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知っていますか?こんなボランティア「ペットと一緒に社会参加」


愛犬の散歩をしながら、自分の住む町の防犯に協力する
「わんわんパトロール」。腕章を着けて町を歩くことで、
犯罪抑止や住民の防犯意識の向上につながると、
今、全国各地で“わんパト隊”の結成が相次いでいる。
一方、CAPP活動は、(社)日本動物病院福祉協会が
主宰する「人と動物のふれあい」活動。
動物病院のスタッフや有志の飼い主が、ペットを伴って
高齢者施設や病院などを訪問。動物とのふれあいを通じて、
心にうるおいを感じてもらい、
心身のリハビリテーションのお手伝いをしようというもの。
ペットと一緒に社会参加。2つの活動をレポートする。
砧町町会わんわんパトロール隊の皆さん
CAPP活動に携わるボランティアの皆さんと訪問先の職員の方々

 夏の夕方、小田急沿線の静かな住宅街、東京都世田谷区砧町の富士見公園に、黄色い腕章を着けた「砧町町会わんわんパトロール隊」のメンバー、原岡充さんと愛犬ポチ、鈴木浩子さんと愛犬ゆり、山下純子さんと愛犬アブーが現れた。公園内で遊んでいた子どもたちがなじみの犬を見つけて駆け寄ってくる。
 砧町に“わんパト”こと、わんわんパトロール隊が結成されたのは二〇〇三年七月。当初は事務局を担当する原岡さん家族とその散歩仲間の五家族ほどだったが、少しずつ口コミで参加希望者が増え、一年余りで百三家族の百九十一人・犬百六十四頭となった。
 もっとも“わんパト”といっても、特別な防犯活動を行うわけではない。ただ、朝夕の愛犬との散歩時、飼い主たちが目印の黄色い腕章を着けて、町内外を気ままに散歩する。もし、空き巣やいたずらなどの犯罪行為を見つけたら、警察署に連絡する。といっても、そんなケースは実際にはほとんどない。
 しかし、心のどこかに防犯意識を秘めたメンバーは、ごく自然に、不審な動きをする見知らぬ人や車に注意を払い、通学途中や公園で遊ぶ子どもたちの安全を気遣っている。
 「散歩していて、普段、見慣れない物や人がいると気になりますね。それに、この辺りはマンションが多く、いざという時、子どもたちが飛び込める家が少ないので…」(“わんパト”歴一年の鈴木さん)。
 「この子は子どもたちに好かれているみたいで、夜、塾帰りのお子さんが『アブー!』と言ってくれることもあります。特に“わんパト”を始めてから、お年寄りの方とお話することが増えました。それに、道端にゴミや吸い殻が落ちているのが目に付きます」(“わんパト”歴半年の山下さん)
 事務局の原岡さんが「わんわんパトロール隊」結成を思いついたのは昨年五月。夕方七時ごろ、近くの幹線道路を散歩していて、引ったくりの現場に出会ってショックを受けたのがきっかけだ。原岡さんは、各地で注目されだした“わんパト”ができないかと、地元の警察署と砧町の町会に相談。町会活動の一つとして、自由参加方式で行うことにした。
 聞けば、原岡さんは砧生まれの砧育ち。昔は黒土の畑と宅地が入り混じるのどかな田園だったが、近年、宅地開発でマンション建設が進み、現在、砧町の住民約二万二千人のうち、五年以内に転出入する人びとの割合は約四割。流動性が高く、また、昼間は留守の家も増えて、人口千人当たりの空き巣件数が東京都内トップといわれるほどになった。
 「自分の身の回りにしか関心を持たなくなった住民の方々が、“わんパト”によって、地域に、町会の活動に目を向けていただくきっかけになれば」と原岡さんは言う。現在、小学校のPTAを中心に地区パトロール活動も行われ、住民同士の連帯感も高まり、原岡さんの言う「地域力」も上がってきた。実際、警察の犯罪データによれば、砧町における空き巣件数も“わんパト”活動開始後一年で半減したらしい。
 町の防犯性能が上がって、子育てしている家族が「砧だったら安心だから住もうか」とか、マンション暮らしの若い女性が「結婚後も砧に住みたい」とか、若い世代の人びとに長く住んでもらえる、活気あふれる町にしたい、というのが原岡さんたちの願いだ。いつもの“わんパト”のあと、富士見公園に戻ってきた原岡さんは、かつて海外勤務先のスリランカで拾って一緒に帰国した愛犬ポチをなでながら、こうつぶやいた。
 「“わんパト”は、黄色い腕章を着けて、飼い主さんが毎日やっている愛犬との散歩を普通にやるだけで、会費とか定例会とか、参加者の負担になることは何もありません。誰もが自分のライフスタイルに組み込んで、細く長くやっていただければ、それで十分。とにかく“わんパト”のメンバーでも、そうでない方でも、黄色い腕章のおかげで、出会えば会釈したり、立ち話したりする知り合いが増えて、すごく楽しいですよ」
“わんパト”中、ゆかた姿の人たちと交流

山下さんと愛犬アブー

鈴木さんと愛犬ゆり

公園で子どもたちと遊ぶ

夕方のお散歩中。黄色の腕章が“わんパト隊”の印

“わんパト”に参加するには
まず自分の住んでいる地域にわんパト隊があるかどうかの確認を。新たに結成する場合は、自治会、町会、散歩仲間などに働きかけて隊員を募り、人数が集まれば“わんパト隊”を結成。地元の警察署(生活安全課)に届け出て、指導を仰ぐ。わんパト隊の作り方については、砧町町会わんわんパトロール隊HPに詳しい情報が掲載されているので、ぜひ参考に。

砧町町会わんわんパトロール隊
http://www02.so-net.ne.jp/~jj1vkl/kinuta_wanpat/


 東京都足立区にある特別養護老人ホーム「ゆうあいの郷・扇」に、同区内の宇田川ペットクリニック院長の宇田川勇さんとボランティアリーダーの金田京子さん率いるCAPP活動のボランティア組織「宇田川・金田チーム」のメンバー七人と犬五頭・猫一匹が訪れる。施設三階の集会スペースには、再会を楽しみにする入居者三十人余りが待ちかねていた。
 宇田川・金田チームのメンバーはすぐに犬や猫を連れて、イスや車イスに座るお年寄りたちを巡回し始めた。足元に寄り添う犬の頭をなで、にこやかな表情の人、膝の上でくつろぐ犬や猫を抱きしめながら、うっとりとほおを寄せる人。ボランティアと楽しそうに言葉を交わす人。一頭の犬に近づいてきた男性が、突然、顔をほころばせ、その犬に似ているという、昔飼っていた愛犬の話を始めた。廊下では、女性がボランティアに付き添われ、お気に入りのラブラドールと散歩する。カメラを持った職員が、つかの間の「愛犬」や「愛猫」と和む入居者を撮って回る。
 やがて、宇田川さんが、部屋の中央に並べたイスの上をヨークシャー・テリアの愛犬アランに走らせ、歓声をあびる。ボランティアの伊藤さんは、お年寄りにボールを手渡し、待機させたラブラドールの愛犬ビッキーに投げてもらう。ビッキーがうまくキャッチすると、笑顔と拍手の輪が広がった。
 CAPP(コンパニオン・アニマル・パートナーシップ・プログラム)活動とは、(社)日本動物病院福祉協会(JAHA)が一九八六年以来、日本各地で行っている、人と動物の訪問ふれあい活動だ。スタッフは地域の獣医師とJAHAのCAPP会員、それに担当獣医師と関わりのあるボランティアたち。CAPP活動歴十年という宇田川さんが「ゆうあいの郷・扇」を定期訪問するようになって五年。宇田川さんにCAPP活動への思いをたずねると、「お年寄りの方々が喜んで待っててくれるから、また次回も頑張って行かないと、と思ってやってます」と力を込める。愛犬アランなど、朝、宇田川さんが「今日、行くよ」と声をかけると、やる気満々でそわそわしだす、とか。
 愛犬ビッキーと参加する伊藤さんは、「この子、盲導犬の訓練を受けていたのに、不適格となったため譲り受けたのですが、やはり、人の役に立つのが生きがいみたいです。今日も朝からスタンバイして…」と言う。
 コゲパンとテコという愛犬二頭と参加した八木さんは、「すごく楽しいですね。他人のためじゃなくて、自分が楽しいから。だって、うちのこんなバカ犬でも(笑)、かわいいって、みんなほめてくれるんですよ」と、ひげ面の顔をくしゃくしゃにした。
 CAPP活動歴十七年目という金田さんは、普段あまり自分のことを語ろうとしないお年寄りが、大好きな犬や猫とふれあうことによって、心の扉を開いてくれるのがうれしい、と語る。
 宇田川・金田チームのボランティアと動物たちを見送ったあと、一階ロビーで「ゆうあいの郷・扇」主任の柳沢さんと少し話をする。柳沢さんは、「わたしたちが何をどうしても、イライラが落ち着かなかった方が、犬を見かけたとたん、目尻が下がって、にこやかになる。犬なんて好きじゃないと言っておられた方も、犬がそばを通ると、犬の頭をツンツンしてほほ笑まれる…。すごいですね、動物の力って」と目を丸くした。ちょうどそこへ、犬が大好きな入居者・金谷さんが通りかかる。金谷さんは、指折り数えて“この日”を待ち焦がれていたと言い、楽しそうにこう続けた。
 「犬は裏切らないし、人の言うことも分かるから大好き。でも父が厳格で、子どものころ、犬だけは飼わせてくれなかったんです。ほんと、犬たちが来てくれると楽しくて。でも、さわるだけじゃ嫌なの。抱きつきたいんですよ。特にビッキーが好き。今日で三回目の面接なんです。盲導犬の訓練を受けていたから、すごくおとなしいし、散歩もできる。今日も顔中なめてくれて、うれしいから、まだ顔、洗わないんです(笑)」
ビッキーとボール遊びを楽しむ

宇田川さんとアランとの再会ににっこり

おとなしい猫のマオを抱いて

大きなビッキーとごあいさつ

CAPP活動に参加するには
活動に関心のある方は、JAHA事務局にお問い合わせを。入会案内とともに、各地の活動連絡先や活動スケジュール等の資料を郵送してくれる。

(社)日本動物病院福祉協会(JAHA)事務局
http://www.jaha.or.jp/new/jahatop2.html
〒162-0814 東京都新宿区新小川町1-15 池田ビル201
TEL:03-3235-3251 E-mail: capp@jaha.or.jp

*この記事は、2004年9月20日発行のものです。


●取材協力
砧町町会わんわんパトロール隊の皆さん
http://www02.so-net.ne.jp/~jj1vkl/kinuta_wanpat/

「宇田川・金田チーム」のCAPP活動ボランティアの皆さん
社会福祉法人聖風会「ゆうあいの郷・扇」の入居者と職員の皆さん
(社)日本動物病院福祉協会

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