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自然豊かな小山内裏公園内を巡回するわんパト隊員たち

パークセンターでのわんパト隊定例会

パークセンター前の、「秋」のモニュメント前で記念撮影

わんパト隊員手作りの快適なドッグラン
広大な多摩丘陵の一角、東京都町田市と八王子市にまたがる「東京都立小山内裏公園」に、「わんパト隊」の腕章をつけた飼い主と愛犬たちが集まってきた。小山内裏公園わんわんパトロール隊の隊員たちである。彼らは、芝生の生える里山広場から列を組んで丘陵を越え、雑木林の中のドッグラン「わんわんふれあい広場」にやってきた。
同公園を管理するパークセンターのセンター長・木本ひろみさんによれば、2004年7月にオープンしたこの公園は武蔵野の景観を残す里山公園で、46haの園内には武蔵野自生の様々な植物が繁茂し、貴重な野鳥や哺乳動物、昆虫などが生息する、4つの特別保護区(サンクチュアリ)が含まれている。
そんな小山内裏公園に、愛犬たちが安全、快適に遊べるドッグランを造るために、町田市、八王子市、相模原市など周辺地域の人々が中心になって結成されたのが、同公園の「わんパト隊」だった。わんパト隊会長の小嶋さんは、「わたし、地元なもので、毎朝、うちの犬を散歩させるのにここを通っていたら、事務局長の山田さんに誘われて、一緒にゴミを拾い始めてもう3年たちます」と当時を振り返る。
隊員たちは朝夕、自主的に腕章をつけ、防犯を兼ねて巡回。放置されたゴミや犬のウンチを拾い、リードをつけずに散歩する飼い主にはリードの装着を勧めるなど、マナー向上に取り組んだ。その活動が認められ、東京都から、公園内にドッグランを開設することを認められた。
隊員たちは数週間かけて用地を整備。都が設置したフェンスによって、大型犬優先と小型犬専用のドッグラン2面を完成させた。
「作業に参加した隊員は延べ300人ほど。当初用地一面に笹が茂っていて、根っこを掘り起こすのに苦労しました」と、わんパト隊事務局長の山田さんは言う。
以後、わんパト隊員たちは懸命にドッグランの維持管理に取り組んだ。
ドッグランの利用時間は朝5時から夕方5時まで。毎朝、誰かが5時にはやってきて、開場。夕方5時には閉場。その後、場内に残されたゴミや犬のウンチを片づける作業を継続。毎週月曜日には有志が集まって、花壇作りや施設の補修、清掃などをこなし、毎月、定例会を開催。町田市主催の「わんわんクリーンキャンペーン」にも参加して、公園の周辺地区を清掃してきた。もちろん、普段、腕章をつけて公園内外や自宅周辺を散歩し、地域の防犯活動に協力。飼い主のマナー向上を訴えてきた。
そんな地道な活動が実って、わんパト隊員も一時期は200名を数えるほどとなり、快適なドッグランを利用する一般の飼い主たちも増えていった。
「ここは雑木林で夏の日中でも木陰があって涼しく、秋にはドングリがいっぱい落ち、地面が一面落葉のじゅうたんみたいになるんです」と、隊員の高柳さんは語る。そばにいた山田さんが、「犬は幸せだよね。本当に犬が遊んでいるのを見ると、心が和みます」と言って目を細めた。
小山内裏公園のドッグランの評判が高まり、インターネットで取り上げられるに従って、周辺地域だけでなく、都内各地や神奈川県内、さらに埼玉県や山梨県辺りからもドライブを兼ねてやってくる利用者が増加していった。
そうすると、様々な問題も起こってくる。
例えば、違法駐車の問題があった。元々は周辺地域の飼い主中心に始まったドッグランなので、利用者は徒歩での来園が基本となっていた。
それに、貴重な自然を守る里山公園を目指した同公園には駐車スペースが26台分しかなかった。ところが、あちこちから車でやってくる飼い主が増えるにつれ、公園周辺の生活道路に違法駐車するケースが目立ち、「危ない」「通行や商売に差し支える」という苦情が増えだした。わんパト隊員たちが周辺道路を巡回して注意しても強制力はなく、頭痛の種となっていった。
また、わんパト隊というボランティアグループによるドッグラン開設の経緯や日常的な維持管理の苦労を知らない“一般利用者”の中には、場内で飲食したり、ゴミを捨てたり、犬のウンチを放置したりする人も現れてきた。
「夕方掃除すると、多い時はウンチが30何個あった日もありました。掲示板に注意書きをしたりして、最近は大分マナーが良くなってきましたけどね」と、小嶋さんは言う。
そこで、小山内裏公園パークセンターとわんわんパトロール隊が協議して、従来、ドッグランの維持管理にあたっていたわんわんパトロール隊は、当初の目的、つまり、公園内に安全、快適なドッグランを造るという目的が達成されたこともあり、このたび解散。今年(07年)12月から、新たに「利用者登録制度」により、利用者登録をした会員組織がドッグランの運営と利用を行うことになった。同公園パークセンター・センター長の木本さんは、「ドッグランの維持管理にはボランティアさんの力がぜひとも必要です。今後は、もちろん、わんパト隊の方々に積極的に参加していただき、すべての利用者が管理者として、より良いドッグラン造りに努めていただければうれしいですね」と抱負を語った。


わんパト隊隊長の神田さんと愛犬パオ

小学校沿いの桜並木で記念撮影

おそろいの腕章とウエアで巡回するわんパト隊員たち

愛犬談義に盛り上がる
群馬県高崎市の南東10キロあまり。群馬県南端に位置する藤岡市に「藤岡市わんわんパトロール隊」が生まれたのは、2005年5月のことである。
現在、「わんパト隊」隊長を務める神田信啓さんが、その少し前、自宅近くの道を愛犬「パオ」と散歩していると、近くの小学校のPTAのお母さんから、「おじさんは、毎日この辺りを散歩しているのですか」と声をかけられた。話を聞くと、「PTAで防犯パトロールをしようと思っているんです」と言う。
「それなら、僕も愛犬を連れて、散歩がてらパトロールして、地域の子どもたちを見守ろうか」と、神田さんは思いつき、犬好きの友人、知人に声をかけると、わずか1週間ほどで11名の希望者を得た。
神田さんはすぐに市役所の防犯課に行くと、前橋市の前橋東警察署管内にわんパト隊の先行事例があると教えられ、同署に相談。群馬県の防犯資材補助を受けて、犬たちに着せるわんパト隊のウエア50頭分ほどを買いそろえることができた。そして、藤岡市市役所や同市教育委員会、藤岡警察署などの支援を得て、05年5月、市役所前で藤岡市わんわんパトロール隊の発会式を実施した。「その後、口コミによって半年ほどで隊員数が30名ほどになり、今、64名、犬68頭にまでなりました」と神田さんは言う。
「わたしたちの合言葉は、“地域の子どもは地域で守る”と、“気楽に”“気長に”“危険なく”。特別、小学生の下校時に通学路を回ることはしていません。わんパトは“時間のすきま”をパトロールするんです」。
神田さんによれば、隊員は、ただいつものように朝夕、愛犬と一緒に腕章(人)とウエア(犬)をつけて、近くの道を散歩して回る。通学路はPTAの防犯パトロール隊も同行し、皆一緒に下校する。しかし、自宅近くになれば、「さよなら」と言って皆別れて帰宅する。「その、“わが家が見えてから”が大切なんです」。
わんパト隊員たちは子どもたちに出会うと、「おはよう」「こんにちは」と声をかけている。「実は、わたし、スズメにも猫にも、知らないおじさんやおばさんにも必ずあいさつをしています」と神田さんは言い、そうすると、心が豊かになってくる感じがします、とつけ加えた。
小学生たちとは、すぐあいさつを交わす仲となり、道で神田さんと行き合うと、「あ、パオだ」と叫んで駆け寄ってくる。中学生も、何度か顔を合わすうちに打ち解けて、進んであいさつをしてくれる。高校生は、最初、完全に無視。でもそのうちにあいさつをし始め、半年もすると、いい声で返事が返ってくるようになったという。
普段、自宅周辺で活動しているわんパト隊員の何名かに、ある小学校の前にある桜並木の下に集まってもらった。
愛犬「カイザー」とパトロールする鈴木さんは、「この子は11歳です。犬と暮らすと、心が癒やされますね。それに、わんパトで散歩していると、皆さん、カイザーの“犬格”を認めてくださって、とてもかわいがっていただけます」とほほ笑んだ。
愛犬「ベル」とパトロールする藤川さんは、中学時代、教職に就いていた神田さんの教え子のひとり、とか。「この子は16歳と8か月。前の犬が亡くなってから、もう飼うのはやめようと思ったんですけど、やはり、犬と暮らしたくて…。神田先生に、わんパトの事務局長を手伝ってほしい、と言われて参加しました。楽しいのは、子どもたちが、ベルちゃんおはよう、と言ってくれること。高校生は、最初、声をかけるとけげんな顔をしていましたが、いつの間にか、おはようございます、と向こうから声をかけてくれるようになりました。うちの近所でも、5、6軒の方がわんパト隊に入っています」。
愛犬「ペレロ」と参加する飯島さんは、「うちも、神田先生のご近所なので、立ち上げからずっと一緒です。知らない、普通のおばさんが声をかけると、色々問題があるかもしれませんが(笑)、わんパト隊でこの子と散歩していると、犬を通して子どもたちと仲良くなれていいですね。うちは小学校の前なので、いつもここに立っていると、おばさん、こんにちは、と声をかけてくれます」と、うれしそうにつぶやいた。
愛犬「キャンディ」とパトロールする松本さんは、「神田隊長とは、プールで一緒になりまして、色々と話をしているうちに仲間に入れてもらいました。わたしは朝5時半か6時、夕方は日暮れ時に出かけます。ウエアを着せて歩いていると、あ、わんパトだ、とよく声をかけられます。いつもポケットにビニール袋をいくつか入れていて、犬のウンチを拾って帰ります。自分の犬のはもちろんですが、他の犬のも持って帰らないと、知らない人がウンチが散らかっているのを見て、あの犬もやるんだろうなと思われて、犬嫌いの人を増やすの、困るでしょ。このごろ、前よりウンチも少なくなったように思います」と語る。
皆さん、何よりも犬が好き、そして子どもたちが好き。マイペースでわんパト隊に参加し、地域の子どもたちと触れ合いながら、その安全と成長を心から願っていることが、表情や言葉の端々からはっきりとうかがえた。
| *この記事は、2007年11月20日発行のものです。 |
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