

犬や猫と暮らす家を設計する時、わたしは、いつも、「利便性」「健康・快適性」「“絵になる”空間づくり」の3つを大切に考えています。「利便性」とは、いかに世話や、室内の掃除がしやすい家にするか。「健康・快適性」とは、ペットが健康的に快適に暮らせる工夫です。「“絵になる”空間づくり」とは、犬や猫がいて、その家(の中)がいかに映えるか、絵になるか、ということです。

畳の部屋にコタツがあり、猫がいる――。日本の「和風住宅」といえばそんな光景がすぐ目に浮かびます。ところが犬の場合、室内飼いが普及してきた現在でも、猫みたいに“絵になる”光景は少ないようです。それは、日本の家には、犬と一緒に暮らすための「空間」が乏しいからです。そこで、今回は犬との暮らしを中心に考えてみたいと思います。

愛犬と暮らす家庭でも、家の間取りを考える時、「うちは○人家族だから○LDKでいい」とおっしゃる方が少なくありません。しかし、愛犬も大切な「家族」ですから、「一人分」の「生活空間」を確保する発想を忘れてはいけません。単に、床や壁などの建材にこだわるだけでなく、間取りの中に愛犬の「居場所」を考えることが、愛犬との豊かな暮らしを実現する第一歩です。


愛犬専用の「空間」として、リビングの隅などにドッグサークルを置いてしまうと、人が動くのにジャマですし、見栄えもしません。ですから、壁の一部をくぼませて、ドッグサークルをすっぽり収納するといいでしょう。三面が壁に囲まれるので、愛犬も安心して落ち着くことができるはず。同様にトイレスペースも人間の目には目立たず、犬には無理のない場所に、今までの習慣を考えながら組み込むといいでしょう。犬用の機能スペースが部屋にはみ出さないことが大切です。

犬は、家族のいるところで過ごすのが大好きです。ですから、リビングの一部や書斎の机の傍らなどに、愛犬専用のちょっとしたニッチ(くぼみ・すきま)をつくってみましょう。その部分をタイル張りにすれば、夏場涼しくて、お昼寝に最適。冬はカラフルな毛布が似合うように、タイルの大きさや色を選ぶと面白いです。

リビングルームの「外庭」にウッドデッキをつくれば、愛犬も人も素足でくつろげる「空間」が広がります。リフォームで部屋を広くできない場合、ウッドデッキによって、「室内空間」を外部に拡張する方法はとても有効です。


床材には、傷つきにくく、掃除のしやすいものを選びたいですね。そして、歳月と共に、ボロボロになるのではなく、“味”や“風合い”の出てくるものがおすすめです。ちなみにわたしがいつも使っているのは、無垢のチーク材。これは船の甲板にも使用されるほど水に強く丈夫で、元気のいい中・大型犬のいる家庭でも安心です。また、普及品のフローリングのように、表面をツルツルした塗膜で覆わなくてもいいので、滑ることもありません。

「腰壁」とは、部屋の壁面に高さ80センチほどの板をきれいに張りめぐらせたものです。壁面の底部は、犬や猫が体をすり付けたり、粗相すれば、すぐに汚れます。しかし、丈夫な腰壁があれば、傷みも少なく、掃除もラク。そのうえ、人よりずっと体高の低い犬の背景に腰壁があれば、室内の雰囲気も落ち着き、犬が引き立ちます。腰壁は“絵になる”空間づくりにも不可欠な部材です。

「巾木」とは、壁が床に接する部分すべてに、それをカバーするように取り付けられた細長い板です。なぜか日本では高さが低く丈夫でない「巾木」が多いようですが、
ペットと暮らす家では掃除機を頻繁に使うので、掃除機の先端が当たっても傷まない丈夫な材料を用いて、高さは6センチ以上にした方がいいと思います。

「フローリングが滑って困っています」とよく相談を受けます。ラグマットを敷けばいいのですが、大きさも限られており、なかなか気に入ったデザインのものを見つけるのが難しいようです。そんな時には「置き畳」を使ってはいかがでしょうか? フローリングの上に畳を置くのは妙な感じがするかもしれませんが、日本好きの西洋人はよくやっています。犬も西洋人(?)なら案外似合うかもしれません。ちなみに置き畳は水洗いすることができます。


気密性の高い現代家屋では、ペット臭がこもりやすく、また夏場、留守中に窓を閉め切っていると愛犬が熱中症にかかりやすくなります。そこで、防犯上安全な場所に換気窓を増やしたり、換気機能付勝手口ドアを使うなど、家の中に「風の道」をつくれば、人にも動物にも健康的で快適、清潔な室内環境を維持しやすくなります。猫のいる家庭なら、天井付近に、部屋同士を結ぶ「キャットウォーク」を巡らせば、彼らの運動不足解消にも、家屋内の空気循環にも役立ちます。

南の窓に深めの「ひさし」を設けると、日の高い夏、日差しが室内に入らず、また日の低い冬、暖かな日差しが部屋の奥まで射し込んで、愛犬や愛猫が日向ぼっこするのに好都合です。自然をよく知る昔の人の知恵ですね。


玄関ドアは外から見て右側に蝶番やヒンジがあり、手前に開く場合が多いようです。リードは左手で持つのが一般的ですが、腕力の関係で、右手でリードを持つ方もたくさんおられます。すると、帰宅時、リードを持った右手でドアを開けねばならず、また、愛犬がドアの後ろに隠れ、苦労します。そこで、玄関までリフォームされるのなら、ドアの開閉を左右逆にすれば、愛犬をさっと中に誘導することができます。また、ドアの近くにリードフックがあれば、カギを探し、開閉する時、とても便利です。

室内飼いの場合、犬の行動範囲をうまく制限することがお互いの暮らしやすさ実現のポイントとなります。それに役立つのが廊下や部屋の入り口に取り付ける
ドッグフェンスです。しかしお店で売られている後付け方式のものはデザインがよくないので、もし室内ドアを取り替えるのなら、同じ建具枠の反対側にドッグフェンスを一体型として造ってもらえれば、安価に丈夫できれいなものができます。

とにかく室内飼いでは掃除が大切ですし、大変です。家具を買い替える場合は、隅々まで掃除が行き届くように、掃除機が使いやすい足の高い家具や、キャスター付きで動かせる家具を選びましょう。またリフォーム時に造りつけの家具を注文すれば、床や壁とのすきまがなくなるので掃除がラクになります。そして、なるべく不必要な家具や物を室内に置かないこと。シンプルライフこそが愛犬、愛猫との暮らしの原点かもしれません。
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