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審査はスタンダードに沿ってジャッジがスタイルなどをチェックしていく
3月23日、東京都大田区の京浜急行蒲田駅近くにある大田区産業プラザPIOでTICA(ジ・インターナショナル・キャット・アソシエーション)公認「東京キャットクラブ(TCC)」のキャットショーが開催された。
TICAは1979年に設立された世界的な血統猫組織でアメリカのテキサスに本部がある。その傘下のTCCは、現会長の大平智恵子さんたちが同年日本で設立したもので、本州や四国、九州などに支部を持つ。
審査が行われる各リングは「オールブリード(全猫種)」、「スペシャリティ(ロングヘア&ショートヘア)」、「コングレス(猫種や雌雄、毛色別)」などに分かれ、「チャンピオンシップ(8か月以上の成猫)」、「キツン(8か月以内の幼猫)」、「アルター(去勢・避妊猫)」、「ハウスホールド・ペット(家庭猫)」ごとに、一般審査(カラークラス・ディビジョンクラス・ブリードクラス)がある。上位入賞すれば、ファイナル審査に進み、1位から10位までに選抜されるとロゼット(リボン)と順位ごとにポイントが加算されていく。年度末となる春先は、アワード表彰を目指して、各地で開かれるTICA公認キャットショーに参加するオーナーも少なくないようである。
もちろん審査の基準はTICA規定の「スタンダード」による。その要点を、TICAジャッジとして世界中で審査してきた大平さんに尋ねると、「例えばペルシャなら、頭がドームみたいに丸く、目が大きくて鼻が詰まり、あごがしっかりしている。ボディは短く、手足も短い。コート(被毛)はきれいで、しっぽは後肢の長さが必要です。シャムでしたら、本当にスリムで、逆三角形の顔の延長線上に耳がついている。目はアーモンド型で鼻に向かってななめについている。鼻はまっすぐであごはしっかりしている。手足は長く、胴は長く、しっぽも長い。毛は短くて筋肉質。ジャッジが触ってみて、引き締まった体がいいんです」と教えてくれた。
各リングでの審査が順調に進み、順にファイナル審査が始まった。ジャッジの適切な評価に耳を傾けるために、それぞれのリングにオーナーが集まってくる。
ひときわ盛り上がりを見せたのが、フランス出身で現在はカナダ在住のジャッジ、アリーヌ・ノエル=ギャレルさん担当のリングだった。ノエルさんは上位入賞した猫たちを、ある時は高く差し上げ、ある時は抱き締めて、表情豊かにそれら猫たちのすばらしさをほめたたえ、あるいはジョークを飛ばしながら採点結果を発表してロゼットを手渡していく。
ノエルさんは若いころ、キャットショーの魅力に目覚め、当初、スチュアード(リングでの猫の運び役)を務めながら、猫の遺伝学や猫種のスタンダードを始めいろんなことを学び、TICAの試験を受けて公認ジャッジとなったという。日本で審査を始めて早25年。日本のキャットショーについて、「猫たちのコンディションはいつもすばらしく、プレゼンテーションは完璧です。そんな猫たちに触れるのが本当に楽しくて」と笑顔で語る。事実、近年は日本で飼養される猫たちも世界レベルで高い評価を得ているという。
なお、前日の土曜の夜、ノエルさんを迎えて日本人ジャッジたちの勉強会が開かれ、知識や技能の向上を図った。大平さんによると、アメリカのTICA本部で年に2回から3回、各リジョン(地域)のディレクターが集まり、ルールの改正や、新しいブリード(猫種)の公認問題が討議されるという。「手足の短いマンチキンの場合、賛否が分かれて大変でした。最後、テレビ討論の末、やっと公認されたんです」と大平さんは打ち明けた。
熱気のこもる会場でキャットショー参加者幾人かに話をうかがった。
横浜から生後10か月の愛猫「アスラン」(ラグドール)と参加した稲山ゆかりさんは、子どもの時から犬に囲まれて育った。しかし、以前の住まいが犬の飼養禁止のため、13年ほど前、大きく、おっとりしたラグドールを飼い始め、ショーに参加することになった。「キャットショーは純血種を極めたいろんな猫種を見られるのが魅力のひとつです。今は、うちの子を客観的に見られるので、一喜一憂することはないですね」と語る。
八王子市から1歳1か月の愛猫「ラニ」(ベンガル)と参加した佐藤美紀さんは、昨年10月からショーに出始めた。以前飼っていた猫(雑種)が亡くなり、寂しさにたまらず、ネット検索。ベンガルを見つけ、一目ぼれしたという。「かわいくて、人懐こくて」と言う美紀さんの横から夫の憲治さんが、「親バカみたいですが、リボンをいただくとうれしいですね。それにショーに来ると、自分の猫のどこがいいのかちゃんと教えてもらえるので、メモを取ったりします」とつけ加えた。
茨城県から愛猫2匹、キツンの「アナスタシア」と年配の「タッキー」(ともにアメリカン・ショートヘア)と参加した田崎尚枝さんは、猫好きが高じてブリーディングを始め、ついにはジャッジの資格を取ったとか。「アメショーはフレンドリーで飼いやすく、頭もいいですね。わたしはどの猫種も好きなので、ジャッジになると、全部の猫種に触れるのが楽しくて、楽しくて」と声を弾ませる。
地元東京から生後5か月の愛猫「パルナス」(マンチキン)と参加した宮武美穂さんは、ショー初参加。「マンチキンの子猫がかわいくて決めました。今までキャットショーのことを知らず、ドッグショーみたいにポーズを取ったり、歩いたりするのかと思ったら、全然、違いました(笑)。ジャッジの先生に、マンチキンの基本を教えてもらって良かったです」と言って、パルナスを優しく抱き締めた。
ラグドールの「アスラン」と
稲山ゆかりさんラグドールアメリカ原産の大型猫。ラグドールとは「ぬいぐるみ」の意味で、4年前後かけてゆっくり成長する。性格は従順で甘えん坊。
ベンガルの「ラニ」と
佐藤さんご夫妻ベンガルアメリカ原産の大型猫。アジアン・レパードというヤマ猫がルーツになっており、美しいヒョウ柄の模様を持つ。性格は人懐っこい。
アメリカン・ショートヘアの
「アナスタシア」と
田崎尚枝さんアメリカン・ショートヘアアメリカ原産の中型猫。かつてはワーキングキャットとしてネズミ取りなどで重宝されていた。がっしりした体つきで運動能力は高い。性格は人懐っこい。
マンチキンの「パルナス」と
宮武美穂さんマンチキンアメリカ原産の中型猫。ダックスフンドのように足が短いが、他の猫と同じようにすいすいとジャンプや木登りをこなす。カラーバリエーションは非常に多い。




羽根を動かして、目の動きや体の俊敏性などをチェック
うららかな日差しが港神戸の海辺に照り映える3月22日の土曜日、ポートアイランドにあるフェリーターミナル「ポートターミナル」内のイベント会場に、関西を始め、中京、関東、北九州などから純血種を中心とする多くの猫たちとそのオーナーが集まってきた。土日の2日間、開催されるCFA(キャット・ファンシアーズ・アソシエーション)公認「がんば神戸キャットクラブ」主催のキャットショー参加のためである。
広い会場内右には審査用のリングがいくつも設けられ、通路を隔てた左には、ピンクや白、紫、赤、黒などカラフルなカバーをかけられたキャットケージの列が幾列も整然と並んでいる。審査開始前、オーナーたちは、愛猫のブラッシングをしたり、フードを与えたり、各地からやってきた友人や知人たちと語り合ったりしていた。
やがて各リングごとにエントリーナンバーが読み上げられ、「キツン(生後8か月以内)」、「スペシャリティ(ロングヘア&ショートヘア)」、「オールブリード(全猫種)」などクラスごとに審査が始まった。
各リングでアビシニアンやメインクーン、ノルウェージャン・フォレスト、アメリカン・ショートへアやロシアンブルーなど、様々な猫たちが次々にジャッジに抱かれて審査台に乗せられていく。
なお、避妊・去勢をしていない猫たち(8か月以上の成猫)は「チャンピオンシップ」に、避妊・去勢している猫たちは「プレミアシップ」に所属。また、血統書のない未登録、雑種などの猫たちは「ハウスホールド・ペット(家庭猫)」というクラスとなる。
各ジャッジは、順番に猫たちを抱き上げ、頭からしっぽまでなであげながら、骨格や肉付き、頭、顔、耳、鼻や目、毛並みなどを、CFA規定の「スタンダード」に基づいて、素早くチェック。あるいは羽根を猫たちの頭上や顔の前で振り動かし、目の動きや色、体の俊敏性を確かめて採点していく。前半の審査で選ばれた上位入賞の猫たちが次の審査に進み、最終審査(ファイナル)に臨む。そのファイナルで入賞(1位から10位)した猫たちがジャッジから大きなロゼット(リボン)を受賞する。このリボンを獲得するのがオーナーにとって大きな喜びとなる。
部外者には難しいが、各順位ごとにポイントがつき、1年間獲得したポイント数でCFA所属の各地区(リジョン)での総合順位が決まっていくという。
CFAは1906年に創設された世界規模の団体で、アメリカのニュージャージーに本部を持つ。CFA傘下の「がんば神戸CC」が設立されたのは阪神大震災の2年後の97年。クラブ名は、セクレタリーの上田阿由美さんによれば“神戸の猫好きたちも頑張っているよ”という思いを込めて命名されたとか。
同クラブの空野勝さんは、「ファイナルで、初めてリボンをもらったら感激するでしょうね。わたしも最初、審査を受ける時、手に汗が出ました。猫も子どもと一緒で、普段の育て方が大切。手を抜いたらすぐに分かる(笑)。ショーに参加することで、お互いが競い合い、猫を見る目やシャンプーの仕方など知識と経験を共有しながら力をつけていく。それが楽しいんです」と語る。
もっともキャットショー開催にはそれなりの準備がいる。丸井信介さんによれば、とりわけ大変なのはカタログ制作で、各地からのエントリー締め切りがショー3日前の水曜日。「一字一句間違ったらいけませんのでとても気を使います。みんなボランティアなので、好きでないとできませんね」。
ショー参加者は、いくつもあるリングごとにエントリーできるため、場内放送を聞きながら、愛猫を抱えてあちこちのリングへ駆けつける。上位入賞すれば、次の審査が待っているから気が抜けない。特にファイナル審査となると、リング周辺に人だかりができ、順位発表のたびに拍手が沸き起こる。
昨秋からショーに参加し始めたという林章子さんは北九州から、生後11か月の愛猫「ロビン」とやってきた。「この子はアメリカン・カールですが、耳の形がポイントで、子猫の時から成長するたびに耳の形も変わっていくのが楽しみです。ロビンはまだリボンをもらったことがないんですが、今から審査なので」と、少し緊張気味にコールされたリングに向かっていった。
生後10か月の愛猫「サララ」(アビシニアン)と千葉県からやってきた山田絵梨子さんは、友だちに誘われて、今回、初めて神戸へ。「わたしキャットショーに参加しだして4年ほどですが、自分の猫のいいところも悪いところも分かるし、他のいろんな猫が見られるのがいいですね」と言う。
生後5か月の愛猫「ビリーザキット」(ノルウェージャン・フォレスト・キャット)を抱いている丸井節子さんは、先の丸井さんの奥さんで、地元神戸で8匹の猫たちと暮らしている。「猫は普段の健康管理が一番で、いつも食欲や便の具合、動きに変化がないか、見ています。でも、8匹と遊ぶと1日がかりなので、できるだけ猫同士で遊ぶようにしてもらっています」とほほ笑んだ。
東京から参加した島田さんは、ブリーダー歴13年とか。「ショーはきれいな、コンディションのいい、いろんな猫種が見られるだけでなく、いろんな方と知り合え、お話ができます。それにハウスホールド部門なら血統書がなくてもエントリーできますので、一般の方もどんどんショーに来て、楽しまれるのがいいんじゃないでしょうか」と述べた。
アビシニアンの「サララ」と
山田絵梨子さんアビシニアンスリムな体型で、つま先立ちしているような姿と、アビシニアンタビーといわれる独特の濃淡がある被毛が特徴。かつてエチオピア原産といわれていたが、現在は東南アジアとする説が有力。
アメリカン・カールの
「ロビン」と林 章子さんアメリカン・カールアメリカ原産の中型猫。反り返った耳は生まれた時はまっすぐで、数日たつと50%の確率でカールする。ショートヘアとロングヘアがある。
島田さんがブリーディングしたロシアンブルーの「ポア」ロシアンブルー美しいブルーの被毛が特徴の中型猫。笑っているような口元とコブラヘッドと称される頭部が印象的。あまり鳴かず、ボイスレスキャットとも呼ばれている。なお、原産地については諸説ある。
ノルウェージャン・フォレスト・キャットの
「ビリーザキット」と
丸井節子さんノルウェージャン・フォレスト・キャットノルウェー原産の大型猫。神話に登場するほど歴史が古い猫で、水も弾くふさふさの被毛の下にはがっしりした体が隠れている。時間をかけて成長し、4年程度で成猫となる。
| *この記事は、2008年5月20日発行のものです。 |
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