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愛犬が人をかんでケガをさせてしまったら?  愛猫が交通事故に遭ったら?
ペット不可住宅でペットを飼ったら?  わが子同然のペットに遺産は残してやれないの?
 ペットを捨てるなんて罪にならないの?…などなど。

ペットを飼っていたら、いつ出遭っても不思議ではないトラブルや疑問の数々。
あなたは、きちんと対処できますか。
いざというときのために、ペットにかかわる法律知識、しっかり学んでおきましょう。



さて、あなたは何問、正解できますか?
まず、ペットに関する法律知識を自己チェックしてみましょう。

Q.1
逃走してきた犬を保護しました。
そのまま飼い始めると罪になりますか。

Q.2
明らかに捨てられていると思われるペットを拾って飼う場合は、罪になりますか。

Q.3
購入時、ペット飼養可だったマンションが、管理規約の変更によりペット飼養不可になってしまいました。そのまま飼い続けるのは規約違反となりますか。

Q.4
近所の道路で、リードを付けて犬を散歩していると、リード無しの犬にかまれて、うちの犬がケガをしてしまいました。飼い主に対して治療費などの賠償請求はできますか。

Q.5
家の庭に、死んでしまったペットを埋めようと思いますが、問題はありませんか。

Q.6
ペット美容室で犬のカットをしてもらっている途中に、バリカンの取り扱いミスで、お腹の一部を切るケガをさせられてしまいました。カット自体は完成したのですが、治療にかかった費用を賠償請求することはできますか。

Q.7
猫を飼っていて、昼間は外に出しています。先日、隣のお宅から、うちの猫が車のボンネットに傷を付けて困ったとの苦情を受けました。ボンネットの再塗装代を支払う必要はありますか。

Q.8
犬の散歩中、犬をなでようとした人が寄ってきて、突然手を出したので、犬が驚いて思わずその人の手にかみついて、ケガを負わせてしまいました。飼い主としては、その人に治療費などの賠償をする責任はありますか。

Q.9
知人が、引っ越し先では犬が飼えないので、「ここに置いていく」などと言っていますが、これは罪にならないのですか。

Q.10
財産をペットに相続させることはできますか。


※解答はあくまで「原則」です。現実には、さまざまな条件が加味されるため、必ずしも解答通りにならないケースもあります。 







■犬や猫をめぐるトラブルには、どんな法律が適用されるのか

 現在、犬や猫などは、単なる“ペット”ではなく、大切な“家族の一員”と考える人が増えてきました。しかし、日本の法律では、ペット動物は、“生き物”ではなく「物(動産)」として扱われます。そのため、何か問題が発生すると、法律上は、被害を与えた人と被害を受けた人との「人間関係」の問題となります。
 ですから、飼い犬や飼い猫が他人に損害を与えた場合は、

〈民法第七一八条〉(損害賠償責任)
「動物の占有者はその動物が他人に加へたる損害を
賠償する責に任す但動物の種類および性質に従ひ相当の
注意を以てその保管を為したるときは、この限りに在らす」

〈民法第七〇九条〉(不法行為責任)
「故意又は過失に因りて他人の権利を侵害したる者は
之に因りて生じたる損害を賠償する責に任す」


などによって、その飼い主(所有者)が損害賠償の責任を負います。もっとも、右記の〈民法第七一八条〉条文の後半に明記されているように、飼い主がきちんとした飼い方、管理の仕方をしていた場合は、損害賠償する必要はありません。
 また、もし、自宅の犬や猫が他人に殺傷された場合は、

〈刑法二六一条〉(器物損壊罪)
「…他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役
又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する」


によって、その人は罪に問われることになります。
 もっとも、犬や猫たちがいかに民法や刑法上、「物」として扱われるといっても、命ある生き物ですから、ふつうの「物」とは違います。
 そこで、それらとは別の法律が定められています。それが、かつての「動物の保護及び管理に関する法律」(いわゆる「動管法」)と、それを改正して平成十二年十二月に施行された、現在の「動物の愛護及び管理に関する法律」(いわゆる「動物愛護法」)です。
 この法律は、動物に対する責任と義務と、他人に対する責任と義務について定められていますが、とくに「動物愛護法」になって、「動物が命あるものであること」と「人と動物の共生」を訴える基本原則が定められ、動物に対する責任と義務がより重視されるようになりました。

〈「動物愛護法」第一章総則〉(基本原則)
「動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物を
みだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみ
でなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して
適正に取り扱うようにしなければならない」


 そして、動物虐待についても、

〈「動物愛護法」第五章罰則〉第二七条
一項「愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、
一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する」
二項「愛護動物に対し、みだりに給餌又は給水をやめる
ことにより衰弱させる等の虐待を行った者は、
三十万円以下の罰金に処する」
三項「愛護動物を遺棄した者は、三十万円以下の罰金に処する」


と、法的に動物を守ろうとする姿勢が強く打ち出されています。


■街角での散歩中のトラブルや猫をめぐるトラブル
実際に法律相談に来られる事例をいくつかあげてみます。

●愛犬が人にかみついた
  
たとえば、愛犬との散歩中、他人にかみついたり、飛びかかって服を汚したりして、損害賠償問題になることも少なくありません。そのとき争点となるのは、飼い主が前述の〈民法第七一八条〉の「動物の種類および性質に従ひ相当の注意を以てその保管を為し」ていたかどうかです。つまり、愛犬に首輪と適正な長さのリードを付けるだけでなく、他人に危害を加えないように、自分の脇につけて歩かせていたかどうか。そのことが実証できれば、賠償責任を問われることはありません。

もうひとつは、「自招行為」があったかどうかです。つまり、犬にかまれたり、飛びかかられたりした人(被害者)が、先にその犬に石を投げたり、たたいたりしていれば、それは“自ら招いた行為”で損害賠償にはなりません。また、被害者のほうから犬に近づいて恐がらせていた場合は、「過失相殺」によって、その度合いによって賠償額が減額されることになります。

●愛犬がよその犬にかまれた
   逆に、散歩中、愛犬が他の犬にかまれたりしたときは、相手側が「相当の注意を以てその保管を為し」ていたと証明しないかぎり、損害賠償を請求できます。

●愛犬が車にはねられた
   愛犬が交通事故に遭った場合も、運転者に「故意」や「過失」があれば、賠償責任が生じます。しかし実際は、犬は人間より小さくて発見しづらく、また、突然、車道に飛び出したりすることが多いので、「過失相殺」が認められて、治療費も全額出ないケースも少なくありません。

●愛猫が隣家でイタズラした
   飼い猫が、勝手に近所の家に入って鉢植えをこわしたり、洗濯物を汚したりすると、飼い主の「不法行為責任」が問われます。


■隣近所とのペットトラブル

●ペットの鳴き声・悪臭・抜け毛への苦情
   隣の家の犬や猫が夜中にほえたり、騒いだりして眠れないとか、悪臭や抜け毛で困るという訴えもよくあります。ほとんどの場合、隣近所とのことですので、話し合いで解決されることが多いのですが、被害がひどく、「受忍限度」を超える長時間の騒音や絶え間ない悪臭などでは、損害賠償責任が発生します。

●ペット不可住宅での犬猫飼育への苦情
  
また、賃貸アパートやマンションでのペット動物をめぐるトラブルで、賃貸者契約で「ペット不可」となっていれば、契約解除やペット飼育禁止となることもあります。しかし、現実には、違反の程度が大家さんとの信頼関係をこわすほどにひどい場合でないかぎり、つまり、飼育マナーを守って、まわりに迷惑をかけない飼い方をしていれば、契約解除には当たらない、というのが判例で確立された考え方です。

一方、ペット飼育禁止の分譲マンションでは、いかに模範的な飼い方をしていても、契約違反なので、ペット飼育が認められないという判決が出るケースが多くなっています。とはいえ、東京都内では集合住宅住まいが全体の約七割ですので、それでは大多数の家庭で犬や猫が飼えないことになり、大きな問題となっています。


犬や猫をめぐるトラブル防止の基本とは
●飼育マナーを守る
  
ペットにかかわるトラブルを防ぐ最も大切なことは、飼い主が飼育マナーを守って、まわりに迷惑をかけない飼い方をすることです。最近はかなり状況も変わってきたとはいえ、日本ではまだまだ、飼い主が、犬や猫の本能、性質を理解して、適切な飼い方をする努力に乏しく、周囲の理解を得られないことが少なくありません。
たしかに、家庭における犬や猫の存在意義が大きくなり、家族の一員として暮らす人びとが非常に増えています。そして、なぜ、そのような飼い主の気持ちを理解してくれないのか、という思いが飼い主側に強くなっています。
しかし、やはり“人さまざま”で、犬や猫が嫌いな人もいれば、好きでも、飼い主側のしつけやマナーが悪かったり、鳴き声や悪臭、ふん尿などの問題で嫌な思いをしている人も少なくないのです。。

●日ごろから人間関係を大切にする
   さらにいえば、犬や猫のトラブルが訴訟問題にまで発展するケースを検討すると、それ以前から、ご近所付き合いがなかったり、良好な人間関係が結べていなかったり、ということがとても多いようです。
お互いが相手の気持ち、生き方を思いやって、日ごろから人間的な付き合いを大事にし、犬や猫のしつけ、マナー、飼い方に責任をもって暮らすことが、何よりも求められるのではないでしょうか。


*この記事は、2003年3月20日発行のものです。

取材協力
●クイズ制作・解説/
井田竜馬 行政書士 井田竜馬行政書士事務所
TEL 075-762-3092
ryoma@mbox.kyoto-inet.or.jp
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/ryoma/
行政書士・愛玩動物飼養管理士。動物法務を専門とする。
動物法務協議会会員。
メールマガジン「ペット法務 洛都通信」発行中。

●監修/
矢花公平 弁護士(TOKYO大樹法律事務所)
マンションでのペット飼育訴訟の代理人、犬に関する告訴事件など、ペットに関する様々な案件の相談に応じている。著書に『犬の弁護士さん−愛犬とあなたをトラブルから守るために』(文一総合出版)


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