.jp

横山さんと愛犬イリス。
「ウォームハートカンパニー」での取材を終え、高井戸駅からふたたび京王井の頭線に乗り、渋谷にもどった。ぶらぶらと山の手線ぞいの道を代官山方面に歩く。しばらくして、骨型クッキーの看板がかかる「スリードッグベーカリー」代官山店に着いた。外のベンチでは、ファッション雑誌かなにかの撮影がおこなわれている。同店がオープンしたのは今年7月。はやくも代官山の新名所になりつつあるようだ。
 愛犬イリスと接客にいそがしい、スリードッグベーカリー本部ディレクターの横山眞弓さんが、にこやかに迎えてくれた。
 スリードッグベーカリーとは、アメリカで一九九○年に設立された、犬向けの健康的なホームメイドクッキーやケーキを製造販売する会社で、現在、北米に三十二店舗を展開。ペット産業のさかんなアメリカで、注目を集めている。代官山店は、アメリカの同社のアジア地区総代理店となった株式会社横山本社が出展した第一号店である。
「日本でこの事業を始めたきっかけは、まったくの偶然の出会いからでした」
 一年ほど前、名古屋を本拠に各地でショッピングセンターを経営する「横山本社」の事業視察のため、横山さんはアメリカのカリフォルニア州のリゾート地に出かけた。街を歩いていて、愛犬家の横山さんは、たまたまスリードッグベーカリーのお店に入り、同店内にあった一冊の本を手に取った。それが『アメージング・グレーシー』で、同店の創業者ふたりが執筆した愛犬たちと事業創設の物語だった。
代官山の立地にふさわしいオシャレな店舗。クッキーだけでなく、ワンちゃんやペットオーナー向けのグッズも取りそろえている。こちらにもこだわりのセンスが光る。
 タイトルのグレーシーは、生来、色素異常で耳が聴こえず、片目が不自由な犬だった。どんな経緯か、薬殺処分寸前にダンとマークという二人が救いだし、育てることになった。ところがあるとき、グレーシーが拒食症になり、衰弱した。ふたりはどうにか食べさせようと手づくり料理に挑戦。たまたま作ったクッキーを口にするようになり、食欲を回復。健康をとりもどした。そのクッキーを知人、友人に分け与えると好評で、趣味の延長でビジネスをはじめ、ベンチャー企業の仲間入りをした。彼らは事業収益から基金を拠出して「グレーシー財団」を設立。虐待やホームレスなど、不幸な運命の犬たちを救済する事業に支援しはじめた。
 この本を読んだ横山さんは感激し、ほどなくカンザスシティのスリードッグベーカリー本社を訪問。彼らへの共感を深めて、日本で事業展開することになったのである。
 すぐに候補地探しを始め、菓子づくりのプロフェッショナル二名を採用。アメリカで技術と接客サービス、同店の理念などを研修。また横山さんは出会いの書『アメージング・グレーシー』の翻訳を働きかけ、代官山店オープンの日に発売することができた。
「当店のクッキーやケーキは、合成保存料や着色料、それに犬の体に悪い塩や砂糖、動物性油脂などを一切使っていません。甘みはリンゴの糖分で、チョコレートのように見えるものも、実は、キャロブという豆からつくっています」。原材料はすべてアメリカから輸入。同店のパティシェが、毎日、店内で調理する。
http://www.threedog.co.jp
 開店後、夕方には愛犬の散歩がてら立ち寄る人が増え、土日には、評判を聞いて、遠方から車でやってくる家族も少なくない。インターネットでの注文も多く、クール宅配便で直送するという。
「いまは愛犬も同じ生活空間で暮らしていて、おうちでのティータイムのとき、欲しがるから、と、つい、人用のお菓子を与えて、太らせてしまうことも多いでしょ。そんなとき、ワンちゃんには犬用のおやつをあげれば、みんな楽しくすごせるのでは?」。今後、全国に事業展開して、収益の一部をグレーシー財団に寄付していきたい、と横山さんはほほえんだ。


病弱な犬やネコに健康的な食生活を!
HOLINF
三重県鈴鹿市東玉垣町2850の10  TEL0593(81)2215  http://www.holinf.com

獣医師でもあり、ペットフードの専門家でもある浦元さんが試行錯誤をくり返して完成させた、まさに“究極”の手づくりフードだ。

 翌週、大阪から近鉄特急で三重県鈴鹿市の白子駅にむかった。改札を出ると、みずから手づくりペットフードを開発・販売する「HOLINF(ほりんふ)」代表の浦元進さんが待っていてくれた。
 浦元さんは獣医師で、大学と大学院で獣医学を修めたあと、ペットフード会社に就職。動物の栄養学を学びながら、さまざまなペットフードをつくってきた。ペットフードの開発はおもしろく、無我夢中で仕事に熱中しているうちに十数年たった。しかし、基本的に画一的で低コスト・大量生産方式のペットフードづくりに限界を感じ、独立して、理想のペットフード開発に挑戦することにした。三年半あまり前のことだ。「犬は小さなチワワから大きなセントバーナードまでいて、それぞれの犬に必要な栄養は全然ちがいます。それを一種類のフードでまかなうのは無理です。また、皮膚病や内臓の病気などで、市販のフードを与えられない犬やネコも増えています」
 そんな病弱な犬やネコたちに与えるべきフードがほとんどない。そんな愛犬向けに、ちょうどアトピーの子どもたちを持つ親たちが手料理をつくるように、飼い主が手づくりをしようとしても、どのようにつくればいいか、という情報もない。せめて、そんな人たちの選択肢のひとつとして、手づくりの「健康フード」をつくりたい、というのが、浦元さんの願いだった。
 ひとことで、「健康フード」といっても、それぞれの犬やネコの年齢、性別、体格、品種、育て方、病歴などによって、必要とする栄養配合はすべて微妙に異なってくる。それを注文があるたびに一頭ごとヒアリングして配合計算していけば、ぼう大な手間ひまがかかる。しかし世の中は、情報化、インターネットの時代となった。個別の基本情報は、処理しやすいデジタル情報として、インターネットで送受信できる。また、パソコンのソフトウエアを活用すれば、短時間に、それぞれの犬やネコに必要な栄養計算処理もできる。浦元さんは、まずみずから栄養配合ソフト開発に奮闘。無事、成功した。
 次は、いかにフードを製造するか、である。既存の製造装置は、あくまで大量生産型なので、少量多品種生産ではロスばかりで使えない。少しずつ、コツコツとフードをつくるのに何がいいかと考えて、浦元さんは街のパン屋さんで活躍する製パン装置に着目した。すぐに製パン学校に通い、パンづくりをマスター。パンの発酵技術をベースにフード製造技術を確立するために試行錯誤をくりかえした。

http://www.holinf.com

 そのとき、きわめて重要な課題があった。ペットフードの原材料をどうするか、である。既存のペット産業用の材料は、大口需要ばかりで小口での入手は不可能にちかい。それに、品質的にも問題が多く、病弱な犬やネコたちの健康回復をめざすフードの原材料とはなりそうもない。「品質を考えると、やはり〈食品〉、人間用の食材がベストです。コストはすごくかかるのですが、人間用の良質な肉、野菜、ミネラルなどを使うことにしました」
 そうして、約1年半、あれこれ苦心して、一見、小粒のパンのような、特製のフード製造法を確立。昨年九月にインターネットによるオーダーメイドのペットフード販売事業を開始したのである。
 その後、すぐにテレビの取材があり、全国ネットで放映され、予期しないほどの注文が殺到。個別注文の手づくりでは対応できず、一時はパンク状態になったという。「事業を始める前、きっと需要はあるだろうと思っていましたが、これほど、反応があるとは、正直、思いませんでした。メールのお便りが、みんなほんとに熱くて」と浦元さんは言い、これから、もっとホームページを充実させて、飼い主さんが自宅で手づくりするのに必要な情報を提供していきます、とつけくえわえた。

*この記事は、2001年9月15日発行のものです。



取材協力
ウォームハートカンパニー 西尾八千代さん
スリードッグベーカリー代官山店 横山眞弓さん
HOLINF 浦元 進さん

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