膀胱炎・膀胱結石
オシッコに関わる病気は、症例があまり多くなく、飼い主の関心もそれほど高くない。また症状の進行が外からわかりにくく、つい見逃されやすい。 しかし膀胱炎が慢性化すれば、腫瘍にもなりやすく、また大きな結石が要因で、ふとしたはずみに膀胱破裂になることもある。
監修/仲庭動物病院 院長 仲庭 茂樹

細菌感染でなりやすい膀胱炎
イラスト
illustration:奈路道程
 オシッコに血が混じる(血尿)。何度もオシッコをする。オシッコが終わったあと、ぽたぽたオシッコがもれる。そんなときは、膀胱炎や膀胱結石の疑いがある。
 膀胱炎とは、大腸菌やブドウ球菌などの細菌感染(や膀胱結石など)によって、膀胱の内壁が炎症をおこす病気である。
 犬(ことに雌犬)の場合、細菌感染によって膀胱炎になるケースが少なくない。症状が出やすいのは、年齢でいえば、5,6歳前後から(犬種的にシーズーやマルチーズ、ポメラニアンなどは膀胱結石になりやすいといわれている)。雌犬に多いのは、尿道が短く、また地面に腹這いになったりして、外部から膀胱内に細菌が侵入しやすいためである。しかし、ふつう、動物の体は自浄作用があるから、健康な犬は多少、体内に細菌が侵入してもすぐに感染症になるわけではない(侵入した細菌が強力だったり、大量の細菌が入ってきた場合、なりやすい)。
 もっとも、あまり水を飲まず、またあまり排尿しない犬の場合、膀胱内に細菌の混入した尿が長時間たまっているとなりやすい(膀胱内に憩室といわれるくぼみのある犬は排尿後も尿が残り、感染症になりやすい)。
 膀胱炎が慢性化すれば、細菌感染が尿管を経由して腎臓にまで達し、腎盂腎炎(じんう=腎臓でつくられた尿をためておく袋状の器官)になることもある。注意が必要だ。
 治療法としては、抗生物質を投与して細菌の繁殖を抑え、同時に水をたくさん飲ませてたくさん排尿させ、膀胱内を清浄に保つことが大切である。

尿中成分の結晶が集まり、固まって膀胱結石になる
シーズー(メス)から取り出した膀胱結石。


その断面。

 膀胱結石とは、尿中に含まれる何らかの成分が結晶化し、その結晶が雪だるまのように集まり、固まって膀胱の中にできる大小さまざまな「石」をいう。そのような結晶や結石が尿道内で詰まると尿が体外に排出されず、腎臓に逆流して命にかかわることもある(特に雄ネコに多い。ネコの「尿道づまり」「膀胱炎・膀胱結石」を参照)。
 膀胱内で結晶化する成分には、雄ネコの尿道づまりで有名なストラバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)、あるいは尿酸、シュウ酸、などいろいろある。それら成分によって尿がアルカリ性だったり、反対に酸性の場合に結晶化しやすかったり、またある種のアミノ酸を吸収できない体質の犬(人間も)の場合、結晶ができやすかったり、と要因はさまざまである。
 とにかく何らかの成分が結晶化しやすくとも、ふだんから水をたくさん飲み、オシッコをたくさんしていれば、それら結晶は体外に排出され、結石化しにくいといえるだろう。
 写真でわかるように、膀胱結石は、いったん結石化しはじめると徐々に巨大化して、膀胱自体より大きくなることも少なくない。小さい結石の場合、雄犬の尿道に詰まってオシッコが出なくなるケースもある。常日頃、散歩など運動を十分にさせて、きれいな水をたっぷり飲ませ、たくさんオシッコする習慣を身につけさせるのがいい。なお、膀胱結石があれば、食餌療法で結石を溶かすことのできるストラバイト以外、外科手術で切開し、結石を取り除かねばならない。

慢性化すれば腫瘍や膀胱破裂の恐れもある
   膀胱炎が慢性化すると、膀胱壁が固く、厚くなり、もろくなっていく。あるいは慢性膀胱炎の症状を示す犬を検査すると、腫瘍が見つかるケースもある。また膀胱結石の犬では、膀胱内に尿がたまった状態で散歩や運動をして、ふとした拍子に膀胱が破裂することもある。愛犬の排尿前後の動作に十分注意して、何か異常があれば早めに動物病院で検査を受けることが望ましい。たとえば、人間なら、不快感や痛みなど自覚症状があればすぐ病院へ駆け込めるが、犬やネコはそんなわけにはいかない。
 とくに膀胱炎になりやすい犬種や肥満傾向の犬は、5歳を過ぎれば、たまには動物病院でエコー(超音波)検査、あるいは尿検査などを受けたほうがいいかもしれない。尿の簡単なペーパー検査で血尿が出ているかどうかはすぐにわかる。また顕微鏡検査で、尿中に腫瘍の細胞片が混じっていることが発見されることもある。

*この記事は、1998年1月15日発行のものです。

●仲庭動物病院
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