
猫に必要な「生活資源」が少ないと、
複数の猫が“平和共存”できなくなる
猫は、猫同士の相性さえ合えば、性別に関係なく、多頭飼いすることができます。ただし、去勢していないオス同士は、発情期に、また縄張りの広さが適当でない時に、トラブルになりやすいということがあります。では、どんな要因が問題になりやすいのでしょうか。
一番大きなポイントは、一軒の家における「猫密度」です。食べ物やトイレ、休息場所、それらを含んだ「縄張り」が一頭ごとに十分備わっていないと、平和共存できる猫の頭数が限られてきます。いくら食器やトイレ、寝床の数をそろえても、その場所が重なっていたり、そこへの道筋がほかの猫の縄張りと重なっていたりすると、お互いがそれほど仲良しでなければ、もめる原因になります。
例えば、外出が自由な家なら、家の中が食事やトイレ、休息の場所だけに限定されても、それ以外に自分専用の活動領域(=縄張り)が戸外に確保されていれば、うまくいくこともあります。しかし、外出可能な地域には外猫や野良猫も多く、実際のところ、猫何頭分もの安全で広い縄張りとなる空間を家の内外に確保することは、日本の住宅事情を考えると不可能に近いといえます。
相性の相違に環境の変化が重なると、
トラブル関係になりかねない
最初に「猫同士の相性さえ合えば」と言いましたように、相性の問題は複雑です。仲良しでいつも一緒に寄りそうように暮らし、お互いが毛づくろいするような関係にあれば、ワンルームマンションなどでも共存は可能です。しかし、仲良しでもケンカ相手でもなく、普段、お互いが一定の距離を置き、かかわりを持たずに“共存”している猫同士が、何かのきっかけでもめだすことがあります。
その一つは、居住空間が狭すぎて食事やトイレの場所が重なっていたり、トイレが不潔で居心地が悪かったり、飼い主が留守がちで精神的に不安定になったり、“恋の季節”になって、戸外を発情期の猫たちがうろつきだしたり、といった「日常的な要因が積み重なる」ケースです。
もう一つは、突然、新入り猫が来たり、飼い主が結婚して未知の配偶者が現れたり、慣れた家から馴染みのない家に引っ越したり、お父さんが定年退職していつも家にいたり、といった「大きな環境の変化」です。
そのような刺激が猫たちへのストレスとなって、これまで一定の距離を置いて共存していた“危うい”関係が壊れ、一挙にトラブル関係になってしまうわけです。
先住猫の立場を無視した、
新入り猫の導入がトラブルの原因に
相性の基本となるのは、「社会化期」の過ごし方です。社会化期とは、生後2週間から生後2か月ぐらいまでの、子猫がほかの猫や人間とのかかわり方を学習する重要な期間です。
この間にほかの猫と接触する機会が少ないか、ほとんどなかった猫の場合、突然、新入り猫がやってくると、拒否反応が強く、新入り猫を避けようとします。その時、飼い主が性急に仲良くさせようとすると、距離を置いて同居することもできなくなります。そして顔を合わせると、フーと威嚇するだけでなく、新入り猫のにおいのする場所にマーキングしたり、新入り猫の来ない部屋に閉じこもったり、食事をしなくなったり、新入り猫の気配にすら我慢できず、家出したりするかもしれません。
つまり、飼い主が先住猫の社会化期の育ち方やほかの猫とのつき合い方をよく理解せず、衝動的に新入り猫を連れてきたり、先住猫に少しずつ慣れさせるという努力、工夫をせず、縄張りを共有せざるを得ない環境の中で多頭飼いを始めたりすれば、先住猫のストレスは高まる一方になるわけです。
|
|

複数の猫が“平和共存”できる
「個室」を整える
現在、多頭飼いの問題で悩んでおられる家庭では、それぞれの猫たちが安心して食事したり、トイレを使ったり、休息したりできる「個室」、つまり専有空間をつくってやることが何よりも大切です。
そのためには、猫たちが現在、お互いどんな関係にあるかよく観察してください。そしてそれぞれの猫たちを、A「いつも一緒に仲良く暮らす」、B「一定の距離を置き、かかわりを持たずに“共存”する」、C「すぐに威嚇したり、ケンカする」にグループ分けしてください。
Aの関係なら、縄張りが重なっても問題ありません。
Bの関係なら、共に行き来する共有空間と別に、たとえ狭くとも、食事、トイレ、休息場所などの専有空間(個室)を、別の部屋か、同じ部屋の一角に離して確保してやってください。
もしCの関係なら、例えば、二階と一階、あるいは母屋と離れ、あるいは玄関付近の部屋と奥の部屋、というように、お互いがまったく接触せずに生活できる、文字通りの「別室」をつくってやってください。
猫同士の、付かず離れずの
微妙な関係を見守る
猫同士で一番微妙なB「一定の距離を置き、かかわりを持たずに“共存”する」猫たちの暮らし方を考え直してみてください。たとえ、お互いの専有空間が確保されていても、食事やトイレの場所を分離するのが難しい場合、少しでも間隔をあけてやる。いつもお互いのトイレを清潔に保つ。トイレの数を頭数プラス1として、予備を置くなどの配慮も必要です。また、一匹が食事やトイレの時、もう一匹が待機していると、飼い主が無理に仲良くさせようと、待機している猫に同時に食事を与えたり、トイレを使わせたりといった介入は、絶対にしないことです。猫たちは、共有空間でお互いが距離を置いたり、先後の順番をつけて、どうにか共存関係を保っているのです。
共有空間に猫たちがいる時、好物の食べ物を与えて、犬をしつけるように、「一緒にいれば、いいことがある」というしつけ、訓練をする人もいます。また、共有空間に、ほかの猫たちのにおいを緩和させるために「フェロモン剤」を使用することもあります。しかし、これらの前準備として、前述の、環境の整備や新入り猫を迎え入れる工夫、同居への配慮などを行っていかないと、あまり効果がないようです。
新入り猫の導入は計画的に。
新たに飼うなら、猫より犬がおすすめ
相性の良くない猫同士が子猫と若猫ぐらいなら、少しずつ関係改善の余地が生まれてくるかもしれません。しかし成猫同士だとかなり難しいのは事実です。深刻な問題が発生してから後悔しても手遅れです。やはり、多頭飼いをしたいのなら、最初の猫を飼った時から工夫をすることが求められます。一番いいのは、子猫の時から、きょうだい猫を一緒に飼うことや、代々メス(母系)の家族を飼うことです。また、将来を見越して社会化期ごろの子猫を、早くから信頼できるペットホテルや友人宅などに“一時預け”をして、ほかの猫と仲良くする経験、様々な刺激に対する抵抗力を身に付けさせることも有効です。
猫を飼いだしたあとで、どうしても動物を増やしたいのなら、意外と思われるかもしれませんが、猫ではなく、犬を新たに飼った方が容易に良好な関係が築けるかもしれません。なぜなら、成猫のところに子犬が来ると、猫は最初から優位な立場で子犬に接することができるからです。子犬が先住猫を追いかけて、威嚇されたり、猫パンチをもらったりすれば、子犬の方で学習して、深追いしなくなります。また、猫の方も、すぐに犬の行けない家具の上や二階などにさっと逃げることができるので、犬の存在が大きなストレスになることは少なく、共存しやすくなるわけです。
|