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知っておきたい「ペットの栄養学」


毎日のペットの食事、どのようにされていますか?
食事は健康の基本。正しい「栄養学」の知識を学んで、愛犬・愛猫の健康を守ってあげたいですね。
普段、何気なく与えている“ペットフードの選び方”や、
“手作り食”にチャレンジしたい方へのアドバイスもご紹介。
今日から、愛犬・愛猫の食卓が変わるかな?


     
 

 

■ 犬の食生活と栄養バランス

 犬の原種はオオカミですが、彼らはもともとあまり狩りが上手ではありません。だから猫科の動物のようにその場で獲物を倒さず、群れでずっと追いかけ、狩りが成功したらみんなで食べたり、土に埋めて保存し、あとで少し腐った肉を食べたりしていました。また、狩りがうまくいかなければ、植物で飢えをしのいだりもしていました。それで、犬には、食べられる時にガツガツと食べる傾向があります。
 また、犬は基本的に肉食ですが、栄養学的に見て、何でも食べる人間に類似している雑食タイプで、少しぐらい栄養成分に変動があっても大丈夫。栄養バランスが人間に近いことと、食生活の多様性があるため、人間の残飯を食べても問題は少なく、早くから人間と共生できたんだと思います。ちなみに、草食の度合いが強いと長くなる消化管の長さで言えば、犬は体長の五倍で、六倍の人間より少し短いぐらい。それに対して猫の消化管の長さは体長の四倍です。


■ 体に悪い食べ物の場合

 消化管の長さと消化時間の関係で、興味深いのは、犬は、食べた物が消化・吸収し終わるまで六時間から八時間かかること。普通、肉は消化・吸収が早いのですが…。犬より消化管の長い人間が二、三時間ほどですから、ちょっと不思議です。
 まだはっきりしたことは分かっていませんが、それは、万一、体に悪いものを食べたら、すぐ吐き戻しできるように、胃の中に置いている時間が長いのではないか、と思っています。ついでにいえば、食べると赤血球が破壊されるタマネギなどは、普通、犬は自分から食べようとはしません。


■ 猫の食生活と栄養バランス

 猫は「フレッシュ・イーター」と言われるように、獲物を狩りして新鮮なところだけを食べる動物で、典型的な肉食動物です。だからといって「タンパク質」だけを食べているわけではありません。獲物の内臓には消化管も肝臓もあります。だから内臓を食べれば、消化中の植物も、脂肪も、ビタミン、ミネラルも摂取できるわけです。
 このように、猫は必要な栄養素をすぐ消化・吸収できる形に変えられたものを食べてきたので、人間の食べ物だけを食べていると、体内で必要な栄養素を吸収できる形に変えられず、必須脂肪酸や必須アミノ酸などの欠乏症になりやすいんです。
 また、日本では、猫といえば魚ですが、野生の時代、魚を捕っていたとも思えません。日本人の生活に順応した結果でしょうね。魚には、体にいいといわれる「不飽和脂肪酸」がたくさん含まれていますが、これはすぐに酸化して、体に有害な「過酸化脂質」に変質します。だから新鮮な魚(あるいは酸化防止にビタミンEが添加されたもの)ならそれほど問題ありませんが、猫が干物などをたくさん食べていると、変質した脂肪分が固まる「黄色脂肪症」になります。


■ 犬・猫と肥満

 今、太り過ぎの犬や猫が目立っていますが、肉食動物、特に猫には、基本的に太った個体はいないはずです。太れば狩りができませんから(笑)。それに猫は体が小さいですから、野外では自分が捕食される可能性もあります。食べ過ぎると逃げられないわけです。猫が一度に少ししか食べないのも、襲われる危険を避けるという意味もありそうです。
 一方、冒頭で述べたように、犬は狩りがヘタで、食べられる時にできるだけ食べる傾向が強く、また、群れで暮らすため、外敵に襲われる可能性はそれほどありません。だから、猫に比べてずっと太りやすいと言えます。
 例えば、うちの大学で飼っている猫たちは、食べ物をたくさん与えても、むやみに食べず、太らない。自己管理しているわけです。では、猫が太りだすのはどんな場合か。それは、自分で狩りをしなくても食べ物の心配がなく、また、安心して暮らせる環境だと分かった時です。つまり、“幸せ”を感じた時点で、猫は“野性味”がなくなり、太りだす。僕は、それを“幸せ太り”と呼んでいるんです(笑)。
 確かに、太った猫はかわいいですね。でも、喜んでばかりはいられません。
 太り過ぎはいろんな慢性病の要因になりやすいですが、特に猫の場合は要注意です。これまで太ることとは無縁だったため、体の中にたまる“余分な脂肪”をうまく使うことができません。だから、太った猫が病気やケガなどで急に食べなくなったら、エネルギーを補うために分解された脂肪が肝臓にたまる「脂肪肝」になりやすいのです。


■ ライフステージと食生活

 犬や猫のライフステージと太り過ぎの関係を見ますと、太りやすい時期は大きく二つあります。一つが、成長期の終わりごろです。成長期には通常、維持期の1.5倍から2倍の栄養価のあるフードを与えないといけません。しかし、成長期の終わり、人間で言えば、高校生ぐらいで、ある程度大人の体になってきた時に、それ以前と同じフードを与えていると、太りやすくなります。もっとも、同じペットフードを同じぐらい与えていても、個体差などによって体重は前後20%ほど増減します。
 もう一つが、七、八歳ごろの老齢期の初めです。老齢期になると、代謝力が落ちてきて、それほど多くの栄養が要らなくなります。にもかかわらず、以前と変わらない食べ物を与えていると太るのは当然です。しかし、その後、高齢化が進むと、太った猫はいなくなります。その要因として二つ考えられます。
 一つは、消化・吸収力が落ちて、たくさん食べさせないと、必要な栄養素が確保できなくなり、自然にやせていくことです。もう一つは、太り過ぎの猫は老齢期になると、心臓や腎臓、肝臓、消化管、泌尿器などに問題が起こりやすく、また、運動力も落ちて、ケガや事故に遭いやすくなり、それほど長生きできないのかもしれません。


*この記事は、2005年6月20日発行のものです。


●取材協力
日本獣医畜産大学 獣医内科学教室 助教授 左向敏紀さん
http://www.nvau.ac.jp/

NPO法人Knots(ノッツ)事務局長 愛玩動物飼養管理士 勝田千恵美さん
http://www.knots.or.jp/

Pet Clinicアニホス Nutritional Health Consultant/ペット栄養管理士 奈良なぎささん
〒174-0072 東京都板橋区南常盤台1-14-11
Tel: 03-3958-9110
http://www.anihos.com/

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